狩りに出たティナが四日後に帰って来た。サナリスクの面々を連れて。
わたしたちを陰ながら護衛していてくれたから一緒に帰って来ても不思議じゃないんだけど、何で獣人の女の子を連れて来たのよ?
てか、この世界に猫耳獣人がいたのね。まんま、猫耳に尻尾が付いているわ……。
「プランガル王国から来たのでしょう」
と教えてくれたのはクルスさんだ。
「プランガル王国ですか?」
「わたしは行ったことがないので聞いた話なのですが、大陸の奥にあり、大きな湖を持つ獣人の王国だそうですよ」
へー。大陸とわかるくらいには天文学? 地学? は進んでいるんだ。元の世界じゃ地平は平面とか信じられていた時代があったのにね。
「獣人の国ですか。見てみたいものです」
わたしは猫派でも犬派でもない。長い病院生活で動物を愛でる気持ちは生まれなかった。ただ、不思議な生き物がいる王国ってのは興味があるわ。獣人なんてファンタジーじゃない。
いや、そこにしゃべる猫っていうファンタジーがいるじゃん! とかの突っ込みは受け付けませんのであしからず。
「で、何で連れて来たの?」
仮にこの子が助けを求めて来たとして、命を助けたことで達成されたんじゃないの? あとは警察……はないか。伯爵様に任せたらいいんじゃないの? ここの問題はカルブラ伯爵様の問題でしょう。
「キャロにどうしようか聞こうと思って連れて来た」
わたしたち、お世話になっている身よ。クルスさんの許可は得るべきでしょう。
「クルスさん。申し訳ありません。この子を泊めてもいいですか? 費用は出しますので」
わたしも鬼や悪魔じゃない。放り出すなんてことは出来ない。獣人の子と繋がりが出来るのなら費用を出すくらいおしくはないわ。プランガル王国のことを聞けるんだからね。
「構いませんよ。キャロルさんに考えがあるようなで」
「そこまで深い考えはありませんよ。ただ、プランガル王国の情報や獣人のことに興味が出ただけです」
「キャロルさんらしいですね。情報収集を大切にするのは。纏めたらわたしにも読ませてください。プランガル王国の情報はあまりないので」
バイバナル商会としてもプランガル王国のことは知らないんだ。交易はしてないのかな?
「あ、これを機会に魔法医って呼べますかね? 回復魔法を見てみたいんですよ。もしかしたら転写出来るかもしれないので」
見なくても治癒力上昇の付与は出来るかもだけど、転写って形にしている以上、一度は見ておかないとね。
「そうですね。普段は予約が必要ですが、緊急ということで声を掛けてみましょう。ルーグ。お願いします」
「畏まりました」
ルーグさんが出て行き、一時間して四十歳くらいの女性と弟子と思われる二十歳くらいの男性を連れて来た。
「ラレア様。お忙しい中、ありがとうごさいます」
「構わないわ。患者が獣人と聞いて興味を持っただけだからね」
この人も研究者タイプみたいね。
「さっそく診るわ。男は部屋を出て行きなさい」
「わたしが手伝います。ティナ」
女でよかった。間近で回復魔法を見れるわ。
一向に目を覚まさない獣人の女の子の毛布を剥がし、服を脱がせた。
体は人間の女の子とまったく変わらない。わたしくらいの年齢なので胸は小さいけど、痣があちらこちらに。ムチャクチャに走ったんでしょうね。
「人と変わらないのね」
魔法医のラレアさんもそう見えてわたしと同じことを口にした。
「かなりあちこちに体をぶつけたみたいね。骨に異常はなし。切り傷もないわね」
手を体に触れているところをみると、魔力を使ったエコーみたいなことが出来るみたいだわ。
瞼を開いて瞳孔を診たり、手首に触れて脈まで測っている。
「医療技術が高いんですね」
まさかここまでとは思わなかった。魔法を掛けて終わりだと思っていたわ。
「……あなたは?」
怪訝な顔でわたしを見た。自己紹介しておけばよかったわね。
「わたしはキャロルです。そっちはティナ。バイバナル商会でお世話になっている冒険者見習いです」
「見習い冒険者がなぜバイバナル商会に世話になっているの?」
「コンミンド伯爵様のところでお嬢様のお友達係をしていました。バイバナル商会はそのときからのお付き合いです」
「貴族なの?」
「いえ、農民の子ですよ。バイバナル商会からは変わった子供と見られていますが」
「……そうね。変わった子供だわ……」
否定することじゃないけど、そうはっきり言われると悲しくなるわね……。
「なので気にせず治療を進めてください」
ラレアさんは気を取り直して痣のところに手を当てると、回復魔法を発動させた。
治癒力を高めるとかじゃなく、ラレアさんの魔法で痣になったところを外部から回復しているわ。
「局所回復も出来るんだ」
ちゃんと確立された技術があるんだ。これは、固有魔法なのかしら? でもそれだと確立されるの大変よね? てことは、通常魔法で行えるってことかな?
