お城での商売は何だかんだと続いていて、完売の毎日だ。
でも、そろそろ数を増やさないといけない感じになってきた。ウワサを聞き付けた人もお城にやって来るようになったのよ。
これだけ人気になれば模倣する人も出て来るのに、なぜかわたしたちのところに買いに来るのよね?
まあ、そのうち模倣する人も増えるでしょう。別に出来たものから作り方なんて予想できるんだからね。それまでわたしたちは売れる量を増やす手段を考えなくちゃならないわ。
ティナと考えながら買い出しをして家に買えると、ローダルさんがいた。
「お久しぶりです。行商から帰って来たんですか?」
謎の多い人だけど行商には出ているようで、領内を回っているとレンラさんが言っていたわ。
「ああ。帰って来たらお嬢ちゃんたちのことがウワサになっていてびっくりしたよ」
そんなにウワサになってた? まあ、あれだけ人が来ていたら多少は人の耳にでも入るでしょうね。
「お母ちゃんたちが作った芋餅を売っているだけなんですけどね」
「その歳で商売するだけでも凄いことさ。誰に師事されたわけでもないのにな」
「ティナから読み書きを教えてもらいましたし、計算は得意なみたいで苦になりませんからね」
さすがに異質と思われないよう生きるのは難しい。だってわたしは前世の記憶を持っている。しかも、こことは違う世界で違う価値観のもと生きてきたんだからね。目立たず隠れて過ごせってほうが難しいわ。
だったら変わっていることを否定しない。肯定しながら真実を隠す。魔女狩りみたいなものがあったら嫌だからね。狩られないようにしながら自由に生きる。今生は絶対にハッピーエンドで終わらせるんだから!
「まあ、知らないことがたくさんあるからお嬢様の相手に選ばれるようがんばらないとですね」
学校も塾もない。なら、手っ取り早いのはお城で学ぶことでしょう。お嬢様の相手をすることでこの国のことがわかるなら目指すしかないじゃない。
「まだ挨拶に行ってないのか?」
「芋餅を売るので精一杯ですよ。芋餅はお母ちゃんたちが作ってくれますが、運ぶのはこれですから。馬車があればもっと多く運べるんですけどね」
ちょこちょこ押し車を改造して百五十人分まで積載量を増やしたけど、一人前三つ。それを百五十人分となると結構な重さになる。
ティナが力強いから押せるけど、押し車のほうが持たないわ。道もそんなよくないから衝撃がダイレクトに押し車に来るのよね。
「それなら人を雇うか?」
「雇うほどの儲けはありませんよ。芋餅を作るおばちゃんたちに報酬として銅貨五枚を払ってますから。材料費を考えたら一日の儲けは銅貨五十枚くらいですし」
芋餅は五個で銅貨一枚。豚骨スープは銅貨三枚。あと、小瓶に入れたお母ちゃん特製のマー油を銀貨十枚で売っているわ。
「それなら、持っていけない芋餅をおれに売ってくれないか? まあ、卸しだな」
卸し?
「卸しって、わたしが売って、ローダルさんが売るってことですか?」
「ああ、そうだ。おれも市場で売ろうと思ってな。お嬢ちゃんにとってもいいだろう? 作るだけで売る手間がなくなるんだからな」
委託販売みたいなものかな?
「そうですね。今は作るほうが多いですし、おばちゃんたちに払えるお給金も多くなる。いいかも知れませんね。ローダルさんが売ってくれるなら他のものも売ることできますからね」
いつまでも芋餅を売っていたら飽きられる。専門店でもないのだから他のものも売るほうがいいでしょうよ。
「ローダルさんのところで紙は売ってませんか? 帳簿を付けたいんです」
「帳簿の付け方なんて知っているのか?」
「売った数と受け取ったお金を書くだけですよ。徴税人が税を取りにくるって聞いたので」
売上の二割を税として収めるってレンラさんが言っていたわ。
「それ、お嬢ちゃんがやるのか?」
「しばらくはわたしがやって、いずれ誰かにやってもらいます。働きたい女性はいますからね」
出来ることなら代理店主も立てたいな。お母ちゃんには料理に集中して欲しいからね。
「へー。ちゃんと考えているんだな」
「はい。わたし、冒険者になって旅をしたいんです」
今は先立つものを稼ぐことに力を入れましょう。それに、体力も身に付けないとならないしね。十五歳なんてあっと言う間だわ。
「冒険者は危険だぞ」
「そうみたいですね。でも、わたしは冒険者になって旅をしてみたいんです。ねぇ、ティナ」
ティナも一緒に旅をしようと言ってくれた。十歳ながら狩りも出来るティナとなら危険を回避出来ると思うわ。
「うん」
短い返事だけど、ティナの意思を感じるくらいには仲良くなれたのよ。
「……そうか。まあ、二人なら冒険者になっても大成しそうだな」
「大成は望んでませんが、死なないようにがんばります。でも、その前に資金稼ぎですね。わたしたち、何も持ってませんからね」
「ふふ。将来が楽しみなお嬢ちゃんたちだ」
「楽しくなるような未来になるめに努力しますね」
もちろん、ローダルさんを楽しませるためでなく、わたしたちが楽しくなるために、ね。
でも、そろそろ数を増やさないといけない感じになってきた。ウワサを聞き付けた人もお城にやって来るようになったのよ。
これだけ人気になれば模倣する人も出て来るのに、なぜかわたしたちのところに買いに来るのよね?
