昼休みになると、宣言通り栞が一番に優恵の元へやってきた。


「ゆえち、お昼食べよ!」

「うん……栞ちゃんは学食?」

「んーん。私も愛子もお弁当! ゆえちもでしょ?」

「うん」


 少し後に愛子もやってきて、三人で優恵の机を囲む。
ぎゅうぎゅうになりながらの食事になったけれど、二人は楽しそうにおかずの交換をしながら食べていた。


「ゆえちのお弁当もおいしそう! お母さんの手作り?」

「うん。って言っても大体は冷食ばっかりだよ」

「わかるー、でも冷食って意外とおいしくない? 私結構好き!」

「私もー!このエビグラタン小さい頃から大好きだから絶対毎日入れて! ってお母さんにお願いしてるくらい」

「そういえば愛子のお弁当いっつもエビグラタンいるよね。そういうことかあ!」


 嬉しそうに最後までエビグラタンをとっておく愛子に栞が笑う。
二人の空気はすごく柔らかくて、優恵も自然と笑ってしまった。
すると、愛子と栞が妙に静かになって優恵の方をじっと見つめる。


「え……あ、どうかした?」


 慌てて聞くと、


「……優恵ちゃんが笑ったところ初めて見た!」

「かんわいいい! もう一回笑って! 写真撮りたい!」

「え……いや、全然可愛くないし……それに、笑ってって言われると逆に笑えないから……」

「えぇー! 今のゆえちの笑顔超可愛かったのに!」


 面と向かってそう言われると途端に恥ずかしくなって、優恵は顔を赤くする。
それがさらに二人の興奮を煽り、しばらく優恵の笑顔を見るために二人は奮闘していた。

 次第に意味の無い笑いが込み上げてきて、それが移って結局三人でしばらく笑っていた。

 お弁当を食べた後はお互いの話になり、なんとなく優恵は聞き役に回る。
二人は中学は別々で入学式の日に友達になったらしく、常に一人でいる優恵のことがずっと気になっていたようだ。

 愛子は毎朝挨拶してくれていたけれど、栞も気にかけてくれていたことは優恵は全く知らなかったため驚く。


「優恵ちゃん、いっつも一人で凛としてるからかっこいいなあってずっと思ってて。話しかけてみたいけど迷惑かなあとか色々考えてたの」

「それで、昨日あの男の子とゆえちが話してるの見かけて、やっぱり声かけてみよう! って話になったんだ」

「そうだったんだ……」


 今朝話しかけられた経緯を聞き頷く。
その後もいかに優恵が魅力的に見えるのかを懇々と説明され、優恵はあまりの恥ずかしさに言葉を失った。