結太はやっぱり何も言わない。
包み込むような優しい目から、結太の感情は読み取れない。
私はスマホを取り出して、毎日見ているフォルダを開いた。
「ほら、これ見て」
それは名無しのフォルダ。
結太との思い出がたくさん詰まっているそのフォルダは、写真のデータだけで100件は超えていた。
さっき撮った写真達もそこで笑ってる。
幼さが残った二人の顔が、懐かしさと時間の長さを教えてくれる。
私達はどれだけの長い日々を一緒に過ごしてきたのだろう。
でも、それは何も無駄なものなんかじゃない。
誰がどう言おうと、それは大切な私達の宝物。
でも、今日、その宝物を手放そうとしている。
「今日は、このフォルダをゴミ箱に捨てる。
そして、復元できないよう、ごみ箱の中のものも全部削除する。
大事な二人の思い出で、大切な宝物だけど、今日ここで捨てる。
結太、ちゃんと見ててね。
私の決意を、そして、私達が幸せになるための大切な儀式を……」