さあ、採るわよ!
とはならなかった。朝食が終われば市場に連れてってもらうんだったわ。
背負子に藁縄を積み込み、お母ちゃんと市場に出発した。
「お母ちゃん。市場って大きいの?」
「まあ、そうだね。周辺の村から集まって来るから大きいと思うよ」
周辺の村? どう言うこと?
「ここは、七つの村が集まるところでね、コンミンド伯爵様が治める地なんだよ」
コンミンド伯爵領? 王制なところってこと?
「本当は町として治めるべきなんだろうけど、村単位で治めるほうが楽ってんで、七つに分けているみたいだよ」
なかなか変わった治め方をしていること。漫画や小説でも出てこなかったわ。
市場は伯爵様が直接治めるロンドカ村にあり、うちからは歩いて一時間ほどかかった。
……ざっと十キロってところかしら。十歳の体でも歩けるものなのね……。
ロンドカ村に入る前に革袋に入れた水を飲んで一休みする。てか、村の外に出た意識もなく着いちゃったわね。
家と家の間が空いており、畑の中を歩いていたから村の境がまったくわからなかった。この領地すべてが村みたいなものじゃないのよ。
「家が多いんだね」
まあ、家と家の間は開いており、都会感はまったくないけど、わたしたちが住んでいるところよりは家が建っていたわ。
「領地でも賑やかなところさ」
現代知識がある者としては過疎地にしか見えないけど、まあ、ここではこれが賑やかなんでしょうよ。
大通り的な道を進むと、お城が見えてきた。
「あそこが領主様が住んでいる城だよ」
お城ってより要塞みたいな感じね。尖塔みたいなものはないし、屋根もない。夢も魔法もないお城だわ。
「市場は城の横にあるマーチック広場で開かれているんだよ」
野球でもやれそうな広場には、大小いろいろな露店が建てられ、蓙を敷いただけの店(?)もあった。
「お金、取られるの?」
広場の入口に兵士っぽい男の人が二人立っており、入る人がお金を払っていた。
「ああ。でも、金のない者は売るものを渡せば利用できるんだよ」
兵士に売るものを告げ、縄を一束渡した。そんなんでいいんだ。
買い物客は払うことなく出入りできるみたいで、結構な人が集まっていた。
「いつもこんな感じなの?」
「今は畑も落ち着いた頃だからね、暇潰しに来てる者が多いかもね」
娯楽が少ないってことなのか。
ボードゲームもリバーシもやったことがないわたしには作り出すこともできない。わたしには前世のゲームで大儲け、はできないわね。
わたしたちは飛び入りなので、蓙を敷いている一角に向かった。
ここは野菜や桶、ザル、小物類と、時間の間に作ったものを売っている感じだった。
お母ちゃんが周りに挨拶し、空いているところに蓙を敷いた。
縄を並べ、品出し完了。あとはお客さんを待つだけだった。
呼び込みとかはしないみたいで、興味がある人が前に来たら接客するルールみたいだ。
「縄っていくらで売るの?」
「一束銅貨二枚かね? 他も売ってたら一枚になるときもあるよ」
銅貨の価値がどれほどのものかわからないけど、そう価値があるものとは思えない。銅貨一枚百円ってところでしょうね。
お客さんはそれなりにいるけど、蓙区(わたし命名)に人が流れて来るのは希で、買っていくのは野菜ばかりだった。
「売れないね」
「まあ、どれも自分のところで作れるものだからね。一つも売れたら上等だよ。あ、マレア! 久しぶりだね!」
「ローザじゃないか! 久しぶりだね!」
同年代の女の人とおしゃべりタイムに入ってしまったお母ちゃん。よくよく見たらおばちゃん同士でしゃべっている光景がそこらかしこにあった。
……ここは、井戸端会議みたいなところだったのね……。
完全に放っておかれたわたしはお客さんが来るまで蓙に体育座りで待った。
しばらくして武装した男女が蓙区に現れた。
皆バラバラの武装で、剣を持った人、弓を持った人、ローブに杖を持った人がいた。
その集団は辺りを見回すと、こちらを指差し、全員でやって来た。な、なに!?
「よかった。縄を売っていたよ。全部くれ」
「あ、はい。一束銅貨二枚なので二十二枚です」
縄は全部で十一束。かなりの長さになるのに全部とか豪気ね。何に使うのかしら?
「わかった」
「これでいいかな? 細かがないから負けてよ」
と、ローブを着た女の人が革袋を出して銅貨──より大きな銅貨を二枚出した。
二枚ってことは銅貨一枚の五倍になるのか。
「ええ。いいですよ。おねえさんは魔法使いなの?」
これで吟遊詩人ですとか言われたらこの世界の常識をまた最初から学び直さないといけないわ。
「そうよ。って言ってもまだまだ低ランクだけどね」
ランクって言葉があるんだ。ゲームの中に転生したのかな?
「魔法ってどうしたら使えるの? わたしでも出来る?」
あるのなら使いたいじゃない! 夢が広がるじゃない!
「あ、いや、冒険者ギルドで鑑定してもらうといいよ。じゃあね」
と、逃げるように去って行ってしまった。まだ訊きたいことがあるのに!