まあ、そのうち模倣する人も増えるでしょう。別に出来たものから作り方なんて予想できるんだからね。それまでわたしたちは売れる量を増やす手段を考えなくちゃならないわ。
ティナと考えながら買い出しをして家に買えると、ローダルさんがいた。
「お久しぶりです。行商から帰って来たんですか?」
謎の多い人だけど行商には出ているようで、領内を回っているとレンラさんが言っていたわ。
「ああ。帰って来たらお嬢ちゃんたちのことがウワサになっていてびっくりしたよ」
そんなにウワサになってた? まあ、あれだけ人が来ていたら多少は人の耳にでも入るでしょうね。
「お母ちゃんたちが作った芋餅を売っているだけなんですけどね」
「その歳で商売するだけでも凄いことさ。誰に師事されたわけでもないのにな」
「ティナから読み書きを教えてもらいましたし、計算は得意なみたいで苦になりませんからね」
さすがに異質と思われないよう生きるのは難しい。だってわたしは前世の記憶を持っている。しかも、こことは違う世界で違う価値観のもと生きてきたんだからね。目立たず隠れて過ごせってほうが難しいわ。
だったら変わっていることを否定しない。肯定しながら真実を隠す。魔女狩りみたいなものがあったら嫌だからね。狩られないようにしながら自由に生きる。今生は絶対にハッピーエンドで終わらせるんだから!
「まあ、知らないことがたくさんあるからお嬢様の相手に選ばれるようがんばらないとですね」
学校も塾もない。なら、手っ取り早いのはお城で学ぶことでしょう。お嬢様の相手をすることでこの国のことがわかるなら目指すしかないじゃない。
「まだ挨拶に行ってないのか?」
「芋餅を売るので精一杯ですよ。芋餅はお母ちゃんたちが作ってくれますが、運ぶのはこれですから。馬車があればもっと多く運べるんですけどね」
ちょこちょこ押し車を改造して百五十人分まで積載量を増やしたけど、一人前三つ。それを百五十人分となると結構な重さになる。
ティナが力強いから押せるけど、押し車のほうが持たないわ。道もそんなよくないから衝撃がダイレクトに押し車に来るのよね。
「それなら人を雇うか?」
「雇うほどの儲けはありませんよ。芋餅を作るおばちゃんたちに報酬として銅貨五枚を払ってますから。材料費を考えたら一日の儲けは銅貨五十枚くらいですし」
芋餅は五個で銅貨一枚。豚骨スープは銅貨三枚。あと、小瓶に入れたお母ちゃん特製のマー油を銀貨十枚で売っているわ。
「それなら、持っていけない芋餅をおれに売ってくれないか? まあ、卸しだな」
卸し?
「卸しって、わたしが売って、ローダルさんが売るってことですか?」
「ああ、そうだ。おれも市場で売ろうと思ってな。お嬢ちゃんにとってもいいだろう? 作るだけで売る手間がなくなるんだからな」
委託販売みたいなものかな?
「そうですね。今は作るほうが多いですし、おばちゃんたちに払えるお給金も多くなる。いいかも知れませんね。ローダルさんが売ってくれるなら他のものも売ることできますからね」
いつまでも芋餅を売っていたら飽きられる。専門店でもないのだから他のものも売るほうがいいでしょうよ。
「ローダルさんのところで紙は売ってませんか? 帳簿を付けたいんです」
「帳簿の付け方なんて知っているのか?」
「売った数と受け取ったお金を書くだけですよ。徴税人が税を取りにくるって聞いたので」
売上の二割を税として収めるってレンラさんが言っていたわ。
「それ、お嬢ちゃんがやるのか?」
「しばらくはわたしがやって、いずれ誰かにやってもらいます。働きたい女性はいますからね」
出来ることなら代理店主も立てたいな。お母ちゃんには料理に集中して欲しいからね。
「へー。ちゃんと考えているんだな」
「はい。わたし、冒険者になって旅をしたいんです」
今は先立つものを稼ぐことに力を入れましょう。それに、体力も身に付けないとならないしね。十五歳なんてあっと言う間だわ。
「冒険者は危険だぞ」
「そうみたいですね。でも、わたしは冒険者になって旅をしてみたいんです。ねぇ、ティナ」
ティナも一緒に旅をしようと言ってくれた。十歳ながら狩りも出来るティナとなら危険を回避出来ると思うわ。
「うん」
短い返事だけど、ティナの意思を感じるくらいには仲良くなれたのよ。
「……そうか。まあ、二人なら冒険者になっても大成しそうだな」
「大成は望んでませんが、死なないようにがんばります。でも、その前に資金稼ぎですね。わたしたち、何も持ってませんからね」
「ふふ。将来が楽しみなお嬢ちゃんたちだ」
「楽しくなるような未来になるめに努力しますね」
もちろん、ローダルさんを楽しませるためでなく、わたしたちが楽しくなるために、ね。