つーかこいつ、こうやって見ると背高いな……。

 クソッ、俺なんてまだ169センチしかねぇのに……!バスケ選手の中じゃ小柄すぎる。

 身長のせいにしたくなくて、必死に技術を磨いてキャプテンを任せられるまでにはなったけど……。
 それでも毎日牛乳がぶ飲みして少しでも伸ばそうとしてんのに!

 あと、さりげなく赤星も俺より身長高いのムカつく。


「お前ら縮め!!!!」
「は?」
「あー橙矢のいつもの身長発作ね。おーよしよし」
「頭撫でんな赤星!!」


 こいつはマジでいつも人のことからかってやがる……!


「なになにー?なんか面白いことしてんのー?」


 そこにひょこっとくるみが顔を出した。
 しかもオイ、風呂上がりじゃねーか……!


「バカやろー!!そんなカッコでうろつくな!!」
「何が?」
「髪濡れてんだろ!乾かせ!!」
「今乾かそうとしてたら、橙矢たちが廊下で騒いでたんでしょ〜」


 ちなみに寮には大浴場があり、男女で使える時間が分かれてる。
 きっちり時間で区切られてるから、バッタリなんてハプニングは起こらない。
 部屋にはシャワーもついてるしな。


「橙矢がくるみの髪乾かしてあげたら?」
「ハア!?」


 何言い出すんだ、赤星の奴!!


「え、無理。橙矢、雑に乾かしそうだし。自分でやる」
「俺だってやりたかねーよ!」
「てかマジでうるさいんですけど〜。何騒いでたの……あ。」
「なんだよ?」
「……九竜くんもいたんだ」


 くるみは急に恥ずかしそうに、首に掛けていたタオルを頭に被る。

 ……っ、なんだよ、その反応は……。


「……俺は戻る」


 九竜は踵を返して自室に戻った。
 その後ろ姿を見つめるくるみの表情は見ていられるもんじゃなくて、タオルで頭をわしゃわしゃした。


「ちょっ!?何すんのよ橙矢!」
「バーカ!風邪引く前に部屋戻れ」
「はぁ!?何なの!」


 なんなんだよ。明らかに意識した顔しやがって。

 俺や赤星の前では平気なくせに。
 濡れた頭で部屋着のままうろつくくせに。

 なんでだよ。
 なんで九竜なんだよ――……。


 でも、くるみの恋が叶わないことは知ってる。

 九竜には、許嫁とかいうのがいるらしい。
 どこまで本気か知らないけど、まあ要するにあいつにも好きな奴がいるってことだ。

 あらゆる女子からの告白を「許嫁がいる」と言って断ってるらしいけど、マジでどこまで本当なんだろうな。
 一回寮内でその話を聞いた時、案外変な奴なんじゃないかって他の奴らと話し合ったけど。

 とにかく、くるみもその話は知ってる。
 だから不毛な片想いだってこともわかってるはずなんだ。

 それなのに、なんで……。
 苦しむことになるって、わかってるはずだろ?なんでそんな奴のこと、今でも好きなんだよ。

 いや、それは俺だってそうだ。俺だって、今は不毛な片想い。
 幼馴染の関係性から抜け出せない。

 でも、諦められたら苦労しねぇんだよ。

 バスケだってそう、大柄で高身長の奴らばっかの中でも絶対に負けたくなかった。
 諦めの悪さと粘り強さなら、誰にも負けねぇ。

 そもそも俺は、この恋の諦め方を知らない。

 いつからなんて知らない、きっかけも覚えてない。気づいた時にはもう好きだった。