やっと満足できるバルボナパンができた頃、ルーグさんの幼なじみさんがやって来た。
……女の人なんだ……。
この時代はまだ男社会。女性が職人になることは少ない。そんな時代で料理人になれるって凄いことじゃない?
「わたしの幼なじみでマリーレと言います」
「マ、マリーレよ。よろしくね」
連れて来られて紹介されたのが遥か下のわたしじゃ戸惑うのも当然よね。
「冒険者見習いのキャロルです。来てくださりありがとうございます」
「ず、随分と礼儀正しい子ね」
「コンミンド伯爵領では伯爵令嬢のお友達をしていたようです」
ルーグさんにはわたしのこと伝わってなかったの? まあ、わたしの情報なんて知っても出世には関係ないか。
「お友達係か。平民でなるなんて凄いね。大抵は男爵令嬢がなるものなのに」
お嬢様に問題がーとは言えないので黙っておく。
「マリーレさんは、お城に上がって長いんですか? 女性で料理人なるの大変だったのでは?」
「ま、まあ、そうだね。わたしの場合は運がよかっただけさ。坊ちゃんが食合わせが悪いお方でね。パンが食べれなかったんだよ。わたしがパコレの粉で作ったパンを食べられて気に入られたのよ」
パコレとはトウモロコシで、粒を乾燥させて挽いたもので作るナンみたいなものみたい。
「アレルギーですか。そんなものがあるんですね」
異世界でもアレルギーがあるんだ。あれは現代病かと思っていたわ。
「アレルギー、ですか?」
「食合わせが悪いみたいな感じの言葉です。パンや卵で泡を吹いたり肌に赤い点が出たり、埃でくしゃみするとかもそうですね。体の免疫が働かなかったとか狂ったりするみたいですよ」
体は悪かったけど、アレルギーはなかったからよく知らないのよね。
「詳しいのですね」
「まったく詳しくはないですよ。そういうのがあるって知っているだけです。治し方も知らないですしね」
このファンタジーワールドなら治す方法もあるかもしれないわね。
「回復魔法とかあったりします?」
「ありますよ。ただ、強力な技は教会が独占していますが」
「擦り傷程度を治すのなら?」
「……唾でもつけて勝手に治りますが、魔法医に行けば治してくれるかもしれませんね。ただ、銀貨一枚は取られると思います」
なかなか高額治療費を求められるのね。考えてみればお医者さんとか見たことがないわね。さすがに薬師はいるような話は聞いたことあるけど。
「回復魔法でアレルギー──食合わせは治せなかったんですか?」
「逆に治せるものなの?」
「やり方次第じゃないですか? 食合わせが悪いってことは体が正常じゃないってことですよね? 免疫力を高めて……」
あ、そっか。わたしの付与魔法で何とか出来るか。
「回復魔法、わたしでも受けることは出来ますかね?」
「必要ならバイバナル商会が出します。クルス様からキャロルさんのことには金に糸目をつけるなと命令されてますから」
いや、付けなくちゃダメでしょう。どんだけわたしに掛けようとしてんのよ?
「そ、そうですか。なるべくお金を使わせないよう心掛けます」
さすがにわたしのせいで商会が傾いたとかなったら嫌だからね。
「キャロルさんは大丈夫でしょう。短い間ですが、キャロルさんは自制が取れてますから」
「集中すると我を忘れるけどね」
そこ! うるさいよ! 黙ってなさい!
「ま、まあ、回復魔法は後にして、まずはマリーレさんにお城で作っているものを教えてください。わたしもお城で教えてもらった料理を教えますんで。ここにある食材で足りますか?」
あ、食材を揃えてもらうのにお金を使わせちゃったわね。ごめんなさい。わたしの報酬から引いてください。
「充分だよ。てか、どんだけ集めたんだい? わたし、今日しか休みもらえなかったんだよ?」
「五品も作ってもらえたらあとはこちらでアレンジ、工夫してみます」
「そ、そうかい。手の込んだものじゃないのになるけど、いいの?」
「構いません」
本当に知りたいのはこの世界の食材だ。それを知る前にマリーレさんと仲良くなっておく必要がある。料理人なら料理で仲良くなりましょう。
カルブラ伯爵領で採れた食材の他に、カルブラ伯爵領で用意出来る調味料。これをどう使うかを見て、細かくメモしていった。
あ、これか。わたしが求めていたものは。ゼラチンに変わるものがないかてな探していたけど、コンミンドでは発見出来なかったのよね。やはり大きな町にはあったわ。
わたしが思う以上にこの世界は食材が豊富だ。ただ、地方には回って来ないだけで、他にはあると踏んでたのよね。
これがあればホイップクリームが作れてフルーツサンドが作れるわ。入院中、ずっと食べたいと思ってたのよね。
ふと視線を感じて顔を向けると、ルーグさんが真面目な顔でわたしを見ていた。あ、わたしの目的がバレちゃったかも。ナハハ。
この人も洞察力が高いからやり難いわよね。人生経験も上だから隠すことも大変だわ。
まあ、バレたところでわたしのやりたいことを止めるつもりはないわ。もっと人を学ばないといけないわね。自分の目的を果たすために、ね。
……女の人なんだ……。
この時代はまだ男社会。女性が職人になることは少ない。そんな時代で料理人になれるって凄いことじゃない?
