無人島でぼくたちは


「ねえ、汐江くんも興味あるならやってみない? 他にも私が誘って始めた子がいてね」

 いろんな記憶がフラッシュバックした。

「いいです」

 夢に向かう階段を順調にのぼっていたはずなのに、崩れた足場から真っ逆さまに落ちていくような絶望感。すべてを失ったとき自分の中になにも残らなくなった恐怖心は永遠に消えなかった。

「必死になにかに打ち込むとか、もうやめたんで」

 おもむろに立ち上がり冷たく突き返す。

 戸惑う先生の顔が見上げていたけれど、構わずその場を後にした。もうあんな思いをするのは懲り懲りだ。

 夢中になってしまえばしまうほど失ったときのつらさは計り知れない。あれほどはやし立ててきたメディアは、心無い記事で傷口を深くえぐってきたのを思い出す。

 期待を寄せていた視線は一気に腫れ物に触るような憐みの目に変わった。

 もう二度とあんな思いはしたくない。夢中にならず、ただ平凡に過ごしていれば傷つくことはないんだ。

「海くん?」

 レストランに戻ると、入口で帰ろうとしていた桜井月と鉢合わせた。

「今日、図書館のバイトで」
「ああ」
「なんかあった? 大丈夫?」

 不思議そうに顔を傾けてくる彼女と目があった。でも今は誰とも話す気になれず、言葉も交わさないまま鞄を取りに店へ入った。