週の終わり、終業式によって一学期は終わりを告げた。御浜高校の夏休みには、前半と後半にしばらく午前のみの補習授業が組み込まれている。終日の休暇はその間だけというわけだ。とはいえ一学期が無事に終わったことに、学校中がどこか浮足立っていた。
この日の夕方、文也は颯介と薫子に会う約束をしていた。桜の幽霊の話が出来るのは、彼らしかいない。最初は颯介だけに電話をかけたのだが、彼は薫子も交えて話がしたいと言った。
「薫子さん、そういうのに詳しいはずだから」
信じられない話に戸惑いながらも、神妙な口ぶりで彼は金曜の夕方に会おうと約束した。彼女は以前に幽霊が出てくる作品を書き、その時にいくらか調べていたから、自分たちよりも知識があるだろうとのことだ。文也も、二人よりも三人の方が解決の糸口が掴めるだろうと同意した。
この日は三人とも高校の終業式の日だったが、颯介と薫子は放課後にそれぞれ文芸部の活動があった。時折、他の高校や中学とも交流があり、二人はそうした活動で出会った。読書感想文ですら億劫な文也にしてみれば、授業以外で文章を書きたがるとはなんて真面目な趣味だろうと思う。だが、「絵を描いたり音楽を作るのと同じだよ」と颯介は言った。自分で作品を作り上げる楽しみは、変わらないそうだ。小説は書くものでなく読むものとしている文也は、それでも感心する。
午前中に終業式を終えた文也は、買ってきた弁当を食べた後に約束の時間まで図書室で時間を潰した。
saku:ふー、意外と真面目じゃん。
最中、そんな軽口が届く。桜は今も近くにいるらしい。静かな図書室に相変わらず姿は見えないが、不思議な気持ちになる。
陽が傾き始めた頃に学校を出て、電車に乗り、互いの中間地点の駅で降りた。夏の午後四時半の熱気に汗をぬぐいながら、駅ナカのファミリーレストランを訪れる。席を案内されて五分も経たないうちに、二人も店にやって来た。約束の十分前。相変わらず真面目なカップルだ。
「文也くん、待った?」
「ううん。全然」
「今日も暑いね。すっかり夏だな」
それぞれ声を掛け合う。ボックス席の窓側に薫子が座り、その横に颯介。彼の向かいに文也の位置取り。飲み物を注文し、それが届いた頃、文也は本題を切り出した。
この日の夕方、文也は颯介と薫子に会う約束をしていた。桜の幽霊の話が出来るのは、彼らしかいない。最初は颯介だけに電話をかけたのだが、彼は薫子も交えて話がしたいと言った。
「薫子さん、そういうのに詳しいはずだから」
信じられない話に戸惑いながらも、神妙な口ぶりで彼は金曜の夕方に会おうと約束した。彼女は以前に幽霊が出てくる作品を書き、その時にいくらか調べていたから、自分たちよりも知識があるだろうとのことだ。文也も、二人よりも三人の方が解決の糸口が掴めるだろうと同意した。
この日は三人とも高校の終業式の日だったが、颯介と薫子は放課後にそれぞれ文芸部の活動があった。時折、他の高校や中学とも交流があり、二人はそうした活動で出会った。読書感想文ですら億劫な文也にしてみれば、授業以外で文章を書きたがるとはなんて真面目な趣味だろうと思う。だが、「絵を描いたり音楽を作るのと同じだよ」と颯介は言った。自分で作品を作り上げる楽しみは、変わらないそうだ。小説は書くものでなく読むものとしている文也は、それでも感心する。
午前中に終業式を終えた文也は、買ってきた弁当を食べた後に約束の時間まで図書室で時間を潰した。
saku:ふー、意外と真面目じゃん。
最中、そんな軽口が届く。桜は今も近くにいるらしい。静かな図書室に相変わらず姿は見えないが、不思議な気持ちになる。
陽が傾き始めた頃に学校を出て、電車に乗り、互いの中間地点の駅で降りた。夏の午後四時半の熱気に汗をぬぐいながら、駅ナカのファミリーレストランを訪れる。席を案内されて五分も経たないうちに、二人も店にやって来た。約束の十分前。相変わらず真面目なカップルだ。
「文也くん、待った?」
「ううん。全然」
「今日も暑いね。すっかり夏だな」
それぞれ声を掛け合う。ボックス席の窓側に薫子が座り、その横に颯介。彼の向かいに文也の位置取り。飲み物を注文し、それが届いた頃、文也は本題を切り出した。