「わたしの幼なじみでマリーレと言います」
「マ、マリーレよ。よろしくね」
連れて来られて紹介されたのが遥か下のわたしじゃ戸惑うのも当然よね。
「冒険者見習いのキャロルです。来てくださりありがとうございます」
「ず、随分と礼儀正しい子ね」
「コンミンド伯爵領では伯爵令嬢のお友達をしていたようです」
ルーグさんにはわたしのこと伝わってなかったの? まあ、わたしの情報なんて知っても出世には関係ないか。
「お友達係か。平民でなるなんて凄いね。大抵は男爵令嬢がなるものなのに」
お嬢様に問題がーとは言えないので黙っておく。
「マリーレさんは、お城に上がって長いんですか? 女性で料理人なるの大変だったのでは?」
「ま、まあ、そうだね。わたしの場合は運がよかっただけさ。坊ちゃんが食合わせが悪いお方でね。パンが食べれなかったんだよ。わたしがパコレの粉で作ったパンを食べられて気に入られたのよ」
パコレとはトウモロコシで、粒を乾燥させて挽いたもので作るナンみたいなものみたい。
「アレルギーですか。そんなものがあるんですね」
異世界でもアレルギーがあるんだ。あれは現代病かと思っていたわ。
「アレルギー、ですか?」
「食合わせが悪いみたいな感じの言葉です。パンや卵で泡を吹いたり肌に赤い点が出たり、埃でくしゃみするとかもそうですね。体の免疫が働かなかったとか狂ったりするみたいですよ」
体は悪かったけど、アレルギーはなかったからよく知らないのよね。
「詳しいのですね」
「まったく詳しくはないですよ。そういうのがあるって知っているだけです。治し方も知らないですしね」
このファンタジーワールドなら治す方法もあるかもしれないわね。
「回復魔法とかあったりします?」
「ありますよ。ただ、強力な技は教会が独占していますが」
「擦り傷程度を治すのなら?」
「……唾でもつけて勝手に治りますが、魔法医に行けば治してくれるかもしれませんね。ただ、銀貨一枚は取られると思います」
なかなか高額治療費を求められるのね。考えてみればお医者さんとか見たことがないわね。さすがに薬師はいるような話は聞いたことあるけど。
「回復魔法でアレルギー──食合わせは治せなかったんですか?」
「逆に治せるものなの?」
「やり方次第じゃないですか? 食合わせが悪いってことは体が正常じゃないってことですよね? 免疫力を高めて……」
あ、そっか。わたしの付与魔法で何とか出来るか。
「回復魔法、わたしでも受けることは出来ますかね?」
「必要ならバイバナル商会が出します。クルス様からキャロルさんのことには金に糸目をつけるなと命令されてますから」
いや、付けなくちゃダメでしょう。どんだけわたしに掛けようとしてんのよ?
「そ、そうですか。なるべくお金を使わせないよう心掛けます」
さすがにわたしのせいで商会が傾いたとかなったら嫌だからね。
「キャロルさんは大丈夫でしょう。短い間ですが、キャロルさんは自制が取れてますから」
「集中すると我を忘れるけどね」
そこ! うるさいよ! 黙ってなさい!
「ま、まあ、回復魔法は後にして、まずはマリーレさんにお城で作っているものを教えてください。わたしもお城で教えてもらった料理を教えますんで。ここにある食材で足りますか?」
あ、食材を揃えてもらうのにお金を使わせちゃったわね。ごめんなさい。わたしの報酬から引いてください。
「充分だよ。てか、どんだけ集めたんだい? わたし、今日しか休みもらえなかったんだよ?」
「五品も作ってもらえたらあとはこちらでアレンジ、工夫してみます」
「そ、そうかい。手の込んだものじゃないのになるけど、いいの?」
「構いません」
本当に知りたいのはこの世界の食材だ。それを知る前にマリーレさんと仲良くなっておく必要がある。料理人なら料理で仲良くなりましょう。
カルブラ伯爵領で採れた食材の他に、カルブラ伯爵領で用意出来る調味料。これをどう使うかを見て、細かくメモしていった。
あ、これか。わたしが求めていたものは。ゼラチンに変わるものがないかてな探していたけど、コンミンドでは発見出来なかったのよね。やはり大きな町にはあったわ。
わたしが思う以上にこの世界は食材が豊富だ。ただ、地方には回って来ないだけで、他にはあると踏んでたのよね。
これがあればホイップクリームが作れてフルーツサンドが作れるわ。入院中、ずっと食べたいと思ってたのよね。
ふと視線を感じて顔を向けると、ルーグさんが真面目な顔でわたしを見ていた。あ、わたしの目的がバレちゃったかも。ナハハ。
この人も洞察力が高いからやり難いわよね。人生経験も上だから隠すことも大変だわ。
まあ、バレたところでわたしのやりたいことを止めるつもりはないわ。もっと人を学ばないといけないわね。自分の目的を果たすために、ね。