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 夜の処置室。簡易ベッドに下着姿で横たわるわたしの目の前にいるのは菅田先生。わたしのパーツを点検して清掃してくれる。

 わたしの体は言わずもがな中も外も傷だらけだ。菅田先生はそのひとつひとつに異常がないか大まかに確認して「はい、今日も大丈夫だよ」とわたしにパジャマを手渡す。

 もぞもぞとパジャマを着ていると菅田先生はふと思いついたようにわたしの頭をそっと撫でた。



「もう子どもじゃないですよ。わたしは穂積よりちょっと年上なんですから」

「そうだった、悪いね。いつまでも君たちは僕の子どもみたいなものだから」



 そう言って菅田先生はそのやさしい垂れ目をゆるりと下げる。



「穂積くんをうまく導いたね」

「……はい」

「その調子だ。きっと彼は音楽に触れることでトラウマを乗り越えていけると思うよ」

「……」

「浮かない顔だね? どうした?」

「……いえ。なんでもないです。ただ……少し、寂しくて」



 理由はわかっている。だけれども、この理由を認めてしまってはいけない。



「セナ。君が望んだ君の役目はなんだい?」

「穂積を……自力で立ち直らせること、です」

「そうだね。穂積くんの両親のためにも、穂積くんを立ち直らせることが、君ができる唯一のことだよ。僕らはふたりにとてもよくしてもらったからね」

「……はい」



 そう。穂積の両親への恩返しをしなくちゃ。それだけがわたしがこの世に生きていていい理由なのだから。わたしが、わたしでいられるうちに。



「じゃあ、そろそろお休み。明日も学校だろう」

「おやすみなさい」





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