島に来て五日が経った。

「今日こそ絶対会えるはずなんだよ」
「熊、もうめんどくさいから一軒ずつチャイム押してこい」

 なにが楽しくて男ふたりでこんなところにいるのか。浮き輪と共に波に揺られながら、もう何時間も砂浜の先を見つめていた。

「偶然の再会っていうのが大事なわけ」
「へえ」
「押しかけてったら、まるで俺が追いかけてきたみたいだろ?」
「みたいじゃなくて実際そうだから」

 熊がここへ来たたったひとつの理由に付き合わされ、俺は島に着いた翌日からずっととある人物を探すのを手伝っていた。

 初めは港。その次は岬の近くにあるレストラン。昨日は支給されたクロスバイクでぐるりと島を一周し、それでも見つからず今日に至る。

「本当に来てんの? 実は編入やめてたりして」
「それはない。友達に色紙もらったって写真のっけてたし」
「しっかりストーカーやってんじゃん」

 小学校卒業まで家が隣同士だったという熊の幼馴染み、桜井月(さくらいつき)

 彼女が引っ越してしまい俺は会ったことがないが、中学三年間、散々話を聞かされたせいで嫌でも名前を覚えてしまった、熊の初恋の相手だ。

 共通の友人がSNSで繋がったのを知ると密かに彼女のアカウントをチェックしていて、もはやただのストーカーだと思っている。