「それで、急にどうかしたの?」
「来週の花火大会の時間決めようと思って」
「あぁ、そっか。もう来週か」
直哉に言われてスマホのカレンダーを見る。
そういえば来週末は花火大会の日だ。
(でも、時間決めるだけならわざわざ会う必要も無いのに)
「俺行ったことないから良い場所とかよくわかんなくて。もし優恵が知ってたら相談したいなと思ったんだ」
優恵は、直哉が適当な理由をつけて優恵に会いたかっただけだなんて、想像すらしていない。
「そっか。私もしばらく行ってないから最近はよくわからないんだけど……。昔はマンションの屋上で見てたんだ」
「屋上?」
「そう。今は危ないからって立ち入り禁止になっちゃって入れないんだけどね」
「そうなんだ」
小さい頃は龍臣と一緒にマンションの屋上で見ていた優恵は、マップを開いて目ぼしいところを提案する。
話し合いの末、結局打ち上げ会場から近すぎず遠すぎずの場所にある橋の上で見ることになった。
見晴らしが良いため、天気が良ければ少し小さいけど綺麗に見えるだろう。
「多分そこそこ混むと思うけど大丈夫?」
「うん。たまには慣れないとね」
「わかった。じゃあ当日は何かつまめるものと飲み物持って早めに行こうか」
「そうしよう」
時間と場所が決まった頃には飲み物も底をついており、このまま居座るわけにもいかないため帰ることに。
「送るよ」
「いいよ、まだ明るいし」
「……そういう問題じゃないの。ほら、行こう」
直哉が少し強引に優恵の手を取り歩き始める。
急に繋がれた手に、優恵の鼓動はどんどん早くなる。
恥ずかしくてたまらないのに、"どうして手を繋ぐの?"と聞くのは何故かもっと恥ずかしい。
直哉も衝動的に繋いでしまい、その後どうするかを全く考えていなかったことに気が付く。
いつしかお互い無言になってしまい、自分たちの鼓動の音と車の通る音、そしてうるさいくらいの蝉の声だけが辺りに響いていた。