呪術師と語っても、だれもが将軍の手元に置かれるわけではなく、とくにこの2つの呪術を得意とする呪術師が重宝された。


ところが、徳川家に気に入られていた玻玖という名の呪術師は、そのどちらの呪術も兼ね備えており、どの呪術師よりも豊富な知識と桁違(けたちが)いの能力を秘めていた。


いくら数で勝ろうとも、奇襲をかけようとも、決して徳川の強さは揺るがなかった。

なぜなら、玻玖の『予知眼ノ術』で、徳川にはそれらすべてが手に取るようにわかっていたから。


おそらくこの時代では、『予知眼ノ術』を使える呪術師は玻玖だけ。

その玻玖ほしさに戦を仕掛ける武将もいたが、ことごとく返り討ちにあわされた。


こうして徳川家が天下を取り、江戸時代が幕を開けたのだ。


強い呪術の力を持って生まれたあやかしの狐――。