でも、病気とかには不向きそうね。外傷しか効果がないのかな? 風邪とかに効いたらノーベル賞ものよね。回復魔法、奥が深そうだわ……。
わたしたちを陰ながら護衛していてくれたから一緒に帰って来ても不思議じゃないんだけど、何で獣人の女の子を連れて来たのよ?
てか、この世界に猫耳獣人がいたのね。まんま、猫耳に尻尾が付いているわ……。
「プランガル王国から来たのでしょう」
と教えてくれたのはクルスさんだ。
「プランガル王国ですか?」
「わたしは行ったことがないので聞いた話なのですが、大陸の奥にあり、大きな湖を持つ獣人の王国だそうですよ」
へー。大陸とわかるくらいには天文学? 地学? は進んでいるんだ。元の世界じゃ地平は平面とか信じられていた時代があったのにね。
「獣人の国ですか。見てみたいものです」
わたしは猫派でも犬派でもない。長い病院生活で動物を愛でる気持ちは生まれなかった。ただ、不思議な生き物がいる王国ってのは興味があるわ。獣人なんてファンタジーじゃない。
いや、そこにしゃべる猫っていうファンタジーがいるじゃん! とかの突っ込みは受け付けませんのであしからず。
「で、何で連れて来たの?」
仮にこの子が助けを求めて来たとして、命を助けたことで達成されたんじゃないの? あとは警察……はないか。伯爵様に任せたらいいんじゃないの? ここの問題はカルブラ伯爵様の問題でしょう。
「キャロにどうしようか聞こうと思って連れて来た」
わたしたち、お世話になっている身よ。クルスさんの許可は得るべきでしょう。
「クルスさん。申し訳ありません。この子を泊めてもいいですか? 費用は出しますので」
わたしも鬼や悪魔じゃない。放り出すなんてことは出来ない。獣人の子と繋がりが出来るのなら費用を出すくらいおしくはないわ。プランガル王国のことを聞けるんだからね。
「構いませんよ。キャロルさんに考えがあるようなで」
「そこまで深い考えはありませんよ。ただ、プランガル王国の情報や獣人のことに興味が出ただけです」
「キャロルさんらしいですね。情報収集を大切にするのは。纏めたらわたしにも読ませてください。プランガル王国の情報はあまりないので」
バイバナル商会としてもプランガル王国のことは知らないんだ。交易はしてないのかな?
「あ、これを機会に魔法医って呼べますかね? 回復魔法を見てみたいんですよ。もしかしたら転写出来るかもしれないので」
見なくても治癒力上昇の付与は出来るかもだけど、転写って形にしている以上、一度は見ておかないとね。
「そうですね。普段は予約が必要ですが、緊急ということで声を掛けてみましょう。ルーグ。お願いします」
「畏まりました」
ルーグさんが出て行き、一時間して四十歳くらいの女性と弟子と思われる二十歳くらいの男性を連れて来た。
「ラレア様。お忙しい中、ありがとうごさいます」
「構わないわ。患者が獣人と聞いて興味を持っただけだからね」
この人も研究者タイプみたいね。
「さっそく診るわ。男は部屋を出て行きなさい」
「わたしが手伝います。ティナ」
女でよかった。間近で回復魔法を見れるわ。
一向に目を覚まさない獣人の女の子の毛布を剥がし、服を脱がせた。
体は人間の女の子とまったく変わらない。わたしくらいの年齢なので胸は小さいけど、痣があちらこちらに。ムチャクチャに走ったんでしょうね。
「人と変わらないのね」
魔法医のラレアさんもそう見えてわたしと同じことを口にした。
「かなりあちこちに体をぶつけたみたいね。骨に異常はなし。切り傷もないわね」
手を体に触れているところをみると、魔力を使ったエコーみたいなことが出来るみたいだわ。
瞼を開いて瞳孔を診たり、手首に触れて脈まで測っている。
「医療技術が高いんですね」
まさかここまでとは思わなかった。魔法を掛けて終わりだと思っていたわ。
「……あなたは?」
怪訝な顔でわたしを見た。自己紹介しておけばよかったわね。
「わたしはキャロルです。そっちはティナ。バイバナル商会でお世話になっている冒険者見習いです」
「見習い冒険者がなぜバイバナル商会に世話になっているの?」
「コンミンド伯爵様のところでお嬢様のお友達係をしていました。バイバナル商会はそのときからのお付き合いです」
「貴族なの?」
「いえ、農民の子ですよ。バイバナル商会からは変わった子供と見られていますが」
「……そうね。変わった子供だわ……」
否定することじゃないけど、そうはっきり言われると悲しくなるわね……。
「なので気にせず治療を進めてください」
ラレアさんは気を取り直して痣のところに手を当てると、回復魔法を発動させた。
治癒力を高めるとかじゃなく、ラレアさんの魔法で痣になったところを外部から回復しているわ。
「局所回復も出来るんだ」
ちゃんと確立された技術があるんだ。これは、固有魔法なのかしら? でもそれだと確立されるの大変よね? てことは、通常魔法で行えるってことかな?
でも、病気とかには不向きそうね。外傷しか効果がないのかな? 風邪とかに効いたらノーベル賞ものよね。回復魔法、奥が深そうだわ……。