休みはあっと言う間に過ぎ去り、夕方徒歩でお城に向かった。
お城で働く人は大半が住み込みだけど、周辺から通う人もいるので、二十四時間開いている門がある。
さすがに素通りは出来ないけど、門番の兵士に名前と役職(本当にお友達係って言うんだから笑っちゃうわよね)を伝え、許可が出たらお城に入った。
帰って来たことを側仕えの方に伝え、マリー様に伝えてもらうようお願いした。
部屋に戻ったらお城用の服に着替え、上に向かった。
側仕えの方々が集まる部屋に行き、差し入れを渡した。側仕えの方々は長期休暇でもなければ休みの日は部屋でゆっくりしたり市場に出るくらい。大半は寝て曜日だそうよ。
「うちで作っている芋餅です。皆さんで食べてください」
お城の食堂では芋餅は出ないし、たくさんいる側仕えの方々に差し入れするには芋餅がちょうどいいのよね。今年も芋が豊作だったからたくさん作ってあったのよ。
「これ、広場で売っているもねよね?」
「はい。うちでやっている屋台です。少しずつ量を増やしているので利用してみてください」
なんて宣伝もしておく。側仕えの方はまだ買いに来てないみたいだからね。
「キャロル、ティナ、帰っていたのですね」
部屋にマリー様が入って来た。ちなみに侍女たちが休む部屋は別にあるそうです。わたしは入ったことないけど。
「はい。何かありましたでしょうか?」
「いえ、そうではないわ。少し時間をもらうわね。来てちょうだい」
断ることは出来ないので「「畏まりました」」と返事してマリー様の後に続いた。
付いて行った先は侍女たちが集まる部屋で、中には侍女たちが数人休んでいた。な、なに!?
「ごめんなさい。あなたに歯ブラシを売って欲しくてね」
あ、歯ブラシね。何事かと思ったわ。
「それは構いませんが、いずれちゃんとした職人が作った歯ブラシがバイバナル商会から発売されますよ。わたしのような素人が作ったものでなくてもいいかと思います」
今日は朝から歯ブラシを作っていたので二十本はある。充分足りるとは思うけど、素人のよりプロが作ったもののほうがいいんじゃない?
「それでは時間が掛かるでしょう。使った者からあなたが作った歯ブラシを使うとさっぱりして歯が綺麗になるそうなのよ」
それ、わたしの固有魔法のせい? やっぱり付与魔法ってことなの? 歯が綺麗に、丈夫に、清潔になることを籠めて作ったから……。
「わかりました。歯が綺麗になることはいいことですしね。どうぞ」
掛けている鞄から歯ブラシを十本出した。
「いくらかしら?」
「銅貨五枚でお願いします」
また作りたいのでちょっとぼったくりさせてもらいます。次は別の毛を使って作ってみたいしね。あ、髪をすくブラシも作りたいわ。そのためにも高めに売らしてもらいましょう。
「そんなに安くていいの? 随分と細かく作っているようだけど」
あれ? 安すぎた? 側仕えってお給料そんなにいいの?
「あ、いや、お世話になっている方々なので……」
「遠慮しなくてもいいのよ。大銅貨一枚でいいかしら?」
大銅貨一枚!? って、どのくらいになるのかしらね? まあ、高額ってことにしておきましょう。
「よ、よろしいのですか? そんなにいただいて……」
「構わないわ。あ、お嬢様の分もあるかしら?」
「はい。元々渡すつもりで持って来ました」
使う使わないは別として、わたしたちが使ってお嬢様が使えないでは立場がないでしょう。一応的にも渡しておけば波風立たないでしょうよ。
「それは気が利いてますね。代金は給金に足しておくよう伝えておきます」
一つではなんので、三本をマリー様に渡した。
「また作ったら売ってね。家族にも送りたいから」
「は、はい。わかりました」
そんなに歯ブラシがよかったのかしら? 今まで使っていたのでも歯は綺麗になっていたはずなんだけどな~。
まあ、大金を手に入れられたんだからよしとするか。旅立つときに充実した装備に出来そうなんだしね。
「にゃ~」
部屋から出ると、お嬢様の猫、ルルが現れた。
「なーに? 何か食べたいの?」
この猫、意外と食いしん坊なのよね。いや、悪食って言うのかしら? 人間の食べるものなら何でも食べちゃうのよね。
「にゃ~にゃ~」
そうだそうだとばかりに頭をこすりつけてきた。
「お前、なんか図々しいな」
ルルを持ち上げたティナがどうなんだとばかりに体を振った。
「にゃ~」
知りませんがな~とトボけたように鳴いた。この子、本当に猫なの? 妖精系の猫なんじゃない?
「ハンバーガー、食べる?」
「にゃ~!」
本当に人間の言葉がわかっている返事をするわよね。
「じゃあ、わたしたちの部屋に来なさい」
仮にもお嬢様の猫。廊下の床に置いて食べさせるわけにはいかないので、わたしたちの部屋に連れて行った。
皿を出してハンバーガーを乗せてあげた。
「にゃにゃ~ん」
「いただきますって聞こえたの、ボクの気のせいかな?」
「ううん。わたしもそう聞こえたわ」
やっぱりこの猫、普通の猫じゃないわ。いや、ファンタジーな世界にいる猫の普通がどんなんだか知らないけどさ。
「前足で持って食べてるよ、この猫」
「あ、ティナにもそう見えるんだ。わたしの目が壊れたのかと思ったわ」
なんなの、この猫は!?
