ジメジメとした六月が終わり、七月に入った頃。

 梅雨が明け、カラッとした日差しが段々と鋭くなってきて、今度は夏のジリジリとした暑さを感じるようになってきた。

 そんなある日、学校では夏休み前の期末試験が行われ、校内全体が外の天気とは真逆のどんよりとした空気になっていた。


「優恵ちゃん、じゃあねー!」

「バイバイ愛子ちゃん」

「ゆえちまた明日……」

「栞ちゃん、また明日ね。勉強頑張って……」

「ありがとゆえち……無事に玉砕するわ……」

「それは全然無事じゃないよ栞ちゃん……」


 いつも通りな愛子と、どうやらテストの出来が芳しくない様子の栞。
二人に手を振り、優恵は帰り道を歩く。
するとスマホが震えて、連絡が来たことに気がついた。

 最近スマホを見る機会が格段に多くなった気がする。
愛子と栞に勧められてほのぼの育成系のゲームのアプリも初めてみたのも大きい。
連絡は愛子からか、栞からか。そう思って立ち止まりスマホを見ると、


「……え?」


 それは、直哉からのメッセージだった。


"今ってテスト期間? 今日から?"


 おそらく直哉の学校でもそうなのだろう。
ただ、そんなことを聞いてどうするのだろう。
そう思いつつ


"そうだよ"


 と返事を送ってスマホをポケットにしまう。
そのまま歩き出すと、またスマホが震えてもう一度足を止めた。


"テスト終わりの日の放課後、ちょっと会えない?"


 龍臣のことはほとんど聞いた。優恵の中でも、自分を許すことはできずともなんとなく思い出を咀嚼することができている。

 そんな優恵と直哉を繋いでいるのは龍臣だけのはず。

 友達になったとは言え、用もなく会うような間柄では無いと思っていた。


(……まだ私に何か用でもあるのかな……?)


 瞬時にそう判断して、


"いいけど……、何か用だった?"


 と送る。
すると直哉は


"え、用が無かったら誘ったらダメ……?"


 と犬が泣いているスタンプと一緒に送ってきた。


「……いや、ダメじゃないけど……」


 なんだか、最近そのセリフをよく口にしている気がして、自分の気持ちを素直に言葉にできないのがもどかしい。


"わかった。最終日にあの公園で"


 用が無かったら誘ったらダメなのか、その問いに答えていないずるい自分。

 だけど、今はこれが精一杯だった。