「パン屋って、町に散らばっているイメージだったけど、ここは密集してるのね」
ざっと六軒くらい集まっているんじゃないかしら? こんなに密集したら競争が大変じゃない?
「これだけ集まると匂いも凄いわね」
工場とかきっとこんな匂いがするんでしょうね。慣れてないと気持ち悪くなりそうだわ。
「店ないね?」
「そうね。ここは作るだけなのかしら?」
この匂いから焼いているのは間違いないんだろうけど、売るための店がないわ。
「あ、すみません。パンを売っている場所はどこでしょうか?」
ちょうど歩いていたおばちゃんに尋ねた。
「パンならシャンゼ通りに行けば売ってるよ」
そのシャンゼ通りの場所を聞いて行ってみると、ここもパン屋が何軒か集まっていた。何でや?
そうなる歴史があったんでしょうが、わたしにはまったく思い付かないわ。なので考えるのを放棄して、近くのパン屋に入ってみた。
そう言えば、パン屋に入るのってこれが初めてだわ。
店内はカウンターがあり、その奥に棚があってそこにバゲットみたいなパンが置かれていた。
……種類はそれだけなんだ……。
パン文化のところなのにパンの種類ってそうはないのよね。もちろん、わたしが知らないだけで豊富なのかもしれないけどね。
「パンを十個ください」
「あいよ。十個なら銅貨三枚と小銅貨五枚ね」
つまり、三十センチのパンが三個で銅貨一枚ってことか。これは……安いのか?
「カルブラではこんなに安いんですか?」
安いと思っておばちゃんに尋ねてみた。
「安いかい? ずっとこの値段だよ。まあ、高いパンもあるけど、それは別の店で売ってるよ」
つまりここは庶民向けのパン屋ってことか。
「じゃあ、十五個にしてください。小銅貨、そんなに持ってないんで」
そもそも買い物のほとんどはバイバナル商会で、これまでの報酬から引いてもらってたから細かなお金って持ってないのよね。小銅貨にするまで細かな設定にしないみたいだしね。
「まあ、うちとしても助かるよ。そう細かく買って行くヤツなんていないからね」
でしょうね。そんな細かな計算誰も望まないし。
十五個のパンはとりあえずティナのリュックサックに入れておく。ここで魔法の鞄を使うわけにはいかないからね。
店を出たら他のパン屋にも入ってみると、この店は丸パンが売っていた。
この時代の丸パンは小麦粉に塩とバター、そして、エールを混ぜて焼いたものだ。
イースト菌がないのかと思ったらエールを使って膨らませていたみたい。ただ、質はそこまでよくないみたいよ。
「銅貨一枚で何個買えます?」
「五個だよ」
丸パンもよく食べられるパンで、夕食によく出る感じかな? 実家は丸パン派だったわ。
「じゃあ、三十個ください」
銅貨六枚を払い、これもティナのリュックサックに入れた。
今日はこんなものかしらね。あまり大量に買っても不思議がられる。どんなものか試食してみたいしね。
店を出たらメモ帳を出して店の名前、パンの値段、買った個数を書いておく。
「そんなこと書いてどうするの?」
さっき散々食べたのにいつの間にかリュックサックからパンを出して食べている一人と一匹。もう消化したのか?
「ちょっとした情報収集よ。物の値段を知っておけば騙されたりしないからね」
物の値段を知らないってことが騙される原因でもある。大体の値段を知っていれば安いよと言われたって騙されないわ。
「ふ~ん」
まるで興味なしのティナ。まあ、買い物担当はわたしだしね。ティナに行かせるときはバイバナル商会に買いに行かせるときだけだ。
「まだパンを買うの?」
「買うわよ。サンドイッチ用のパンが欲しいからね」
さすがに食パンは売って……たわ。マジか!?
「この店、バイバナル商会の流れじゃない? リープバナルって名前だし」
そう言えば、バナルってつけばバイバナル商会の流れだからとレンラさんが言ってたっけ。コンミンド伯爵領にないから忘れてたわ。
ちなみに民宿は、バイバナル商会がやっているからバイバナル商会の民宿って呼ばれているわ。
「てか、バイバナル商会もパン屋をやってたのね」
バイバナル商会は総合商会で、結構いろんなことやっている。輸送にも力を入れていて、隊商をいくつか持っているそうよ。
店の中に入ると、食パンや葡萄パン、チーズパンなんかが売っていた。
「もう他領でも作っているのね」
レンラさんから話は聞いていたけど、こうして見ると、バイバナル商会って凄い商会だと思い知らされるわ。
「食パンは半一斤で銅貨五枚なんだ」
なかなか高価なパンにしてるじゃないの。買う人いるの?
と思ったけど、店員さんに尋ねたら結構いるとのことだった。ジャムをつけたり焼いたりするのが流行っているみたいよ。
「食を楽しむ人が出てきたのね」
食べることは生きること。まず食べることが優先で、楽しむ余裕がないって時代なんだよね。お金持ちは別だけど。
「カツサンド食べたくなった」
「わたしも」
あんたらどんだけ食べんのよ!
