優恵は軽傷だったため、その後すぐに退院できた。
しかしその時にはすでに龍臣の葬儀は終わっており、龍臣の両親も引っ越してしまっていた。

 会ったところで何を言えばいいのかはわからなかったけれど、とにかく謝りたかった。
それが龍臣の両親を苦しめるだけだということもわかっていた。
二人が優恵の顔など見たくもないだろうということもわかっていた。
ただの自己満足だとわかっていながらも、謝りたかった。

 もしかしたら、謝ることで少しでも自分が楽になりたかったのかもしれない。
しかし、結局謝ることもできなかった。

 小さなニュースにもなった。新聞にも載った。


"中学生男児が暴走車に撥ねられ死亡"


 どうやらあの車は元々スピード違反をしていてパトカーから追跡されていたらしい。それを振り切って逃走後に事故を起こしたようだ。

 しかし、だからといって龍臣が死んだ事実は変わらないし、そのきっかけに少なからず優恵が関係している事実も変わらない。

 龍臣はもちろん優恵以外にも友達がたくさんいた。
周りから愛される人だった。

 そのため、学校では"あいつのせいで龍臣が死んだ"と後ろ指を刺されるようになってしまった。
次第に引きこもるようになり、不登校に。

 一年ほど経過するとどうにか定期テストの時だけ保健室登校をするようになったけれど、保健室には優恵以外誰もいないはずなのに"お前のせいで"という声が聞こえるような気がして、怖くてたまらなかったこともあった。

 なんとか中学を卒業して少し遠くの高校に進学したものの、四年たった今でも全く気持ちは晴れていない。
それどころか、龍臣を死なせておきながら自分だけ健康にのうのうと生きていることが許せなくて、毎日どう死のうかなんてことばかり考えていた。

 この四年の間に自ら命を断とうとマンションの屋上から飛び降りようとしたことも一度や二度ではない。
しかし、その度に怖くなってしまい足がすくんで踏みとどまってしまうのだ。


「ごめん、ごめんねオミっ……!」


 生きている自分が許せない。なのに、死ぬ勇気なんて無い。

 死んでしまいたい。逃げ出してしまいたい。なのに、怖くてそんなのできない。
どこまでも矛盾した自分に反吐が出そうで、ただ毎日を無意味に過ごすだけの日々。

 龍臣の命日にだけは必ず事故現場に行き、花を手向ける。
ごめんねとしか言うことができない。他に言葉が見つからない。

 そんな自分が大嫌いだった。