もう行き付けとなったバイバナル商会。やって来たら久しぶりにローダルさんに遭遇した。
「おはようございます。久しぶりです」
「ああ、久しぶり。山に住むんだって?」
もう聞いたのか。耳が早いこと。
「もう住んでます。今日は足りないものを買いに来ました」
「相変わらず行動力の塊みたいな子だ。その歳で不自由な山に住むなんてなかなか出来ないものだぞ」
「家はありますからね、そう不自由でもありませんよ。山の幸も多そうだし、こうして足りないものを買いに来れますしね」
電気ガス水道がないならどこでも同じよ。それなら自分たちで好きにやれる場所のほうがいいわ。魔法を隠すこともないんだしね。
「前向きだな。そんなにいいところなら見てみたいものだ」
「馬車を出してくれるなら招待しますよ。余った部屋を客室にしようと思ってましたから」
ティナの両親の寝室とおばあちゃんやの部屋を客室にしようかと話し合っていたのよね。保養宿屋が落ち着けばお母ちゃんやお父ちゃんを呼ぼうとも放ったたし。
「そうか。じゃあ、行ってみるか。お嬢ちゃんのやることはおもしろいからな」
「何でもかんでも商売に繋がるようなことはしませんよ」
「それを商売に繋げるのが商人ってものさ。で、何を買うんだ?」
ほんと、行動力の塊はどっちかしらね? 予定とかないのかしら?
ハァーとため息を吐いて、欲しい物リストを語った。
「修業じゃなく移住だな」
聞いたローダルさんのごもっともな感想に苦笑いしか出ない。わたしもそう思っちゃってるんだからね。
「ま、まあ、よく学びよく食べてよい暮らしがわたしの目指すところですからね。妥協は出来ません」
「おもしろいことを言うな。でもまあ、そんな人生もいいものだ」
わかってもらえてなによりです。
レンラさんが来たので欲しいものを用意してもらい、ローダルさんの馬車に積んでもらった。
「今度、わたしもお邪魔させていただきますよ」
「おもしろいことなんてありませんよ。山なんですから」
「キャロルさんのやることがおもしろいのですよ。やることすべてわたしたちが考え付かないようなことをする。商売も同じです。学ばせてもらいたいのですよ」
わたしのような小娘から何を学ぼうってのかしらね?
「わかりました。来たときは歓迎しますよ」
何かとお世話になっている人。来たいと言うなら歓迎させてもらうわ。
ローダルさんの馬車に乗り、実家に向かった。
山羊、どうしようかと考えていたら、ルルが密かに運んでくれ、山の家で待っているとのことだった。
……この展開、読んでたのかしら……?
なかなか謎の多い妖精猫。まあ、ルルの秘密が守れ、山羊を連れて帰らなくていいんだからよしとしましょう。
今からだと到着が夜になるけど、道はそう悪くなく、初めて行ったときに草も刈ってある。どうせ夕食を摂って寝るだけ。問題ナッシング~! と出発した。
予想とおり到着は暗くなってからだけど、ルルが気を利かせてくれていたようで、明かりを点けててくれた。
「誰かいるのか?」
「ルルですよ。あの子、賢いからロウソクに火を点けられるんです」
「あー。お嬢様の猫な。不思議な猫だとは思っていたが、そんなことまで出来るんだな」
ルルを知っているようで、ロウソクに火を点けたと言っても疑うことはなかった。お嬢様の猫じゃなかったら気味悪がれて討伐されてたわよ、あんた……。
「ティナとローダルさんは荷物を家に入れてください。わたしは、夕食を作っちゃうんで」
やることを分担してさっさと終らせることにする。
夕食は実家からもらってきたウール肉で唐揚げを作った。道中、マー油タレに浸けていたから中まで味が染みている。ご飯なんて記憶にもないけど、なぜかご飯を食べたいと思ってしまったわ。
「やっぱりお嬢ちゃんといると美味いものが食えるな」
「それなら実家でも食べられるし、お母ちゃんのほうが上手いですよ」
「いや、お嬢ちゃんは何というか、食うと安心するというか力が出るというか説明は出来ないが、とにかくまた食いたくなる味なんだよ」
それて、付与魔法が関係している? いや、まさかね。でも、これも検証してみるか。固有魔法はその人にしか使えない魔法みたいだからな。
「酒が飲みたいところだな」
「さすがにお酒は──」
「あるよ。山葡萄で作ったやつ。飲む?」
そんなのあったの?
「土蔵にある。ボクたちは飲まないから放置していた」
ま、まあ、わたしたち、まだ九歳と十歳だしね。飲みたいとも思わない。放っておいて当然か。
ティナが外に出て行き、しばらくして土瓶? みたいなものを持って来た。
「たぶん、二年くらい寝かしていたもの。酸っぱかったら飲まないでね」
「お酒って酸っぱくなるの?」
「なるものもあるみたい。よくは知らない」
どうなの? と、ローダルさんを見ると、土瓶の蓋を外して臭いを嗅いだ。
「大丈夫っぽいな。どれ?」
そのまま口に含むと、そのままゴクゴクと飲み出した。本当に大丈夫なの?
