どれくらいの間、そうしていたのだろう。
気がつけば玄関の鍵が開く音がして、二人は慌てて身体を離した。
「やべ……母さん帰ってきた……」
「え……どうしよう、ご挨拶っ……あ、でもこんな酷い顔じゃ……」
揃って突然の出来事にパニックになりながら、ひとまず涙を拭いて直哉がまず部屋を出る。
優恵はその場で取り残されて、どうしたものかと困惑しながらもつい先ほどとんでもない醜態を晒してしまったのではとうろたえた。
(私……勢いのまま抱きついたりして……あれ、でももしかして、これって両想いってやつ……? 付き合うってことは、私、直哉くんの彼女になったってこと……?)
また別のパニックで忙しい優恵は、直哉が戻ってきてようやく正気に戻る。
「優恵、今大丈夫?」
「え? あ、うん」
「ちょっと、母さんが優恵に挨拶したいって」
「え!? そんな、むしろ私の方が」
「ははっ、そんな緊張しなくていいから。おいで」
「う、うん……」
手招きされて、優恵は恐る恐る部屋を出る。
そしてリビングに向かうと、直哉とよく似た綺麗なショートヘアの女性の姿が。
「あなたが優恵ちゃん? 初めまして」
「は、初めまして。お邪魔してます……」
「ふふ、直哉から聞いてた通り、可愛い子ね」
「え……!?」
「おい母さん!」
「ふふっ、いいじゃない。私、まさかこんな可愛い子が来てくれるなんて思ってなかったからびっくりしたわ」
優恵の顔をまじまじと見た後に嬉しそうに顔を綻ばせた彼女は、
「直哉、素敵な彼女さんね」
と微笑み、直哉も
「だからそう言ってるだろ」
とどこか誇らしげ。
「あら、否定しないってことは、もしかして……!」
「もうこれくらいでいいだろ。優恵のこと送ってくるから」
直哉は母親のにやけ顔から逃げるように、優恵の手を取りさっと繋ぐ。
それにきゃー!と黄色い声をあげる母親を手で払いのけながら、部屋に戻って優恵の荷物を取ると家を出た。
「あの、お邪魔しました!」
「また今度ゆっくりお話しさせてねー!」
「はい!」
直哉に手を引かれるまま家を出て、すでに茜色に染まり始めた空の下を歩く。
繋がれた手の温もりに、まだぎこちないながらもそっと握り返すと直哉が驚いたように優恵を見て、そして柔らかく笑った。
「本当はもうちょっとゆっくりしたかったんだけど、母さんがごめんな」
「ううん。優しそうなお母さんだね」
「どうだろ。でも、多分優しいよ」
「ふふ、素敵」
照れたように呟く直哉に、優恵は笑う。
その笑顔を見て、直哉は立ち止まり優恵に顔を近付ける。
触れるだけのキスに、優恵の顔からは笑顔が消えて一瞬で真っ赤に染まった。
「な、な……」
「ははっ、真っ赤。かーわいい」
「そんっ……こんなところで急にしないでよっ」
「ごめんごめん。あまりにも優恵が可愛過ぎたから」
だからと言ってこんな人目のある場所で。
そう思うけれど、幸せそうな直哉の表情を見たら何も言えなくなった。
「直哉くん」
「うん?」
だから、仕返しとばかりに直哉の服を引っ張り、耳元に顔を寄せる。
「……大好き」
呟いた優恵は、今までの人生で一番幸せそうに笑っていた。
気がつけば玄関の鍵が開く音がして、二人は慌てて身体を離した。
「やべ……母さん帰ってきた……」
「え……どうしよう、ご挨拶っ……あ、でもこんな酷い顔じゃ……」
揃って突然の出来事にパニックになりながら、ひとまず涙を拭いて直哉がまず部屋を出る。
優恵はその場で取り残されて、どうしたものかと困惑しながらもつい先ほどとんでもない醜態を晒してしまったのではとうろたえた。
(私……勢いのまま抱きついたりして……あれ、でももしかして、これって両想いってやつ……? 付き合うってことは、私、直哉くんの彼女になったってこと……?)
また別のパニックで忙しい優恵は、直哉が戻ってきてようやく正気に戻る。
「優恵、今大丈夫?」
「え? あ、うん」
「ちょっと、母さんが優恵に挨拶したいって」
「え!? そんな、むしろ私の方が」
「ははっ、そんな緊張しなくていいから。おいで」
「う、うん……」
手招きされて、優恵は恐る恐る部屋を出る。
そしてリビングに向かうと、直哉とよく似た綺麗なショートヘアの女性の姿が。
「あなたが優恵ちゃん? 初めまして」
「は、初めまして。お邪魔してます……」
「ふふ、直哉から聞いてた通り、可愛い子ね」
「え……!?」
「おい母さん!」
「ふふっ、いいじゃない。私、まさかこんな可愛い子が来てくれるなんて思ってなかったからびっくりしたわ」
優恵の顔をまじまじと見た後に嬉しそうに顔を綻ばせた彼女は、
「直哉、素敵な彼女さんね」
と微笑み、直哉も
「だからそう言ってるだろ」
とどこか誇らしげ。
「あら、否定しないってことは、もしかして……!」
「もうこれくらいでいいだろ。優恵のこと送ってくるから」
直哉は母親のにやけ顔から逃げるように、優恵の手を取りさっと繋ぐ。
それにきゃー!と黄色い声をあげる母親を手で払いのけながら、部屋に戻って優恵の荷物を取ると家を出た。
「あの、お邪魔しました!」
「また今度ゆっくりお話しさせてねー!」
「はい!」
直哉に手を引かれるまま家を出て、すでに茜色に染まり始めた空の下を歩く。
繋がれた手の温もりに、まだぎこちないながらもそっと握り返すと直哉が驚いたように優恵を見て、そして柔らかく笑った。
「本当はもうちょっとゆっくりしたかったんだけど、母さんがごめんな」
「ううん。優しそうなお母さんだね」
「どうだろ。でも、多分優しいよ」
「ふふ、素敵」
照れたように呟く直哉に、優恵は笑う。
その笑顔を見て、直哉は立ち止まり優恵に顔を近付ける。
触れるだけのキスに、優恵の顔からは笑顔が消えて一瞬で真っ赤に染まった。
「な、な……」
「ははっ、真っ赤。かーわいい」
「そんっ……こんなところで急にしないでよっ」
「ごめんごめん。あまりにも優恵が可愛過ぎたから」
だからと言ってこんな人目のある場所で。
そう思うけれど、幸せそうな直哉の表情を見たら何も言えなくなった。
「直哉くん」
「うん?」
だから、仕返しとばかりに直哉の服を引っ張り、耳元に顔を寄せる。
「……大好き」
呟いた優恵は、今までの人生で一番幸せそうに笑っていた。