"わかった。最終日にあの公園で"
その返事を見て、直哉は
「よし、とりあえず前進だな」
と数回頷く。
ここ数日よく考えて、やはり自分は優恵のことを好きになったと自覚した。
優恵の笑顔が見たいし、優恵のことをもっと知りたい。
龍臣のことが好きだと知って愕然としたし、故人にこんなことを思うのは失礼かもしれないけれど、負けたくないと思った。
そのためには積極的にアプローチしなくては。
雨が降る日は、優恵がどこかで泣いているんじゃないかと不安になる。
まだ知り合ったばかりで直哉は優恵のことは全然知らないし、逆もまた然り。
もしかしたらこれから知っていく中で気持ちが変わるかもしれない。
だけど、優恵の性格を考えると、直哉が自分から動かない限り優恵のことを知ることなどできやしないだろう。もしかしたら会ってすらくれないかもしれない。
とは言え、会ったところで優恵が直哉のことを"龍臣の心臓を持つ人"としか見ていないことはちゃんと気付いていた。
優恵が龍臣を想うあまりに、絶望の海に沈みかけていることもわかっていた。
そこに、手を伸ばしたい。
そして、優恵の小さな手を掴んで海の底から引っ張り上げたい。
今ならまだ間に合う気がした。