昨日から降り続いた雪は、朝になったら二十センチくらい積もっていた。
「例年にない大雪ですね」
長く生きたレンラさんでもこんなに降ったのは数十年振りらしいわ。
こうなると家を造る職人さんたちも休むしかない。なら、前世で乗ってみたかったものを作ってもらうことにした。
「何だいこりゃ?」
職人さんが十五人もいると作るのも早い。午前中には二台も作っちゃったよ。
まあ、木で作ったものだから強度は不安があるけど、そこはわたしの付与魔法。全体的に強化をさせ、力が掛かるところにはさらに強化させた。
「スノーバイクってものです」
たぶん、そんな感じの名前だったと思う。間違ってたらごめんなさい。
本当はスキー板を作りたかったけど、やったこともないわたしに出来るとは思えない。でも、スノーバイクなら乗れると思うのよね。
橇の底に蝋を厚く塗り、薄い金属板を端に貼り付けた。
エッジが効くように研ぎ、平地で試運転(?)。あまり滑りがいいものではなかったけど、斜面が急なら問題ないでしょう。ここ、山だしね。
「ティナ。やってみて」
「ボク?」
関心がなかったティナがびっくりしている。
「運動神経はティナが勝っているからね。スノーバイクが使えるか試してみて」
乗り方を教えて滑ってもらった。
まずは平地で蹴りながら乗ってもらい、勘をつかんでもらったら坂で滑ってもらった。
「おー。思ったより滑るじゃない」
雪が固まってないからそこまで速度は出てないけど、まずまず滑れている。あれなら麓まで行けそうね。
「また変なものを作りましたね」
また、とは語弊がある言い方は止めて欲しい。わたし、またと言うほど変なものは……作っていますね。この世界の人からしたら……。
「そうですね。思い付いたものを形にしたら予想以上のものが出来ました」
今さら否定しても仕方がない。素直に肯定しておきましょう。
「雪が降る地方では橇の馬車があるみたいなんで、それから考えてみました」
「それならわたしも知っています。ここでは雪が降らないので使っていませんが」
「じゃあ、お客さん、帰るの大変ですね」
この雪だってのにお客さんが泊まりに来ている。ほんと、物好きよね。って、わたしが言うことじゃないけどさ。
「ちょっと村に降りて来ますね。下がどうなっているか気になりますので」
用意をしてスノーバイクで坂を下った。
わたしはティナほど運動神経はないけど、わたしもそこまで運動音痴って訳じゃない。この大自然で育った肉体を舐めるではない。半分も滑れば慣れてきたわ。
三時間は掛かる道のりを一時間くらいで走破し、麓に降りられた。
「麓もそこそこそ降ったわね」
十センチくらいか? まあ、そこまで支障がある積雪ではないわね。
スノーバイクはアイテムバッグ化させた袋に入れた。
道を歩いていると、バイバナル商会の二頭立ての馬車がやって来るのが見えた。
「二頭立てなんて珍しいね」
いつもは一頭で引っ張っている馬車なのに。
「雪だからじゃない?」
なるほど。二馬力なら雪でも登れると思ったのか。
馴染みの御者さんなので手を振った。
「お嬢ちゃんたちか。この雪でよく降りて来たな」
「橇で降りて来ました。山はこの倍なので気を付けてくださいね」
「それは結構降ったな。皆は大丈夫か?」
「大丈夫ですよ。さすがに職人さんは仕事にならないので休みにはなりましたが」
未だ雪は降っているから明日も休みでしょうよ。
「今からだと泊まりになるでしょうから、うちを使ってください」
今は午後の二時か三時くらい。登ったら暗くなっているでしょうよ。
「ありがたく使わせてもらうよ」
気を付けてと見送り、わたしたちは明るいうちに実家に着けた。
「大混雑ね」
この雪だってのに、お客さんでいっぱいだ。やることがないからやって来たのかな?
これだけの人が集まると雪も解けちゃうものなのね。まあ、下はベチョベチョになっているけど。
「お母ちゃん、ただいま。凄く混んでるね」
「ああ。この雪で仕事にもならないからね。朝から大賑わいだよ。手伝っておくれ」
山から下りて来た娘に酷い母親だよ。まあ、そんなに疲れてないから手伝うんだけどね。
夜になっても人は減らず、八時くらいになんとか捌けて冒険者たちが残った。
「人、まだ雇ってないの?」
片付けが終わり、遅めの夕食を食べながら尋ねた。
「いや、雇ってはいるよ。今日は雪だから忙しかっただけさ。いつもは順調に回せているよ」
「ええ。まさか雪の影響で混むとは思いませんでした」
マイゼンさんもびっくりなようだ。
「食料は大丈夫なんですか?」
「今のところは大丈夫ですね。ウールを増やしているので肉だけはたくさんありますよ」
「ウール、寒さで死んだりしないんですね」
自然で生きていたものを家畜にした。弱ったりしないのかしら?
