まだ暗くなるには時間があるので猪がいる山の麓まで移動した。
そこは冒険者が山に入る前の野営地とかでいくつかのパーティーが野営の準備をしていた。
中にはわたしたちくらいの男の子もいて、年齢は割りと低めな感じだった。
「冒険者って若い人しかいないよね」
「若いときにしかやれないってことでしょう」
確かにそうかもね。命を懸ける職業だし。
「わたしたちも野営の準備をしようか」
ここはもう安全な家とは違うので、夜は交代で眠りにつかなくちゃならない。
夜に眠り、朝に起きる生活をしていた者には辛いけど、これができないと冒険者は勤まらないと言う。今から慣れていくしかないわ。
「ティナ。先に寝る? あとにする?」
「あとにする。狩りに影響するから」
「わかった。わたしが先に寝るね。食事は好きなときにしてね」
お城で少しずつ作った寝袋を鞄から出した。
わたしの固有魔法が付与魔法だと証明するように、完成してから寝袋に温度適温、柔らかさ固定、防御力を籠めながらわたしが思うとおりの寝袋となった。
まあ、部屋の中で試したからすべてがすべてわたしの思いとおりかと言えばまだわからないけど、その試しが今。自らの体で確めましょう、だ。
寝袋に入ると、ルルまで入ってきた。
「にゃ~」
「あんたはにゃ~と鳴けば許されると思ってんの?」
猫と犬に触れてこなかったから可愛いという感情は湧いてこない。と言うか、なんかルルを可愛いとは思えないのよね。なんかふてぶてしいしね。
まあ、だからと言って嫌いというわけでもないので寝袋に入れてあげた。
「あんたも眠ったら見張りしなさいよ」
出来るとは思えないながらも注意して眠りについた。
寝袋に安眠の効果は乗せてないけど、柔らかくて温かいとぐっすり眠れるもの。気持ちよく真夜中に起きられた。
「おはよ。何かあった?」
「何もない。平和なもの」
何か素っ気ないけど、ティナが何もないっていうならそうなんでしょう。
「じゃあ、ティナは朝まで眠っていいよ」
寝袋は一つなので交代して眠ってもらった。
薪はたくさんあるので絶やさないようにくべ、鉈を持ったまま見張りを始めた。
「にゃ~」
いつの間にか寝袋から出ていたルルが暗闇から現れた。トイレかな?
「ルル、芋餅食べる?」
「にゃ~」
たぶん、食べたいって鳴いたのだろうと串に餅芋を刺して火にかけた。
「肉は朝になってからね。匂いを立てると周りに迷惑だから」
寝る前にチラっと見たけど、料理をしているパーティーはなかった。ってことは保存食を食べただけでしょう。そんな中で肉の匂いを立てたら嫌がらせでしかない。
これから狩りをするのに問題を起こしてらんない。今は芋餅で我慢しておきましょう。
「芋餅も結構匂いが立つわね」
マー油を絡めているから匂いが結構立つ。夜中にこれは凶器かもね。朝になったら売ることも考えておくべきかしら?
若い冒険者とは言え、お金は持っているはずだ。三つで銅貨一枚なら買えるでしょうよ。
「にゃ~」
「はいはい、熱いから気をつけるのよ」
猫舌とはこの世界の猫には関係ないのでしょう。湯気が立つ芋餅をパクパク食べているわ。
わたしも一串食べ、鍋で沸かしたらお城でもらった紅茶を淹れ、牛乳と砂糖を入れて飲んだ。
「何度飲んでもミルクティーを飲んでいるのかカフェオレを飲んでいるのかわからなくなる飲み物よね」
ルルにも出してあげると、ペロペロと飲み始めた。
食事も終ると長い夜が始まる。
見張りなんだから辺りにも警戒しなくちゃならない。時間潰しに何かするわけにもいかない。野宿の辛さがよくわかるわ。
「ルルがいてくれてよかったわ」
わたしの膝の上で丸くなるルルを撫でる。見張りの役には立たないけど、野宿のお供にはちょうどいいかもね。
ゴロゴロと喉を鳴らすルル。そこは猫なのね。
「あなたがしゃべれたらいいのにね」
そしたら長い夜も寂しくないのに。ファンタジーな世界の猫ならしゃべれるくらいなりなさいよ。
すっと体から流れていく感じがしたけど、これと言って力が抜けることも気分が悪くなったこともない。気にせずルルを撫でた。
「ちょっとおしっこしてくるね」
「気をつけてね」
ルルを下ろしたら女性の声がした。
………………。
…………。
……。
ん? 誰の声? 幽霊? いや、ティナが起きたの?
