お兄さんたちは銀星クラスの冒険者で、サナリクスってパーティー名だそうだ。
リーダーがリュードさんで、銀星三連(五個が上位で一個が下位)。二十三歳ながらいくつもの依頼を達成しているんだって。
サブリーダーがルイックさん。リュードさんの幼馴染みで剣が得意で同じく銀星三連。アタッカーみたい。
魔法使いのアルセクスさんは一番の年上で三十六歳。王都出身で高名な魔法使いの弟子だったそうだ。
唯一の女性たるナルティアさんはリュードさんの妹。二十歳みたいだけど、まだ十七歳くらいに見えるくらい童顔な人だ。弓が得意で遠距離担当なんだってさ。
そして、エルフのアルジムさん。まだ三十歳(エルフの寿命は人間の倍だって)。人間で言えば十五歳くらい。でも、知識は豊富で、好奇心が強いあまりに冒険者になった変わり者みたいよ。
わたしたちも自己紹介と生い立ちを聞かせた。
過去は問わないのが礼儀だ、とか裏稼業みたいなことはなく、お互いのことを話すことが信頼してもらう慣習があるそうだ。
個人情報が……って思うのは元の世界の常識に捕らわれているかしら? そんな大事な情報を言ってもいいの?
「自分たちの生い立ちをしゃべるのは信頼して欲しい者にだけだ。誰構わずしゃべるわけじゃない。よく人を見てからやることだ」
あ、そうだよね。世間知らずのわたしでもそれはどうなんだと思ったもん。
「なぜわたしたちに言ったんです?」
わたしたちはまだ十歳と十一歳だ。見習い冒険者でしかないわたしたちを信頼しすぎじゃない?
「見習いとは思えないくらい度胸はあるし、対応も早かった。技術もある。こうして野営出来る場所を作る知識もある。なにより、妖精猫を連れている者と敵対はしたくない」
高位冒険者ともなると判断が早いのね。いや、あの短い時間でこちらを考察するとか頭の回転が早すぎるでしょう。この人、絶対さらに出世するでしょうよ。
「……買い被りだと思いますよ……」
「十歳の子がおれたちの言葉を理解して、買い被りなんてこと言えるだけで普通じゃない。そっちのお嬢ちゃんもあそこまで気配を殺せるんだからな」
気配を殺せるんだ、ティナったら。気配を感じることも出来ないわたしには殺しているかさえもわからないけどさ……。
「うーんまあ、わたしたちにどんな価値があるか知りませんが、わたしたちとしても高位冒険者さんたちと繋がりが持てるならありがたいです。わたしたち、冒険者のこと何も知りませんから」
もちろん、ただでいい思いをしようとは思わないわよ。それに見合うものを渡すわ。じゃないと、いい関係にはならないからね。
「この食事の礼はさせてもらうさ。薪集めだけじゃなく、食料も提供させてもらうよ。猪でいいか?」
「はい。最近、猪を見なくて困っていたんですよね」
ちょっと前までならよく見かけていたのに、最近全然見ないのよね。何か危険なものでもいるのかしら?
「それは恐らく轟竜のせいだな」
「轟竜? まだこの辺にいたんですか?」
見ないからどこかに移ったんだと思っていたわ。
「轟竜を見たのか?」
「いえ、一年前くらい前に今住んでいるところに現れたんです。十匹以上はいたみたいですよ」
「一年前か。よく被害が出なかったものだ」
「ティナの父親がもしかすると轟竜に襲われたかもしれません。山に入って帰ってこなかったみたいですから」
「そうか。恐らくそうなんだろう。轟竜は集団で獲物を襲う。人間も食うヤツらだからな」
「ただ、人間を襲うのは最終手段だ。轟竜が好むのは猪だからな」
だから猪を見ないのか。迷惑な魔物ね。
ちなみに魔物は魔石を持っているものの総称だそうよ。それ以外は獣に分類されるらしいわ。
「討伐依頼とか出ているんですか?」
「出ている。轟竜は皮から内臓まで有効利用されるからな。そのせいで乱獲されて、今では見つけるのも困難さ。ヤツらも自分らが狩られる存在だと理解しているっぽい」
まあ、仲間が狩られているところを見れば嫌でも学びもするでしょうよ。強いのに狩られる立場ってのも哀れなものよね。襲われたら反撃するけどさ。
「リュードさんたちは薬草探しでしたっけ?」
「ああ。青実草ってものだ。知っているか?」
青実草? 実なの? 草なの? ファンタジーなものなの?
「知ってる。でも、時期的には少し早い。もう少し涼しくならないと咲かない」
咲かない? 花なの?
「やはりこの地域で咲くものなんだな!」
「食べられるものなの?」
「花だけど、その葉が薬になる。根を煎じて飲めば風邪を引かないってよく飲まされた。ボクは苦くて嫌いだった」
どうやらファンタジーなもののようだ。飲めばすぐ治る回復薬とかあるのかしら?