お城で働く人は大半が住み込みだけど、周辺から通う人もいるので、二十四時間開いている門がある。
さすがに素通りは出来ないけど、門番の兵士に名前と役職(本当にお友達係って言うんだから笑っちゃうわよね)を伝え、許可が出たらお城に入った。
帰って来たことを側仕えの方に伝え、マリー様に伝えてもらうようお願いした。
部屋に戻ったらお城用の服に着替え、上に向かった。
側仕えの方々が集まる部屋に行き、差し入れを渡した。側仕えの方々は長期休暇でもなければ休みの日は部屋でゆっくりしたり市場に出るくらい。大半は寝て曜日だそうよ。
「うちで作っている芋餅です。皆さんで食べてください」
お城の食堂では芋餅は出ないし、たくさんいる側仕えの方々に差し入れするには芋餅がちょうどいいのよね。今年も芋が豊作だったからたくさん作ってあったのよ。
「これ、広場で売っているもねよね?」
「はい。うちでやっている屋台です。少しずつ量を増やしているので利用してみてください」
なんて宣伝もしておく。側仕えの方はまだ買いに来てないみたいだからね。
「キャロル、ティナ、帰っていたのですね」
部屋にマリー様が入って来た。ちなみに侍女たちが休む部屋は別にあるそうです。わたしは入ったことないけど。
「はい。何かありましたでしょうか?」
「いえ、そうではないわ。少し時間をもらうわね。来てちょうだい」
断ることは出来ないので「「畏まりました」」と返事してマリー様の後に続いた。
付いて行った先は侍女たちが集まる部屋で、中には侍女たちが数人休んでいた。な、なに!?
「ごめんなさい。あなたに歯ブラシを売って欲しくてね」
あ、歯ブラシね。何事かと思ったわ。
「それは構いませんが、いずれちゃんとした職人が作った歯ブラシがバイバナル商会から発売されますよ。わたしのような素人が作ったものでなくてもいいかと思います」
今日は朝から歯ブラシを作っていたので二十本はある。充分足りるとは思うけど、素人のよりプロが作ったもののほうがいいんじゃない?
「それでは時間が掛かるでしょう。使った者からあなたが作った歯ブラシを使うとさっぱりして歯が綺麗になるそうなのよ」
それ、わたしの固有魔法のせい? やっぱり付与魔法ってことなの? 歯が綺麗に、丈夫に、清潔になることを籠めて作ったから……。
「わかりました。歯が綺麗になることはいいことですしね。どうぞ」
掛けている鞄から歯ブラシを十本出した。
「いくらかしら?」
「銅貨五枚でお願いします」
また作りたいのでちょっとぼったくりさせてもらいます。次は別の毛を使って作ってみたいしね。あ、髪をすくブラシも作りたいわ。そのためにも高めに売らしてもらいましょう。
「そんなに安くていいの? 随分と細かく作っているようだけど」
あれ? 安すぎた? 側仕えってお給料そんなにいいの?
「あ、いや、お世話になっている方々なので……」
「遠慮しなくてもいいのよ。大銅貨一枚でいいかしら?」
大銅貨一枚!? って、どのくらいになるのかしらね? まあ、高額ってことにしておきましょう。
「よ、よろしいのですか? そんなにいただいて……」
「構わないわ。あ、お嬢様の分もあるかしら?」
「はい。元々渡すつもりで持って来ました」
使う使わないは別として、わたしたちが使ってお嬢様が使えないでは立場がないでしょう。一応的にも渡しておけば波風立たないでしょうよ。
「それは気が利いてますね。代金は給金に足しておくよう伝えておきます」
一つではなんので、三本をマリー様に渡した。
「また作ったら売ってね。家族にも送りたいから」
「は、はい。わかりました」
そんなに歯ブラシがよかったのかしら? 今まで使っていたのでも歯は綺麗になっていたはずなんだけどな~。
まあ、大金を手に入れられたんだからよしとするか。旅立つときに充実した装備に出来そうなんだしね。
「にゃ~」
部屋から出ると、お嬢様の猫、ルルが現れた。
「なーに? 何か食べたいの?」
この猫、意外と食いしん坊なのよね。いや、悪食って言うのかしら? 人間の食べるものなら何でも食べちゃうのよね。
「にゃ~にゃ~」
そうだそうだとばかりに頭をこすりつけてきた。
「お前、なんか図々しいな」
ルルを持ち上げたティナがどうなんだとばかりに体を振った。
「にゃ~」
知りませんがな~とトボけたように鳴いた。この子、本当に猫なの? 妖精系の猫なんじゃない?
「ハンバーガー、食べる?」
「にゃ~!」
本当に人間の言葉がわかっている返事をするわよね。
「じゃあ、わたしたちの部屋に来なさい」
仮にもお嬢様の猫。廊下の床に置いて食べさせるわけにはいかないので、わたしたちの部屋に連れて行った。
皿を出してハンバーガーを乗せてあげた。
「にゃにゃ~ん」
「いただきますって聞こえたの、ボクの気のせいかな?」
「ううん。わたしもそう聞こえたわ」
やっぱりこの猫、普通の猫じゃないわ。いや、ファンタジーな世界にいる猫の普通がどんなんだか知らないけどさ。
「前足で持って食べてるよ、この猫」
「あ、ティナにもそう見えるんだ。わたしの目が壊れたのかと思ったわ」
なんなの、この猫は!?