ティナを見るけど、ぐっすり眠っている。え? 気のせい? うん、気のせいね。おしっこおしっこ。
すっきりして戻ってきたら薪をくべ、座り直したらルルが膝の上に上がってきた。
「膝の上がそんなにいいの?」
「女の子の膝の上は気持ちいいのよ」
………………。
…………。
……。
深呼吸を三回。事実に目を向ける覚悟を決めた。
「ルル、しゃべれたの?」
「ん? しゃべれたの?」
ルルが起き上がってわたしを見た。
「……わたしの言葉、わかるの……?」
表情がないので変わったりしないが、驚愕しているのは痛いほどわかった。
「うん。わかるみたい」
お互い驚愕に襲われたせいか、見詰めあったまま動くことが出来なかった。
そこは冒険者が山に入る前の野営地とかでいくつかのパーティーが野営の準備をしていた。
中にはわたしたちくらいの男の子もいて、年齢は割りと低めな感じだった。
「冒険者って若い人しかいないよね」
「若いときにしかやれないってことでしょう」
確かにそうかもね。命を懸ける職業だし。
「わたしたちも野営の準備をしようか」
ここはもう安全な家とは違うので、夜は交代で眠りにつかなくちゃならない。
夜に眠り、朝に起きる生活をしていた者には辛いけど、これができないと冒険者は勤まらないと言う。今から慣れていくしかないわ。
「ティナ。先に寝る? あとにする?」
「あとにする。狩りに影響するから」
「わかった。わたしが先に寝るね。食事は好きなときにしてね」
お城で少しずつ作った寝袋を鞄から出した。
わたしの固有魔法が付与魔法だと証明するように、完成してから寝袋に温度適温、柔らかさ固定、防御力を籠めながらわたしが思うとおりの寝袋となった。
まあ、部屋の中で試したからすべてがすべてわたしの思いとおりかと言えばまだわからないけど、その試しが今。自らの体で確めましょう、だ。
寝袋に入ると、ルルまで入ってきた。
「にゃ~」
「あんたはにゃ~と鳴けば許されると思ってんの?」
猫と犬に触れてこなかったから可愛いという感情は湧いてこない。と言うか、なんかルルを可愛いとは思えないのよね。なんかふてぶてしいしね。
まあ、だからと言って嫌いというわけでもないので寝袋に入れてあげた。
「あんたも眠ったら見張りしなさいよ」
出来るとは思えないながらも注意して眠りについた。
寝袋に安眠の効果は乗せてないけど、柔らかくて温かいとぐっすり眠れるもの。気持ちよく真夜中に起きられた。
「おはよ。何かあった?」
「何もない。平和なもの」
何か素っ気ないけど、ティナが何もないっていうならそうなんでしょう。
「じゃあ、ティナは朝まで眠っていいよ」
寝袋は一つなので交代して眠ってもらった。
薪はたくさんあるので絶やさないようにくべ、鉈を持ったまま見張りを始めた。
「にゃ~」
いつの間にか寝袋から出ていたルルが暗闇から現れた。トイレかな?
「ルル、芋餅食べる?」
「にゃ~」
たぶん、食べたいって鳴いたのだろうと串に餅芋を刺して火にかけた。
「肉は朝になってからね。匂いを立てると周りに迷惑だから」
寝る前にチラっと見たけど、料理をしているパーティーはなかった。ってことは保存食を食べただけでしょう。そんな中で肉の匂いを立てたら嫌がらせでしかない。
これから狩りをするのに問題を起こしてらんない。今は芋餅で我慢しておきましょう。
「芋餅も結構匂いが立つわね」
マー油を絡めているから匂いが結構立つ。夜中にこれは凶器かもね。朝になったら売ることも考えておくべきかしら?
若い冒険者とは言え、お金は持っているはずだ。三つで銅貨一枚なら買えるでしょうよ。
「にゃ~」
「はいはい、熱いから気をつけるのよ」
猫舌とはこの世界の猫には関係ないのでしょう。湯気が立つ芋餅をパクパク食べているわ。
わたしも一串食べ、鍋で沸かしたらお城でもらった紅茶を淹れ、牛乳と砂糖を入れて飲んだ。
「何度飲んでもミルクティーを飲んでいるのかカフェオレを飲んでいるのかわからなくなる飲み物よね」
ルルにも出してあげると、ペロペロと飲み始めた。
食事も終ると長い夜が始まる。
見張りなんだから辺りにも警戒しなくちゃならない。時間潰しに何かするわけにもいかない。野宿の辛さがよくわかるわ。
「ルルがいてくれてよかったわ」
わたしの膝の上で丸くなるルルを撫でる。見張りの役には立たないけど、野宿のお供にはちょうどいいかもね。
ゴロゴロと喉を鳴らすルル。そこは猫なのね。
「あなたがしゃべれたらいいのにね」
そしたら長い夜も寂しくないのに。ファンタジーな世界の猫ならしゃべれるくらいなりなさいよ。
すっと体から流れていく感じがしたけど、これと言って力が抜けることも気分が悪くなったこともない。気にせずルルを撫でた。
「ちょっとおしっこしてくるね」
「気をつけてね」
ルルを下ろしたら女性の声がした。
………………。
…………。
……。
ん? 誰の声? 幽霊? いや、ティナが起きたの?
ティナを見るけど、ぐっすり眠っている。え? 気のせい? うん、気のせいね。おしっこおしっこ。
すっきりして戻ってきたら薪をくべ、座り直したらルルが膝の上に上がってきた。
「膝の上がそんなにいいの?」
「女の子の膝の上は気持ちいいのよ」
………………。
…………。
……。
深呼吸を三回。事実に目を向ける覚悟を決めた。
「ルル、しゃべれたの?」
「ん? しゃべれたの?」
ルルが起き上がってわたしを見た。
「……わたしの言葉、わかるの……?」
表情がないので変わったりしないが、驚愕しているのは痛いほどわかった。
「うん。わかるみたい」
お互い驚愕に襲われたせいか、見詰めあったまま動くことが出来なかった。