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「ねぇ、あなたってもしかして甘党なの?」
「え?」
「だって、この間のクレープといい今日のこれといい。そうなのかなって」
「あぁ……そうだね。甘いものは結構好きかも」
「そうなんだ」
優恵が直哉とクレープを食べに行った日から、二週間が経過した。
あれから直哉からは頻繁に連絡が来るようになったものの、どう返信をするべきなのかがわからなくて既読をつけて終わりだったりスタンプだけだったり一言返して終わりだったりと、なんとも冷たい対応をしていた。
そんな中、急に直哉から
『優恵ってケーキ好き? 街中にある新しくできた店でスイーツバイキングやってるらしいんだ。行きたいんだけど一緒にどうかな? もちろん俺の奢りで』
と連絡が来ていた。
『学校の友達と行かないの?』
『友達はみんな甘いもの好きじゃないし、男同士で行く雰囲気の店じゃないから恥ずかしくて嫌だって言われて』
『じゃあ女の子誘えばいいじゃん』
『だから今誘ってる』
『……』
そんなやりとりがあり、何故か一緒に来ることになったスイーツバイキング。
そこは確かに男子高校生が二人や三人で来るには少しメルヘン感が強いお店で、童話をモチーフにしているのか端から端までが"可愛い"で溢れているお店だった。
「さすがにこんな可愛いところに一人で来る勇気はないし。かと言って学校に女子の友達とかいないし」
「そうなの? モテそうだけど」
「それが全然。ありがたいことに顔は良いって言ってもらえるけど、ひょろすぎて恋愛対象には入らないらしいよ」
「へぇ」
「残念イケメンとかもったいないとか言われてるらしい。言いたい放題言うのとかやめてほしいよね」
「まぁね」
「うちの学校では運動部で鍛えてるような結構がっしりしたタイプがモテてる」
「そうなんだ」
確かに直哉は線が細すぎるし実はそこらへんの女の子よりも軽いんじゃないかと思いたくなるほど。
それなのに直哉の目の前にあるお皿にはたくさんのケーキが乗っていて、その体型とのギャップに驚いてしまいそうだ。
「あんまり甘いもの好きそうに見えなかったからびっくりした」
「なんで? クレープも食べたじゃん」
「そうだけど……あれは流行り物だからなんとなく食べてたのかと思って」
「そんなわけないよ。俺、ずっと入院してたから病院食しか食べてなくてさ。退院してから初めてクレープ食べておいしさに感動して。それまではケーキもあんまり食べられなかったから、今甘いものの欲求が爆発してるんだと思うんだよね」
「あぁ、なるほどね……」
言われてみれば、心臓が悪かったのなら当たり前のことだろうと頷く。
長年病院での入院生活を送っていたのなら、栄養バランスは整っていただろうけれど食べたいものは食べられなかったのだろう。
食べたいものを食べたい時に親にリクエストできるのも、幸せなことだったのかと気がつく。