「ハイハイ。じゃあ、お肉を買って帰りましょうか」
うちのエンゲル係数飛んでもないわね。
ざっと六軒くらい集まっているんじゃないかしら? こんなに密集したら競争が大変じゃない?
「これだけ集まると匂いも凄いわね」
工場とかきっとこんな匂いがするんでしょうね。慣れてないと気持ち悪くなりそうだわ。
「店ないね?」
「そうね。ここは作るだけなのかしら?」
この匂いから焼いているのは間違いないんだろうけど、売るための店がないわ。
「あ、すみません。パンを売っている場所はどこでしょうか?」
ちょうど歩いていたおばちゃんに尋ねた。
「パンならシャンゼ通りに行けば売ってるよ」
そのシャンゼ通りの場所を聞いて行ってみると、ここもパン屋が何軒か集まっていた。何でや?
そうなる歴史があったんでしょうが、わたしにはまったく思い付かないわ。なので考えるのを放棄して、近くのパン屋に入ってみた。
そう言えば、パン屋に入るのってこれが初めてだわ。
店内はカウンターがあり、その奥に棚があってそこにバゲットみたいなパンが置かれていた。
……種類はそれだけなんだ……。
パン文化のところなのにパンの種類ってそうはないのよね。もちろん、わたしが知らないだけで豊富なのかもしれないけどね。
「パンを十個ください」
「あいよ。十個なら銅貨三枚と小銅貨五枚ね」
つまり、三十センチのパンが三個で銅貨一枚ってことか。これは……安いのか?
「カルブラではこんなに安いんですか?」
安いと思っておばちゃんに尋ねてみた。
「安いかい? ずっとこの値段だよ。まあ、高いパンもあるけど、それは別の店で売ってるよ」
つまりここは庶民向けのパン屋ってことか。
「じゃあ、十五個にしてください。小銅貨、そんなに持ってないんで」
そもそも買い物のほとんどはバイバナル商会で、これまでの報酬から引いてもらってたから細かなお金って持ってないのよね。小銅貨にするまで細かな設定にしないみたいだしね。
「まあ、うちとしても助かるよ。そう細かく買って行くヤツなんていないからね」
でしょうね。そんな細かな計算誰も望まないし。
十五個のパンはとりあえずティナのリュックサックに入れておく。ここで魔法の鞄を使うわけにはいかないからね。
店を出たら他のパン屋にも入ってみると、この店は丸パンが売っていた。
この時代の丸パンは小麦粉に塩とバター、そして、エールを混ぜて焼いたものだ。
イースト菌がないのかと思ったらエールを使って膨らませていたみたい。ただ、質はそこまでよくないみたいよ。
「銅貨一枚で何個買えます?」
「五個だよ」
丸パンもよく食べられるパンで、夕食によく出る感じかな? 実家は丸パン派だったわ。
「じゃあ、三十個ください」
銅貨六枚を払い、これもティナのリュックサックに入れた。
今日はこんなものかしらね。あまり大量に買っても不思議がられる。どんなものか試食してみたいしね。
店を出たらメモ帳を出して店の名前、パンの値段、買った個数を書いておく。
「そんなこと書いてどうするの?」
さっき散々食べたのにいつの間にかリュックサックからパンを出して食べている一人と一匹。もう消化したのか?
「ちょっとした情報収集よ。物の値段を知っておけば騙されたりしないからね」
物の値段を知らないってことが騙される原因でもある。大体の値段を知っていれば安いよと言われたって騙されないわ。
「ふ~ん」
まるで興味なしのティナ。まあ、買い物担当はわたしだしね。ティナに行かせるときはバイバナル商会に買いに行かせるときだけだ。
「まだパンを買うの?」
「買うわよ。サンドイッチ用のパンが欲しいからね」
さすがに食パンは売って……たわ。マジか!?
「この店、バイバナル商会の流れじゃない? リープバナルって名前だし」
そう言えば、バナルってつけばバイバナル商会の流れだからとレンラさんが言ってたっけ。コンミンド伯爵領にないから忘れてたわ。
ちなみに民宿は、バイバナル商会がやっているからバイバナル商会の民宿って呼ばれているわ。
「てか、バイバナル商会もパン屋をやってたのね」
バイバナル商会は総合商会で、結構いろんなことやっている。輸送にも力を入れていて、隊商をいくつか持っているそうよ。
店の中に入ると、食パンや葡萄パン、チーズパンなんかが売っていた。
「もう他領でも作っているのね」
レンラさんから話は聞いていたけど、こうして見ると、バイバナル商会って凄い商会だと思い知らされるわ。
「食パンは半一斤で銅貨五枚なんだ」
なかなか高価なパンにしてるじゃないの。買う人いるの?
と思ったけど、店員さんに尋ねたら結構いるとのことだった。ジャムをつけたり焼いたりするのが流行っているみたいよ。
「食を楽しむ人が出てきたのね」
食べることは生きること。まず食べることが優先で、楽しむ余裕がないって時代なんだよね。お金持ちは別だけど。
「カツサンド食べたくなった」
「わたしも」
あんたらどんだけ食べんのよ!
「ハイハイ。じゃあ、お肉を買って帰りましょうか」
うちのエンゲル係数飛んでもないわね。