もう、夢見る事はやめる……
そう思って十年が過ぎた。
私は、物心がついた時から結太の事が好きだった。
結太っていうのは、私の母方の従兄で私より二歳年上、そして男三兄弟の長男。
実家は蕎麦屋。
その蕎麦屋は私の家の二軒隣で、私達は兄弟のように育った。
私は二人姉妹のお姉ちゃんの方で、活発な妹に隠れた典型的な引っ込み思案。
子どもの頃の結太はそんな私のお世話係だった。
うん? それは今でも変わらないけど…
私は結太に依存し過ぎている。
結太の好きな物は私も大好き。
もちろん、結太の好きな映画は必ず観に行くし、結太の話が聞きたくて、私は毎日蕎麦屋へ通う。
私の全ては結太のエッセンスで彩られていた。
結太だけで廻っていた私の世界。
従兄とか身内とか関係ない、結太は幼い私のヒーローで王子様だった。