お城に来て一週間が過ぎた。
いや、一週間はわたしの中でね。一年を十二月に分けているみたいだけど、週と言うのはなく、曜日もなかった。いや、厳密にはあるみたいだけど、上の人しか使ってないからわたしたちには余り関係ないみたいよ。
お嬢様との関係はよくも悪くもなく、一緒に勉強する仲、って感じで、午後のおやつのときにおしゃべりするくらい。友達って難だろう? なんて考える日々だわ。
「明日は休みにします。家に帰りますか? 帰るのなら今からでも構いませんよ」
休みは七日に一回って約束だけど、まさか前日に言われるとは思わなかったわ。
「では、今から帰らせてもらいます。ローダルさんに相談したいことがあるので」
何だかお城で歯ブラシを欲しがる人が出てきて、売ってくれと大変なのよ。家に予備はあるけど、さすがに足りない。ローダルさんにお願いして歯ブラシを作ってもらうとしましょう。
「あ、お嬢様とわたしにも歯ブラシをお願いできないかしら?」
ナタリア婦人、あなたもか……。
「わかりました。材料は家にあるので時間があるときに作っておきます」
ローダルさんに任せるとして、重要な方々にはわたしが作ったものを渡すとしましょう。
帰宅許可をもらったら帰るために着替え、城の外に出たら馬車が用意されていた。
「マリー様からお嬢ちゃんたちを乗せて帰れと言われているよ」
と、御者のおじちゃんの談。なんだか至れり尽くせりね。まあ、いらないとも言えないのでありがたく使わせてもらうとする。
「家に帰る前にバイバナル商会に向かってください」
そうお願いすると承諾してくれてバイバナル商会に向かってくれた。
すぐにバイバナル商会に到着。店の前で降ろしてもらうと、商会の人が慌てた様子で中から出て来た。どしたのっ!?
「キャロ、この馬車、伯爵家の紋章が付いているよ」
ティナに言われて見れば確かに伯爵家の紋章(何かの鳥)が付けられていた。そりゃ、慌てて出て来るわ。
「お騒がせして申し訳ありません。レンラさんとお会いしたいのですが、おりますか?」
伯爵家の紋章の前で恥ずかしいことは出来ないと丁寧に話した。
「はい。中へどうぞ」
農民の子とわかっていても伯爵家の紋章の手前、雑には扱えないとばかりにそちらも丁寧に扱ってくれた。
中に入り、商談スペース的なところに案内され、すぐにコーヒー味の紅茶を出された。やはり、これがもてなし系のお茶なのね。
しばらくしてレンラさんがやって来た。
席を立ち、ティナと一緒にスカートの裾をつかんでお辞儀した。
「すっかりお嬢様のお友達になっていますね」
お友達という役職が板についた、って意味でしょうね。
「ありがとうございます。今日は少しお願いがあって参りました」
鞄から使ってない歯ブラシを出した。
「これを作っていただけませんか? お城の方々に頼まれたのですが、わたしではたくさん作ることができません。バイバナル商会で取り扱っていただけると幸いです」
「名前と形状からして歯を磨くものですか?」
「はい。毛は猪のを使っていますが、丈夫な毛なら何を使っても問題ないと思います。獣の毛をと毛嫌いする方もいらっしゃいましたが、ナタリア婦人やお嬢様も所望しておりましたので、そう遠くないうちに伯爵様もお望みになると思います」
絶対とは言えないけど、この流れからしてそう遠くないうちに求められるでしょうね。
「それは、我が商会に託す、と言うことですか?」
「はい。わたしでは作るのが限界がありますし、そう利益が出せるとは思えません。なら、すべてを託したほうが安く手に入れられます」
材料費0だったけど、一つ作るのに一時間くらい掛かった。どんどん作って慣れたとしても三十分は掛かるでしょう。とてもじゃないが労力に合わないわ。だったら職人に丸投げしたほうがいいわ。バイバナル商会なら職人の手配も簡単でしょうからね。
「……わかりました。バイバナル商会がお引き受け致します。ただ、無料で受け取ることは出来ませんので買い取らせていただきます」
「わかりました。正しく商売が行われたと証明するために文章にしてください。承諾したとわたしの名前を記しますので」
「お城で学びましたか?」
「はい。貴重な話をたくさん聞かせていただきました」
ってことにしておきましょう。午前の一時間くらいしが座学しか受けてないんだからね。
上質な紙を持ってきて契約書的な感じのことを目の前で書いてくれ、わたしが歯ブラシをバイバナル商会に売ったことをここに書き記した的な感じのことを読んでくれた。
「了承します」
と、わたしの名前とティナの名前を記した。
「はい。確かに了承しました。すぐに取り掛かり、城に届けさせていただきます」
席を立ってよろしくお願いしますと頭を下げた。
「代金は商会で預かっておきます。必要なときに取りに来てください」
「ありがとうございます。これからもよろしくお願い致します」
ここにいる間は何かとお願いすることもある。頭を下げるくらい安いものだわ。