「美味い! まだあるのか?」
「あと三十個くらいあったと思う」
「是非、売ってくれ!」
「いいよ。ボクたち飲まないし」
まあ、欲しいってんなら売っても構わないか。ティナの言うとおり、わたしたちは飲まないんだしね。でも、料理に使えるかもしれないから一個は残しておくとしましょうかね。
「おはようございます。久しぶりです」
「ああ、久しぶり。山に住むんだって?」
もう聞いたのか。耳が早いこと。
「もう住んでます。今日は足りないものを買いに来ました」
「相変わらず行動力の塊みたいな子だ。その歳で不自由な山に住むなんてなかなか出来ないものだぞ」
「家はありますからね、そう不自由でもありませんよ。山の幸も多そうだし、こうして足りないものを買いに来れますしね」
電気ガス水道がないならどこでも同じよ。それなら自分たちで好きにやれる場所のほうがいいわ。魔法を隠すこともないんだしね。
「前向きだな。そんなにいいところなら見てみたいものだ」
「馬車を出してくれるなら招待しますよ。余った部屋を客室にしようと思ってましたから」
ティナの両親の寝室とおばあちゃんやの部屋を客室にしようかと話し合っていたのよね。保養宿屋が落ち着けばお母ちゃんやお父ちゃんを呼ぼうとも放ったたし。
「そうか。じゃあ、行ってみるか。お嬢ちゃんのやることはおもしろいからな」
「何でもかんでも商売に繋がるようなことはしませんよ」
「それを商売に繋げるのが商人ってものさ。で、何を買うんだ?」
ほんと、行動力の塊はどっちかしらね? 予定とかないのかしら?
ハァーとため息を吐いて、欲しい物リストを語った。
「修業じゃなく移住だな」
聞いたローダルさんのごもっともな感想に苦笑いしか出ない。わたしもそう思っちゃってるんだからね。
「ま、まあ、よく学びよく食べてよい暮らしがわたしの目指すところですからね。妥協は出来ません」
「おもしろいことを言うな。でもまあ、そんな人生もいいものだ」
わかってもらえてなによりです。
レンラさんが来たので欲しいものを用意してもらい、ローダルさんの馬車に積んでもらった。
「今度、わたしもお邪魔させていただきますよ」
「おもしろいことなんてありませんよ。山なんですから」
「キャロルさんのやることがおもしろいのですよ。やることすべてわたしたちが考え付かないようなことをする。商売も同じです。学ばせてもらいたいのですよ」
わたしのような小娘から何を学ぼうってのかしらね?
「わかりました。来たときは歓迎しますよ」
何かとお世話になっている人。来たいと言うなら歓迎させてもらうわ。
ローダルさんの馬車に乗り、実家に向かった。
山羊、どうしようかと考えていたら、ルルが密かに運んでくれ、山の家で待っているとのことだった。
……この展開、読んでたのかしら……?
なかなか謎の多い妖精猫。まあ、ルルの秘密が守れ、山羊を連れて帰らなくていいんだからよしとしましょう。
今からだと到着が夜になるけど、道はそう悪くなく、初めて行ったときに草も刈ってある。どうせ夕食を摂って寝るだけ。問題ナッシング~! と出発した。
予想とおり到着は暗くなってからだけど、ルルが気を利かせてくれていたようで、明かりを点けててくれた。
「誰かいるのか?」
「ルルですよ。あの子、賢いからロウソクに火を点けられるんです」
「あー。お嬢様の猫な。不思議な猫だとは思っていたが、そんなことまで出来るんだな」
ルルを知っているようで、ロウソクに火を点けたと言っても疑うことはなかった。お嬢様の猫じゃなかったら気味悪がれて討伐されてたわよ、あんた……。
「ティナとローダルさんは荷物を家に入れてください。わたしは、夕食を作っちゃうんで」
やることを分担してさっさと終らせることにする。
夕食は実家からもらってきたウール肉で唐揚げを作った。道中、マー油タレに浸けていたから中まで味が染みている。ご飯なんて記憶にもないけど、なぜかご飯を食べたいと思ってしまったわ。
「やっぱりお嬢ちゃんといると美味いものが食えるな」
「それなら実家でも食べられるし、お母ちゃんのほうが上手いですよ」
「いや、お嬢ちゃんは何というか、食うと安心するというか力が出るというか説明は出来ないが、とにかくまた食いたくなる味なんだよ」
それて、付与魔法が関係している? いや、まさかね。でも、これも検証してみるか。固有魔法はその人にしか使えない魔法みたいだからな。
「酒が飲みたいところだな」
「さすがにお酒は──」
「あるよ。山葡萄で作ったやつ。飲む?」
そんなのあったの?
「土蔵にある。ボクたちは飲まないから放置していた」
ま、まあ、わたしたち、まだ九歳と十歳だしね。飲みたいとも思わない。放っておいて当然か。
ティナが外に出て行き、しばらくして土瓶? みたいなものを持って来た。
「たぶん、二年くらい寝かしていたもの。酸っぱかったら飲まないでね」
「お酒って酸っぱくなるの?」
「なるものもあるみたい。よくは知らない」
どうなの? と、ローダルさんを見ると、土瓶の蓋を外して臭いを嗅いだ。
「大丈夫っぽいな。どれ?」
そのまま口に含むと、そのままゴクゴクと飲み出した。本当に大丈夫なの?
「美味い! まだあるのか?」
「あと三十個くらいあったと思う」
「是非、売ってくれ!」
「いいよ。ボクたち飲まないし」
まあ、欲しいってんなら売っても構わないか。ティナの言うとおり、わたしたちは飲まないんだしね。でも、料理に使えるかもしれないから一個は残しておくとしましょうかね。