迎えた放課後。
優恵は、玄関で龍臣と待ち合わせをして並んで帰る。
「そっちのクラス、今日小テストやった?」
「英語でしょ? やったよー。結構簡単だったよね」
「え、俺半分しか解けなかったんだけど」
「うっそ、だって単語の書取りだよ? 暗記してればすぐじゃん」
「俺最近気付いたんだけど、暗記系ダメっぽい」
「そうなの? じゃあ後で私の部屋おいでよ、教えてあげる」
「いいのか?」
「もちろん。幼なじみが頭悪いとか私も恥ずかしいし?」
「言ったな? じゃあ次の中間テストで勝負しよーぜ」
そのまま家に帰り、少しすると龍臣が勉強道具を抱えて優恵の部屋にやってくる。
二人で小さな机を囲みながら勉強すること一時間。
「なぁ、アイス食いたくねぇ?」
「食べたい! けど今うちの冷凍庫空っぽだよ」
「うちも。単語もなんとなく覚えてきたし、向こうのコンビニに買いに行こう」
「わかった。じゃあ準備する」
「俺もこれ一回置いてくるから」
「わかった。じゃあ十分後にエレベーター前ね!」
「ん」
お出かけ用のカバンの中から財布を出し、中身を確認してちょっと多めに三百円だけを小さな小銭入れに入れた。
それを持って、鏡で少しだけ前髪を直してから部屋を出る。
「おかーさん! オミと一緒に向こうのコンビニまで行ってくるからー!」
「わかった、気を付けてねー」
「うん! 行ってきまーす!」
リビングで夕食を作っている母親に伝えて、最近買ってもらったお気に入りのサンダルを履いて外に出る。
エレベーター前に行くと、すでに龍臣が待っていた。
「お待たせ」
「ん。行こ」
エレベーターに乗り込むと、龍臣は優恵の履くサンダルに視線を落とす。
「それ、新しいやつ?」
「そう、先週買ってもらったの。見て! ヒールがあるんだよ! 大人っぽくて可愛いでしょ!」
「可愛さは俺にはよくわかんないけど……なんか走りにくそうだな」
「もう! サンダルの時は走ることないから別にいーの!」
「……そんなもんか?」
「そんなもん!」
僅かながらについているヒールが、中学生になり少し大人に近づいたような気がして嬉しかった。
歩くたびにカツカツと小さく音を鳴らすサンダル。
まだ歩き方に慣れていなくて、少しよろけそうになりなからも優恵は笑っている。
龍臣はそんな優恵を呆れたように見つめていたけれど、優恵は全く気にしていない。
そのうち龍臣の方が優恵の歩くスピードに合わせ、よろける度に腕を支えるようになっていた。
「優恵、そのサンダル慣れるまでやめた方がいいんじゃねーの? 走りづらそうって言うか歩きづらそう」
「そのうち慣れるから大丈夫だって! ほら、コンビニもうすぐだよ!」
心配してくれる龍臣を笑い飛ばして、国道沿いにあるコンビニに向かう。
近所ではそこが一番アイスの種類が豊富で、二人で買いに行く時はいつもここだった。
すぐに食べられるアイスを買い、外に出るとすぐに袋を開ける。
「まだ四月なのに外でアイス食べてるの私たちくらいじゃない?」
「いいじゃん。うまいんだし」
「うん、食べながら帰ろ」
食べながらどのアイスが一番だ、なんてくだらない話をしながら歩いていると、すぐ目の前の信号が青になっているのが見えた。