次の日にわたしたちの後を継ぐ人たちがやって来た。本当にこの日のために用意してたのね。仕事が早い人だこと。
ローダルさんが連れて来たのは十五歳くらいの女の子──お姉さんが二人で、ローダルさんの知り合いの飲食店で働いていたそうだ。
ミリアとロミニーって名前で、幼馴染みの関係とか。冒険者としての登録もしているんだって。お城の広場に入れるのは商人や冒険者、許可を得た者だけの決まりがあるそうだ。
……緩いようでちゃんと決まりがあったのね……。
二人とも飲食店で働いていただけはあり、特にミリアは厨房で働いたとかで一時間もあればサンドイッチやハンバーガーを作るのを覚え、勘定や接客はロミニーが優れていた。
「長く働いている人は覚えも違いますね」
「そりゃ五年以上働いていたら当然だ。お嬢ちゃんのように最初から出来るほうが間違ってんだからな」
「わたしは見よう見真似でやっているだけですよ」
「見よう見真似でも九歳の子は出来ないからな」
そんなものなの? 同年代がティナしかいないからわからないわ。そのティナも無口だけど、スペックは高い。読み書き計算が出来て弓や剣まで使える。わたしなんて器用で物怖じしないってことぐらいしか自慢が出来ないわ。
まあ、わたしは前世の記憶を思い出した特異存在。他の人と比べても仕方がない。異常に思われない程度に過ごして行きましょう。
二人が慣れるまで一緒に行動し、お客さんに周知したらお城に上がる準備を始めた。
と言ってもお城に上がるとき用の服は用意してあるし、日頃から身綺麗にはしている。言葉使いもそう悪いものではない。ローダルさんにお城に上がるときの心得を聞いて、ティナと一緒に予行練習をするくらいね。
ローダルさんがお城に行き、話し合いをしてきて五日後に行くことになった。
「まずは侍女からの学んで勉強をする。お嬢様の相手をするのはそれからだな」
ちゃんと考えているのね。って、当たり前か。貴族から選ぶんじゃなくて平民から選ぶんだからね。
日帰り宿屋の手伝いをしながら待っていると、ちょっと豪華な箱馬車がやって来た。
箱馬車から降りてきたのはお嬢様の背後にいた侍女さんだった。
「こちらはマリー・ロンテル様だ」
侍女は爵位のある奥さんや娘しかなれたい人で、ローダルさんが様と付けているならかなり地位のある人なんでしょうね。
「キャロルです。よろしくお願いします」
「ティナです。よろしくお願いします」
あまり畏まった挨拶はせず、ただ行儀よくお辞儀して名乗った。
「マリーです。あなたたちの教育はわたしがします。励むように」
はいと、はっきりと答えた。
「これから参りますが、用意は?」
「出来ております」
時計がないので朝から待機してたわ。ちなみに今は午前の十時くらいです。
「用意がいいですね。ローダル。ここからはわたしが引き継ぎます」
「はい。よろしくお願い致します」
何だか顔見知りってより長い付き合いがある感じね。ローダルさんはどんな裏の顔を持っているのかしらね?
「お母ちゃん、行って来るね」
「ああ。粗相しないようにね」
「うん。ちゃんと勤め上げて来るよ」
「ティナ。キャロがバカしないよう見張ってておくれね」
わたし、バカなんてしたことあった? 迷惑なんてかけてないよ。
「任せて」
なんだろう。このティナのほうが信頼されている感じは? わたし、そんなにダメな娘だった?
出発前にモヤモヤさせてくるけど、発散することも出来ないので大人しく箱馬車に乗り込んだ。
お母ちゃんやローダルさんに見送られて箱馬車が発車。沈黙が支配したままお城に到着した。
……何の拷問だったのかしらね……?
箱馬車が停まったのは玄関前ではなく、従業員出入口的なところだった。まあ、わたしたちはお客様じゃないしね。下働きみたいものでしょうよ。
「こちへ」
マリー様の後に続きお城の中に。案外、暗いのね。まあ、要塞みたいなお城だしね。頑丈に作っているから仕方がないか。
通された部屋は窓のない部屋で、ベッドが二つに机が一つの質素なところだった。
「今日からここがあなたたちの部屋よ。蝋燭は一日四本まで。服はそこに掛かっているものを着なさい。下着は自前のを使って自分たちで洗濯しなさい。まあ、ここは寝るための部屋。大体はお嬢様と過ごしてもらうわ」
寝るだけの部屋なら窓がなくても問題ないとは言え、なかなか環境の悪いところだこと。お城暮らしは想像以上に大変みたいね。
「部屋は自由に使っていいのでしょうか?」
「汚さしたり破損させたら給金から引きます。そうでないのなら好きにして構いません」
「わかりました。ありがとうございます」
マイナスにしなければ問題ないってことね。了解です。
「まず、その服に着替えなさい。城内を案内します」
マリー様が部屋を出て行き、わたしたちは顔を見合わせた。
「何だかわくわくするね」
「……この状況でわくわく出来るのはキャロだけだよ……」
「そう? 自由にしていい許可を得たんだよ? 快適にしなくちゃウソじゃない」
そのためにいろいろ鞄に詰め込んできた。寝るだけの部屋なんてもったいない。わたしたちの部屋を作って行こうじゃないのよ。
「さあ、さっさと着替えてお城の探索と行こうじゃない」
「案内されるだけでしょ」
「同じようなものよ」