でも、この世に魔法があることはわかった。それを調べる方法が冒険者ギルドにあることも。なら、地味に訊いて回れば答えに辿り着くわ。
「ふふ。魔法か。どんなことが出来るか楽しみだわ」
とはならなかった。朝食が終われば市場に連れてってもらうんだったわ。
背負子に藁縄を積み込み、お母ちゃんと市場に出発した。
「お母ちゃん。市場って大きいの?」
「まあ、そうだね。周辺の村から集まって来るから大きいと思うよ」
周辺の村? どう言うこと?
「ここは、七つの村が集まるところでね、コンミンド伯爵様が治める地なんだよ」
コンミンド伯爵領? 王制なところってこと?
「本当は町として治めるべきなんだろうけど、村単位で治めるほうが楽ってんで、七つに分けているみたいだよ」
なかなか変わった治め方をしていること。漫画や小説でも出てこなかったわ。
市場は伯爵様が直接治めるロンドカ村にあり、うちからは歩いて一時間ほどかかった。
……ざっと十キロってところかしら。十歳の体でも歩けるものなのね……。
ロンドカ村に入る前に革袋に入れた水を飲んで一休みする。てか、村の外に出た意識もなく着いちゃったわね。
家と家の間が空いており、畑の中を歩いていたから村の境がまったくわからなかった。この領地すべてが村みたいなものじゃないのよ。
「家が多いんだね」
まあ、家と家の間は開いており、都会感はまったくないけど、わたしたちが住んでいるところよりは家が建っていたわ。
「領地でも賑やかなところさ」
現代知識がある者としては過疎地にしか見えないけど、まあ、ここではこれが賑やかなんでしょうよ。
大通り的な道を進むと、お城が見えてきた。
「あそこが領主様が住んでいる城だよ」
お城ってより要塞みたいな感じね。尖塔みたいなものはないし、屋根もない。夢も魔法もないお城だわ。
「市場は城の横にあるマーチック広場で開かれているんだよ」
野球でもやれそうな広場には、大小いろいろな露店が建てられ、蓙を敷いただけの店(?)もあった。
「お金、取られるの?」
広場の入口に兵士っぽい男の人が二人立っており、入る人がお金を払っていた。
「ああ。でも、金のない者は売るものを渡せば利用できるんだよ」
兵士に売るものを告げ、縄を一束渡した。そんなんでいいんだ。
買い物客は払うことなく出入りできるみたいで、結構な人が集まっていた。
「いつもこんな感じなの?」
「今は畑も落ち着いた頃だからね、暇潰しに来てる者が多いかもね」
娯楽が少ないってことなのか。
ボードゲームもリバーシもやったことがないわたしには作り出すこともできない。わたしには前世のゲームで大儲け、はできないわね。
わたしたちは飛び入りなので、蓙を敷いている一角に向かった。
ここは野菜や桶、ザル、小物類と、時間の間に作ったものを売っている感じだった。
お母ちゃんが周りに挨拶し、空いているところに蓙を敷いた。
縄を並べ、品出し完了。あとはお客さんを待つだけだった。
呼び込みとかはしないみたいで、興味がある人が前に来たら接客するルールみたいだ。
「縄っていくらで売るの?」
「一束銅貨二枚かね? 他も売ってたら一枚になるときもあるよ」
銅貨の価値がどれほどのものかわからないけど、そう価値があるものとは思えない。銅貨一枚百円ってところでしょうね。
お客さんはそれなりにいるけど、蓙区(わたし命名)に人が流れて来るのは希で、買っていくのは野菜ばかりだった。
「売れないね」
「まあ、どれも自分のところで作れるものだからね。一つも売れたら上等だよ。あ、マレア! 久しぶりだね!」
「ローザじゃないか! 久しぶりだね!」
同年代の女の人とおしゃべりタイムに入ってしまったお母ちゃん。よくよく見たらおばちゃん同士でしゃべっている光景がそこらかしこにあった。
……ここは、井戸端会議みたいなところだったのね……。
完全に放っておかれたわたしはお客さんが来るまで蓙に体育座りで待った。
しばらくして武装した男女が蓙区に現れた。
皆バラバラの武装で、剣を持った人、弓を持った人、ローブに杖を持った人がいた。
その集団は辺りを見回すと、こちらを指差し、全員でやって来た。な、なに!?
「よかった。縄を売っていたよ。全部くれ」
「あ、はい。一束銅貨二枚なので二十二枚です」
縄は全部で十一束。かなりの長さになるのに全部とか豪気ね。何に使うのかしら?
「わかった」
「これでいいかな? 細かがないから負けてよ」
と、ローブを着た女の人が革袋を出して銅貨──より大きな銅貨を二枚出した。
二枚ってことは銅貨一枚の五倍になるのか。
「ええ。いいですよ。おねえさんは魔法使いなの?」
これで吟遊詩人ですとか言われたらこの世界の常識をまた最初から学び直さないといけないわ。
「そうよ。って言ってもまだまだ低ランクだけどね」
ランクって言葉があるんだ。ゲームの中に転生したのかな?
「魔法ってどうしたら使えるの? わたしでも出来る?」
あるのなら使いたいじゃない! 夢が広がるじゃない!
「あ、いや、冒険者ギルドで鑑定してもらうといいよ。じゃあね」
と、逃げるように去って行ってしまった。まだ訊きたいことがあるのに!
でも、この世に魔法があることはわかった。それを調べる方法が冒険者ギルドにあることも。なら、地味に訊いて回れば答えに辿り着くわ。
「ふふ。魔法か。どんなことが出来るか楽しみだわ」