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本格的な暑さが息苦しさを感じさせる頃、夏休みがやってきた。
「優恵ちゃん! 夏休みも遊ぼうね! 連絡するから!」
「うん。ありがとう」
「ゆえちー、今度宿題一緒にやろー……」
「うん。わかったよ。早めに終わらせちゃおう」
「ゆえち! ありがとううう」
愛子と栞に手を振り、一人で家まで帰る。
その道中、かなりの暑さで汗が噴き出るようだ。
プリントを入れているファイルをうちわのようにして扇ぎながら、早く帰って冷たいものでも飲もうと急いで家まで向かう。
すると、直哉から
"今から会えない?"
と連絡が来て足を止めた。
待ち合わせに指定されたのは、いつものあのカフェ。
制服のまま中に入ると、直哉はまだ来ていないようだった。
待ち合わせであることを伝えて席に通してもらい、最近アイスティーを注文する。
冷房が効いている店内はまるで天国のように涼しくて、優恵はその冷たい空気を吸おうと深呼吸を繰り返した。
噴き出すかのようだった汗も引き、逆に風邪でも引いてしまいそう。
ちょうど運ばれてきたアイスティーもとてもよく冷えていて、身体の芯から冷やすことができた。
「優恵、ごめん遅くなった」
「直哉くん」
少し待っていると、直哉がやってきた。
「……あれ?もしかして走ってきた?」
「優恵待たせてると思って……あれ、俺……」
頷いてから、自分が走ってきたことに気がついたらしい直哉。
肩が上下するほどに息切れしているところを見るに、それなりに長い距離を走ってきたようだった。
「直哉くん、運動はほとんどしないって言ってたのに。走れるようになったんだね」
「本当だ……。完全に無意識だった……」
優恵を待たせたくない。その一心だったから、全く気が付かなかった。
今まで少しでも鼓動が早くなると発作のトラウマで立ち止まってしまっていたのに。
まさか、そんなことも忘れて走れるようになるだなんて。
「とりあえず何か飲もう、すごい汗だよ」
「あ、うん。……すみません、コーラを一つ」
いつも大体カフェオレなのに、炭酸を飲むのも相当喉が渇いているのだろう。
「私のことなら気にしないで良かったのに」
「いや、そういうわけにはいかないでしょ。俺から誘ったんだから」
すぐに運ばれてきたコーラをぐいっと飲むと、着ているシャツで雑に顔の汗を拭いた。