自分でするか案内するかの違いだけ。わたしはどちらでも構わないわ。
ローダルさんが連れて来たのは十五歳くらいの女の子──お姉さんが二人で、ローダルさんの知り合いの飲食店で働いていたそうだ。
ミリアとロミニーって名前で、幼馴染みの関係とか。冒険者としての登録もしているんだって。お城の広場に入れるのは商人や冒険者、許可を得た者だけの決まりがあるそうだ。
……緩いようでちゃんと決まりがあったのね……。
二人とも飲食店で働いていただけはあり、特にミリアは厨房で働いたとかで一時間もあればサンドイッチやハンバーガーを作るのを覚え、勘定や接客はロミニーが優れていた。
「長く働いている人は覚えも違いますね」
「そりゃ五年以上働いていたら当然だ。お嬢ちゃんのように最初から出来るほうが間違ってんだからな」
「わたしは見よう見真似でやっているだけですよ」
「見よう見真似でも九歳の子は出来ないからな」
そんなものなの? 同年代がティナしかいないからわからないわ。そのティナも無口だけど、スペックは高い。読み書き計算が出来て弓や剣まで使える。わたしなんて器用で物怖じしないってことぐらいしか自慢が出来ないわ。
まあ、わたしは前世の記憶を思い出した特異存在。他の人と比べても仕方がない。異常に思われない程度に過ごして行きましょう。
二人が慣れるまで一緒に行動し、お客さんに周知したらお城に上がる準備を始めた。
と言ってもお城に上がるとき用の服は用意してあるし、日頃から身綺麗にはしている。言葉使いもそう悪いものではない。ローダルさんにお城に上がるときの心得を聞いて、ティナと一緒に予行練習をするくらいね。
ローダルさんがお城に行き、話し合いをしてきて五日後に行くことになった。
「まずは侍女からの学んで勉強をする。お嬢様の相手をするのはそれからだな」
ちゃんと考えているのね。って、当たり前か。貴族から選ぶんじゃなくて平民から選ぶんだからね。
日帰り宿屋の手伝いをしながら待っていると、ちょっと豪華な箱馬車がやって来た。
箱馬車から降りてきたのはお嬢様の背後にいた侍女さんだった。
「こちらはマリー・ロンテル様だ」
侍女は爵位のある奥さんや娘しかなれたい人で、ローダルさんが様と付けているならかなり地位のある人なんでしょうね。
「キャロルです。よろしくお願いします」
「ティナです。よろしくお願いします」
あまり畏まった挨拶はせず、ただ行儀よくお辞儀して名乗った。
「マリーです。あなたたちの教育はわたしがします。励むように」
はいと、はっきりと答えた。
「これから参りますが、用意は?」
「出来ております」
時計がないので朝から待機してたわ。ちなみに今は午前の十時くらいです。
「用意がいいですね。ローダル。ここからはわたしが引き継ぎます」
「はい。よろしくお願い致します」
何だか顔見知りってより長い付き合いがある感じね。ローダルさんはどんな裏の顔を持っているのかしらね?
「お母ちゃん、行って来るね」
「ああ。粗相しないようにね」
「うん。ちゃんと勤め上げて来るよ」
「ティナ。キャロがバカしないよう見張ってておくれね」
わたし、バカなんてしたことあった? 迷惑なんてかけてないよ。
「任せて」
なんだろう。このティナのほうが信頼されている感じは? わたし、そんなにダメな娘だった?
出発前にモヤモヤさせてくるけど、発散することも出来ないので大人しく箱馬車に乗り込んだ。
お母ちゃんやローダルさんに見送られて箱馬車が発車。沈黙が支配したままお城に到着した。
……何の拷問だったのかしらね……?
箱馬車が停まったのは玄関前ではなく、従業員出入口的なところだった。まあ、わたしたちはお客様じゃないしね。下働きみたいものでしょうよ。
「こちへ」
マリー様の後に続きお城の中に。案外、暗いのね。まあ、要塞みたいなお城だしね。頑丈に作っているから仕方がないか。
通された部屋は窓のない部屋で、ベッドが二つに机が一つの質素なところだった。
「今日からここがあなたたちの部屋よ。蝋燭は一日四本まで。服はそこに掛かっているものを着なさい。下着は自前のを使って自分たちで洗濯しなさい。まあ、ここは寝るための部屋。大体はお嬢様と過ごしてもらうわ」
寝るだけの部屋なら窓がなくても問題ないとは言え、なかなか環境の悪いところだこと。お城暮らしは想像以上に大変みたいね。
「部屋は自由に使っていいのでしょうか?」
「汚さしたり破損させたら給金から引きます。そうでないのなら好きにして構いません」
「わかりました。ありがとうございます」
マイナスにしなければ問題ないってことね。了解です。
「まず、その服に着替えなさい。城内を案内します」
マリー様が部屋を出て行き、わたしたちは顔を見合わせた。
「何だかわくわくするね」
「……この状況でわくわく出来るのはキャロだけだよ……」
「そう? 自由にしていい許可を得たんだよ? 快適にしなくちゃウソじゃない」
そのためにいろいろ鞄に詰め込んできた。寝るだけの部屋なんてもったいない。わたしたちの部屋を作って行こうじゃないのよ。
「さあ、さっさと着替えてお城の探索と行こうじゃない」
「案内されるだけでしょ」
「同じようなものよ」
自分でするか案内するかの違いだけ。わたしはどちらでも構わないわ。