最悪な想像。
あの男が桐島の体に刻まれた無数の傷跡をつけた張本人だということ。なんの確証もないのに、どうしてこんなにも嫌な予感ばかりしてしまうのか。
「いた!」
オレンジの髪は良くも悪くもよく目立つ。
息を切らしながら桜井月が指差す先には、すでに桐島とあの男が立っていた。
市場の活気はいつも通りで、人混みの中にある異変を周りは誰ひとり気づいていない。
でも、俺には分かってしまった。
駆け寄る桜井月が腕を掴んでもまるで微動だにしない桐島の目には、あの男しか映っていない。信じられないくらい怯えた顔で、どうしてここにいるんだと、今にも聞こえてきそうだった。
「やっと見つけたよ」
小さく男が口にしたのが分かる。俺にとって、ヤツを疑うにはそれだけで十分な理由だった。
「逃げろ」
呆然と立ち尽くしながら無意識に声を発する。
こちらを見た男が明らかにヤバい目をしているのを感じたかと思えば、わずかに動いた手がポケットからキラリと光るものを取り出す。

