「セナ、身長今いくつだ?」
「ホヅミは?」
「確かこの間の身体測定の時は175とかだった」
圧倒的に横になっている時間が長い僕は、ここ数年間でだいぶ身長が伸びた。寝る子は育つ。
「じゃあわたしは155だ」
「じゃあってなんだよ」
「わたしの身長はホヅミマイナス20センチなの」
「……なんで?」
「20センチが一番ハグしやすい身長だから」
うん。無視しよう。
「セナ的には、今日の英単語テストどこが出る?」
「…………mean」
「〜を意味する?」
「正解だけどそうじゃない」
「え? 合ってるよ」
「You are so mean!」
「何それ」
「ホヅミのばか」
「バカ? そんな使い方あったっけ」
「あるってネットに書いてあるもん」
「そのネット検索機能、僕にも分けてくれよ」
「ダメ」
「意地悪なAIだな」
Meanの意味を確認するべくカバンから単語帳を出そうとした時、ちょうど学校の最寄りに到着した。
「おはよー」
「おはよっ」
バスを降りればあちこちで挨拶がこだまする。もちろんセナもその一員だ。
「桜庭おはよ」
「あ、おはよう〜」
にこやかに朝の挨拶を返すセナと違って、僕におはようと声をかけてくる人はいない。当たり前だ。だって僕なんか人と満足に話せないひょろひょろのインキャ(以下略)。
いつものことだ。問題ない。
下駄箱で上履きを履き替えて、教室へ向かう。もちろんずっとセナと一緒。
なんの魔術を使っているのかわからないけれど、セナの席はいつだって僕の隣の席だ。一回原理を尋ねてみたら「数学の応用。ほら、確率って習ったでしょ?」と答えてきた。
何を言ってるかわからない。わからない科学は凡人にとっては魔法でしかない。ので、それ以来僕はセナをたまに魔法少女と呼んでいるのだけれど、そう呼ぶとまんざらでもない顔をする理由もちょっとよくわからない。