いや、一週間はわたしの中でね。一年を十二月に分けているみたいだけど、週と言うのはなく、曜日もなかった。いや、厳密にはあるみたいだけど、上の人しか使ってないからわたしたちには余り関係ないみたいよ。
お嬢様との関係はよくも悪くもなく、一緒に勉強する仲、って感じで、午後のおやつのときにおしゃべりするくらい。友達って難だろう? なんて考える日々だわ。
「明日は休みにします。家に帰りますか? 帰るのなら今からでも構いませんよ」
休みは七日に一回って約束だけど、まさか前日に言われるとは思わなかったわ。
「では、今から帰らせてもらいます。ローダルさんに相談したいことがあるので」
何だかお城で歯ブラシを欲しがる人が出てきて、売ってくれと大変なのよ。家に予備はあるけど、さすがに足りない。ローダルさんにお願いして歯ブラシを作ってもらうとしましょう。
「あ、お嬢様とわたしにも歯ブラシをお願いできないかしら?」
ナタリア婦人、あなたもか……。
「わかりました。材料は家にあるので時間があるときに作っておきます」
ローダルさんに任せるとして、重要な方々にはわたしが作ったものを渡すとしましょう。
帰宅許可をもらったら帰るために着替え、城の外に出たら馬車が用意されていた。
「マリー様からお嬢ちゃんたちを乗せて帰れと言われているよ」
と、御者のおじちゃんの談。なんだか至れり尽くせりね。まあ、いらないとも言えないのでありがたく使わせてもらうとする。
「家に帰る前にバイバナル商会に向かってください」
そうお願いすると承諾してくれてバイバナル商会に向かってくれた。
すぐにバイバナル商会に到着。店の前で降ろしてもらうと、商会の人が慌てた様子で中から出て来た。どしたのっ!?
「キャロ、この馬車、伯爵家の紋章が付いているよ」
ティナに言われて見れば確かに伯爵家の紋章(何かの鳥)が付けられていた。そりゃ、慌てて出て来るわ。
「お騒がせして申し訳ありません。レンラさんとお会いしたいのですが、おりますか?」
伯爵家の紋章の前で恥ずかしいことは出来ないと丁寧に話した。
「はい。中へどうぞ」
農民の子とわかっていても伯爵家の紋章の手前、雑には扱えないとばかりにそちらも丁寧に扱ってくれた。
中に入り、商談スペース的なところに案内され、すぐにコーヒー味の紅茶を出された。やはり、これがもてなし系のお茶なのね。
しばらくしてレンラさんがやって来た。
席を立ち、ティナと一緒にスカートの裾をつかんでお辞儀した。
「すっかりお嬢様のお友達になっていますね」
お友達という役職が板についた、って意味でしょうね。
「ありがとうございます。今日は少しお願いがあって参りました」
鞄から使ってない歯ブラシを出した。
「これを作っていただけませんか? お城の方々に頼まれたのですが、わたしではたくさん作ることができません。バイバナル商会で取り扱っていただけると幸いです」
「名前と形状からして歯を磨くものですか?」
「はい。毛は猪のを使っていますが、丈夫な毛なら何を使っても問題ないと思います。獣の毛をと毛嫌いする方もいらっしゃいましたが、ナタリア婦人やお嬢様も所望しておりましたので、そう遠くないうちに伯爵様もお望みになると思います」
絶対とは言えないけど、この流れからしてそう遠くないうちに求められるでしょうね。
「それは、我が商会に託す、と言うことですか?」
「はい。わたしでは作るのが限界がありますし、そう利益が出せるとは思えません。なら、すべてを託したほうが安く手に入れられます」
材料費0だったけど、一つ作るのに一時間くらい掛かった。どんどん作って慣れたとしても三十分は掛かるでしょう。とてもじゃないが労力に合わないわ。だったら職人に丸投げしたほうがいいわ。バイバナル商会なら職人の手配も簡単でしょうからね。
「……わかりました。バイバナル商会がお引き受け致します。ただ、無料で受け取ることは出来ませんので買い取らせていただきます」
「わかりました。正しく商売が行われたと証明するために文章にしてください。承諾したとわたしの名前を記しますので」
「お城で学びましたか?」
「はい。貴重な話をたくさん聞かせていただきました」
ってことにしておきましょう。午前の一時間くらいしが座学しか受けてないんだからね。
上質な紙を持ってきて契約書的な感じのことを目の前で書いてくれ、わたしが歯ブラシをバイバナル商会に売ったことをここに書き記した的な感じのことを読んでくれた。
「了承します」
と、わたしの名前とティナの名前を記した。
「はい。確かに了承しました。すぐに取り掛かり、城に届けさせていただきます」
席を立ってよろしくお願いしますと頭を下げた。
「代金は商会で預かっておきます。必要なときに取りに来てください」
「ありがとうございます。これからもよろしくお願い致します」
ここにいる間は何かとお願いすることもある。頭を下げるくらい安いものだわ。