「どこに生っているかわかるか? もちろん、礼はする」
「どうする?」
と、ティナがわたしを見る。冒険はティナが決めるけど、交渉事はわたしに任されている。ティナ、あまり人と話すの苦手なんで。
「構わないわよ。薬になるならわたしも見てみたいしね」
風邪を引かないものならわたしも飲んでおきたいわ。まあ、産まれてこのかた風邪一つ引いたことのない体ですけど。
リーダーがリュードさんで、銀星三連(五個が上位で一個が下位)。二十三歳ながらいくつもの依頼を達成しているんだって。
サブリーダーがルイックさん。リュードさんの幼馴染みで剣が得意で同じく銀星三連。アタッカーみたい。
魔法使いのアルセクスさんは一番の年上で三十六歳。王都出身で高名な魔法使いの弟子だったそうだ。
唯一の女性たるナルティアさんはリュードさんの妹。二十歳みたいだけど、まだ十七歳くらいに見えるくらい童顔な人だ。弓が得意で遠距離担当なんだってさ。
そして、エルフのアルジムさん。まだ三十歳(エルフの寿命は人間の倍だって)。人間で言えば十五歳くらい。でも、知識は豊富で、好奇心が強いあまりに冒険者になった変わり者みたいよ。
わたしたちも自己紹介と生い立ちを聞かせた。
過去は問わないのが礼儀だ、とか裏稼業みたいなことはなく、お互いのことを話すことが信頼してもらう慣習があるそうだ。
個人情報が……って思うのは元の世界の常識に捕らわれているかしら? そんな大事な情報を言ってもいいの?
「自分たちの生い立ちをしゃべるのは信頼して欲しい者にだけだ。誰構わずしゃべるわけじゃない。よく人を見てからやることだ」
あ、そうだよね。世間知らずのわたしでもそれはどうなんだと思ったもん。
「なぜわたしたちに言ったんです?」
わたしたちはまだ十歳と十一歳だ。見習い冒険者でしかないわたしたちを信頼しすぎじゃない?
「見習いとは思えないくらい度胸はあるし、対応も早かった。技術もある。こうして野営出来る場所を作る知識もある。なにより、妖精猫を連れている者と敵対はしたくない」
高位冒険者ともなると判断が早いのね。いや、あの短い時間でこちらを考察するとか頭の回転が早すぎるでしょう。この人、絶対さらに出世するでしょうよ。
「……買い被りだと思いますよ……」
「十歳の子がおれたちの言葉を理解して、買い被りなんてこと言えるだけで普通じゃない。そっちのお嬢ちゃんもあそこまで気配を殺せるんだからな」
気配を殺せるんだ、ティナったら。気配を感じることも出来ないわたしには殺しているかさえもわからないけどさ……。
「うーんまあ、わたしたちにどんな価値があるか知りませんが、わたしたちとしても高位冒険者さんたちと繋がりが持てるならありがたいです。わたしたち、冒険者のこと何も知りませんから」
もちろん、ただでいい思いをしようとは思わないわよ。それに見合うものを渡すわ。じゃないと、いい関係にはならないからね。
「この食事の礼はさせてもらうさ。薪集めだけじゃなく、食料も提供させてもらうよ。猪でいいか?」
「はい。最近、猪を見なくて困っていたんですよね」
ちょっと前までならよく見かけていたのに、最近全然見ないのよね。何か危険なものでもいるのかしら?
「それは恐らく轟竜のせいだな」
「轟竜? まだこの辺にいたんですか?」
見ないからどこかに移ったんだと思っていたわ。
「轟竜を見たのか?」
「いえ、一年前くらい前に今住んでいるところに現れたんです。十匹以上はいたみたいですよ」
「一年前か。よく被害が出なかったものだ」
「ティナの父親がもしかすると轟竜に襲われたかもしれません。山に入って帰ってこなかったみたいですから」
「そうか。恐らくそうなんだろう。轟竜は集団で獲物を襲う。人間も食うヤツらだからな」
「ただ、人間を襲うのは最終手段だ。轟竜が好むのは猪だからな」
だから猪を見ないのか。迷惑な魔物ね。
ちなみに魔物は魔石を持っているものの総称だそうよ。それ以外は獣に分類されるらしいわ。
「討伐依頼とか出ているんですか?」
「出ている。轟竜は皮から内臓まで有効利用されるからな。そのせいで乱獲されて、今では見つけるのも困難さ。ヤツらも自分らが狩られる存在だと理解しているっぽい」
まあ、仲間が狩られているところを見れば嫌でも学びもするでしょうよ。強いのに狩られる立場ってのも哀れなものよね。襲われたら反撃するけどさ。
「リュードさんたちは薬草探しでしたっけ?」
「ああ。青実草ってものだ。知っているか?」
青実草? 実なの? 草なの? ファンタジーなものなの?
「知ってる。でも、時期的には少し早い。もう少し涼しくならないと咲かない」
咲かない? 花なの?
「やはりこの地域で咲くものなんだな!」
「食べられるものなの?」
「花だけど、その葉が薬になる。根を煎じて飲めば風邪を引かないってよく飲まされた。ボクは苦くて嫌いだった」
どうやらファンタジーなもののようだ。飲めばすぐ治る回復薬とかあるのかしら?
「どこに生っているかわかるか? もちろん、礼はする」
「どうする?」
と、ティナがわたしを見る。冒険はティナが決めるけど、交渉事はわたしに任されている。ティナ、あまり人と話すの苦手なんで。
「構わないわよ。薬になるならわたしも見てみたいしね」
風邪を引かないものならわたしも飲んでおきたいわ。まあ、産まれてこのかた風邪一つ引いたことのない体ですけど。