結太にお見合いの話がきても、私に愛の告白をする人がいても、私達は全てお断りした。


蕎麦屋が定休日の日には、遠くで待ち合わせをして、誰にも見つからない誰も知らない町でデートをした。

楽しくて楽しくて、でも、その日が終わる頃は、たまらなく寂しくて…

ポロポロ涙を流す私を、結太何度も優しく抱きしめた。

言葉はなくていい。
言葉は二人をダメにする。
愛を語りたくても、私達には未来はないのだから。


二十三歳の梅雨の季節。
二人のデートは雨で台無しになった。
でも、いつのもように遠出して、海が見える駐車場に車を止めた。


窓から見える海は、寂しい灰色の海。
まるで私達の心の中を映しているみたいだった。

透明にはなれない濁った海は、私達に限界を告げていた。


「今の時代じゃなかったら良かった…
もっと前の時代だったら、いとこ同士は普通に結婚できたのに。

何で今の時代に生まれちゃったんだろう」