「海くん、怖い顔してるけど……まさかあのこととは関係ないよね」
桜井月は不安げに言う。
あのこと、と言った彼女も同じものを想像しているのだろう。
なぜか桐島らしき子供の写真を持っていた見知らぬ男。分かりやすく建っているはずの港のトイレではなく、わざわざコンビニまで歩いて来て、ナオミと聞くなり慌てて出ていった。
体にあった無数の傷跡と結びつけずにはいられなくて、どうしても悪い方向にばかり考えてしまう。
「なんにもなきゃいいんだ、別に」
俺は桜井月と目を見合わせ、頷いた。
「お前ら、港でなんか騒ぎになったら学校連絡しろ」
「え、なに。どういうこと」
状況が読めず明らかな動揺を見せる熊の後ろで、林太郎がなにかを察して、分かった、と真剣な顔を見せた。
「行くぞ」
今は桐島を見つけることが先決だ。桜井月の背中を押し港に向かって一直線に走った。
「私、今すごいこと考えてるんだけど、海くんは?」
走りながら笑顔を作ろうとしている彼女は上手く笑えていない。
「そうじゃなきゃいいと思ってる」
俺は少し先を走りながら、奥歯をギシッと噛み締めた。

