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「……はは」
なのに、もう、思い出せない。
一生忘れないって、そう思ってたのに。初めて触れた柔らかな君の手のひらの感触、絶対に忘れないってそう思っていたのに。
どうして、思い出せないんだろう。どうしたら、思い出せるんだろう。
君はどんな顔で笑っていたっけ。どんな匂いがしたっけ。どんな風に魂をぶつけて、どんな風にそのスティックを高鳴らせていたっけ。
モモのざらざらした手のひらから、ジワリと滲むぬくもりに、ミツハを過去のひとにしている自分を嫌でも思い知った。
ツンと痛む鼻の奥を誤魔化すみたいに、目線を斜め下に逸らした。
きっとモモは、斜め上を見上げてるに違いない。
泣きそうなとき、君は涙が零れないように斜め上をみる。
反対に僕は、これ以上感情がせり上がらないよう、斜め下をみるんだ。
僕らはそんなくだらない癖ですら知っている。気づきたくなくても、知ってしまう。それはもはや関係じゃなくて、呪縛。
僕らは、幼馴染、という名前の呪縛から逃れられない。
僕らは、一緒に歩む相手じゃなかった。こんなにも、ずっと傍にいる相手じゃなかった。
「…………」
「…………」
ほら、今だって目が合わない。
沈黙が、僕らの間に流れていた。
“モモ、ナシ。3人で、絶対、優勝しよう!”
そう言って僕の右手とモモの左手をとって、ぎゅう、と握りしめた君はもういない。