「固まって暖を取っていますし、お湯の排水を利用するこで寒くはなっていないです」
鉄管はないけど、木枠を通してお湯を汚水的なところに流している。付与魔法で浄化が出来ないか試してみよう。
「お風呂に入るようになってから病気になった人とか増えてますか?」
「病気、ですか? まあ、季節の変わり目に風邪を引いている人はいるのではありませんか?」
「綺麗好きになった人が増えたってことか。妊婦さんとかの様子や赤ん坊の様子とか見ててください」
「なぜです?」
「情報を集めるためです。これだけ人が集まるなら傾向を調べておくほうがいいですよ。商人さんもなにが売れているか調べているでしょう。それを広げて調べておくんです。今は役に立たなくても将来役に立つかもしれませんからね」
データの蓄積は、必ず武器となる。って、本で読んだわ。
「例年にない大雪ですね」
長く生きたレンラさんでもこんなに降ったのは数十年振りらしいわ。
こうなると家を造る職人さんたちも休むしかない。なら、前世で乗ってみたかったものを作ってもらうことにした。
「何だいこりゃ?」
職人さんが十五人もいると作るのも早い。午前中には二台も作っちゃったよ。
まあ、木で作ったものだから強度は不安があるけど、そこはわたしの付与魔法。全体的に強化をさせ、力が掛かるところにはさらに強化させた。
「スノーバイクってものです」
たぶん、そんな感じの名前だったと思う。間違ってたらごめんなさい。
本当はスキー板を作りたかったけど、やったこともないわたしに出来るとは思えない。でも、スノーバイクなら乗れると思うのよね。
橇の底に蝋を厚く塗り、薄い金属板を端に貼り付けた。
エッジが効くように研ぎ、平地で試運転(?)。あまり滑りがいいものではなかったけど、斜面が急なら問題ないでしょう。ここ、山だしね。
「ティナ。やってみて」
「ボク?」
関心がなかったティナがびっくりしている。
「運動神経はティナが勝っているからね。スノーバイクが使えるか試してみて」
乗り方を教えて滑ってもらった。
まずは平地で蹴りながら乗ってもらい、勘をつかんでもらったら坂で滑ってもらった。
「おー。思ったより滑るじゃない」
雪が固まってないからそこまで速度は出てないけど、まずまず滑れている。あれなら麓まで行けそうね。
「また変なものを作りましたね」
また、とは語弊がある言い方は止めて欲しい。わたし、またと言うほど変なものは……作っていますね。この世界の人からしたら……。
「そうですね。思い付いたものを形にしたら予想以上のものが出来ました」
今さら否定しても仕方がない。素直に肯定しておきましょう。
「雪が降る地方では橇の馬車があるみたいなんで、それから考えてみました」
「それならわたしも知っています。ここでは雪が降らないので使っていませんが」
「じゃあ、お客さん、帰るの大変ですね」
この雪だってのにお客さんが泊まりに来ている。ほんと、物好きよね。って、わたしが言うことじゃないけどさ。
「ちょっと村に降りて来ますね。下がどうなっているか気になりますので」
用意をしてスノーバイクで坂を下った。
わたしはティナほど運動神経はないけど、わたしもそこまで運動音痴って訳じゃない。この大自然で育った肉体を舐めるではない。半分も滑れば慣れてきたわ。
三時間は掛かる道のりを一時間くらいで走破し、麓に降りられた。
「麓もそこそこそ降ったわね」
十センチくらいか? まあ、そこまで支障がある積雪ではないわね。
スノーバイクはアイテムバッグ化させた袋に入れた。
道を歩いていると、バイバナル商会の二頭立ての馬車がやって来るのが見えた。
「二頭立てなんて珍しいね」
いつもは一頭で引っ張っている馬車なのに。
「雪だからじゃない?」
なるほど。二馬力なら雪でも登れると思ったのか。
馴染みの御者さんなので手を振った。
「お嬢ちゃんたちか。この雪でよく降りて来たな」
「橇で降りて来ました。山はこの倍なので気を付けてくださいね」
「それは結構降ったな。皆は大丈夫か?」
「大丈夫ですよ。さすがに職人さんは仕事にならないので休みにはなりましたが」
未だ雪は降っているから明日も休みでしょうよ。
「今からだと泊まりになるでしょうから、うちを使ってください」
今は午後の二時か三時くらい。登ったら暗くなっているでしょうよ。
「ありがたく使わせてもらうよ」
気を付けてと見送り、わたしたちは明るいうちに実家に着けた。
「大混雑ね」
この雪だってのに、お客さんでいっぱいだ。やることがないからやって来たのかな?
これだけの人が集まると雪も解けちゃうものなのね。まあ、下はベチョベチョになっているけど。
「お母ちゃん、ただいま。凄く混んでるね」
「ああ。この雪で仕事にもならないからね。朝から大賑わいだよ。手伝っておくれ」
山から下りて来た娘に酷い母親だよ。まあ、そんなに疲れてないから手伝うんだけどね。
夜になっても人は減らず、八時くらいになんとか捌けて冒険者たちが残った。
「人、まだ雇ってないの?」
片付けが終わり、遅めの夕食を食べながら尋ねた。
「いや、雇ってはいるよ。今日は雪だから忙しかっただけさ。いつもは順調に回せているよ」
「ええ。まさか雪の影響で混むとは思いませんでした」
マイゼンさんもびっくりなようだ。
「食料は大丈夫なんですか?」
「今のところは大丈夫ですね。ウールを増やしているので肉だけはたくさんありますよ」
「ウール、寒さで死んだりしないんですね」
自然で生きていたものを家畜にした。弱ったりしないのかしら?
「固まって暖を取っていますし、お湯の排水を利用するこで寒くはなっていないです」
鉄管はないけど、木枠を通してお湯を汚水的なところに流している。付与魔法で浄化が出来ないか試してみよう。
「お風呂に入るようになってから病気になった人とか増えてますか?」
「病気、ですか? まあ、季節の変わり目に風邪を引いている人はいるのではありませんか?」
「綺麗好きになった人が増えたってことか。妊婦さんとかの様子や赤ん坊の様子とか見ててください」
「なぜです?」
「情報を集めるためです。これだけ人が集まるなら傾向を調べておくほうがいいですよ。商人さんもなにが売れているか調べているでしょう。それを広げて調べておくんです。今は役に立たなくても将来役に立つかもしれませんからね」
データの蓄積は、必ず武器となる。って、本で読んだわ。