飛び交うカモメの鳴き声が頭上を通過する。
水面にしぶきを立てながら静かに進むフェリーが低い汽笛の音を鳴らし、とある南の島へと帆を向けていた。
照りつける太陽と雲ひとつない青々とした空の下、広いデッキには居場所をなくしたようにうろうろと行き交う学生たちがいる。その間を風が通り抜けていった。
遠ざかっていく本土の島を見つめながら、俺は一階の船尾で金属製の手すりに身をゆだねる。
ふと顔を上げたとき、二階の展望デッキにいるふたりの女に目がいった。
風で舞う漆黒の長い髪を耳元でおさえながら、楽しそうにカモメの大群に手を伸ばしている子。夕日みたいな色をした特徴的な髪をなびかせて、本を片手に物悲し気な横顔を見せる子。
落ち着きのない友人が目の前を行ったり来たりするのも構わずに、どこか対照的なふたりの姿から不思議と目が離せずにいた。