気が付けばあっという間に時間が過ぎており、外はもう夕焼け空。


「じゃあゆえち、私たちはそろそろ帰ろうか。愛子、長居しちゃってごめんね」

「ううん、また来てね」

「ありがとう」


 愛子に手を振ってから玄関を出て、栞と一緒に途中まで歩く。


「ゆえちも今日はありがとう! おかげで明日がもっと楽しみになった!」

「うん、楽しんできてね」

「うわ! 勉強も教えてくれてすごく助かったよ、あがとう! じゃあまた連絡するねー!」

「うん。ばいばい」


 栞と別れると、どうしようもない虚無感に襲われた。


(……友達もいらなかったはずなのに。すごい、楽しかったなあ)


 当たり前のように自分を受け入れてくれているのは、あの二人が事故のことを知らないから。

 あの事故のこと、龍臣のこと、直哉のこと。
全部を知ったら、あの二人はきっと優恵の元から離れていってしまう。


(怖い。怖いよ。だけど、このまま黙っていていいわけなんてない。二人を騙してるみたいだし、こんなんじゃ本当の友達だなんて言えないよ……)


 優恵が何かを抱えていることを知った上で、何も聞かずに寄り添ってくれる愛子と栞。
今はその優しさに甘えて一緒にいるけれど、実はそれはすごくずるいことなんじゃないか。

 友達だからって、全てを打ち明ける必要も全てを知る必要もない。
だけど、優恵は隠し事をしているという罪悪感に押しつぶされてしまいそうだった。

 直哉からの告白のこともまだ何も答えが出ていないのに、悩みは尽きない。


「……本当、どうしたらいいんだろう……」


 帰り道、いつもより遠回りをしてみても答えなんて出なかった。