「いいんじゃないか。やるといいさ」
お父ちゃんに話したらあっさり賛同を得られた。いいの!?
「男衆の間でも話しに上がっているよ。嫁さんが綺麗になって前より明るくなったってな。他の村にも話が伝わっているみたいだ。もっと来るようになるんじゃないか?」
「秋の収穫が始まるってのに、大丈夫なのかい?」
「構わんさ。今年はキャロが稼いでくれたからな。人を雇うとするよ」
余ったお金はすべてお母ちゃんに渡したし、まだマコモはある。収穫が始まるまで市場で稼げばいいから雇うお金には困らないでしょうよ。
「じゃあ、やってみるかね」
「ついでだから若い人を手伝いに雇えば? 若い女の人って仕事する場所がないんだからさ」
女の人は、十七、八歳で結婚するみたいだけど、手仕事で稼げるのは器用な人だけ。大体は家の手伝いをしていると、おばちゃん連中が言ってたわ。
「それもいいね。今は手伝いしてもらってタダにしているからね」
「それならお風呂作りを手伝ってもらおうかな。今のお風呂じゃ捌き切れないしさ」
今のお風呂は三人入るのが精々。せめて十人くらい入れないと捌き切れないわ。
「それなら職人に頼んだほうが早いだろう。この金なら手付け金くらいにはなるだろうからね」
「職人さんに頼めるならいいものが出来そうだね。じゃあ、わたしたちは市場で商売して稼いでくるよ」
「キャロ、お城に行く話をしないと」
「あ、そうだった。バイバナル商会の伝手で伯爵様のお嬢様と一緒に勉強しないかって誘われたんだけど、受けていいかな?」
ローダルさんのことを言ってもわからないだろうからバイバナル商会ってことにしておきましょう。
「バイバナル商会? お前、あんな大きな商会と何があったんだ?」
マコモのことから語り、取引札をもらったところまで話した。
「……伯爵様のお嬢様か……」
何やら眉をしかめるお父ちゃん。どうしたの?
「伯爵様のお嬢様には悪いウワサがあってな、何か悪いものに取り憑かれているって話だ。何度かお前みたいに声をかけられた者が城に行ったが、二度と出て来なかったそうだ。本当かどうかはわからんがな」
ファンタジーな世界じゃなくホラーな世界だったの? 何だかおもしろそう!
わたし、ホラーって好きなのよね。ただ悲しいことにわたしには霊感がなくて幽霊とか見たことないけどさ。
「呪われたお城なの?」
「いや、城は呪われてはないよ。そんなウワサが流れて来るだけだ。嫌なら断れよ。伯爵様はそこまで酷い方ではないからな」
「わたしは行きたいかな? ティナはどう?」
「ボクはどっちでも構わない。キャロが決めていいよ」
ティナは余り興味なさそうだけど、別に嫌ってこともなさそうだ。無口ながら嫌なら嫌っていうタイプだからね。
「わたしは行きたい。いい?」
「まあ、最近のお前は度胸があるし、頭が回るからな、好きにしたらいいさ」
「でも、無理するんじゃないよ。嫌ならすぐに帰って来るんだからね」
「わかったよ。今度、お城に行ってみて話を聞いて来るよ」
冬からって言ってたけど、その前に話を聞くのもいいでしょう。なんならバイバナル商会に取り次いでもらってもいいかもね。
夕食を食べたら服を買ったことをお母ちゃんに見せる。
「あー。なんか見たことがある服だね」
そうパターンがあるデザインではなく、似たり寄ったりの服ばかりだった。作る人が同じか、近い人同士で作ったかもしれないわね。
「これならお城にも着て行けると思うんだけど、どうかな?」
これならマシかな? と選んだ服を見せて判断してもらった。
「まあ、いいんじゃないかい。いきなり伯爵様に会うわけじゃないんだし、お嬢様の相手をするんならあっちで用意してくれるだろう。農民の子だってわかっているんだからね」
農民の子をお嬢様の相手にってのもどうかと思うけど、何か問題がありそうなお嬢様。もう農民の子でも構わないってことなんでしょうね。よくわかんないけど。
「針と糸も買ったから合わせてみるよ」
「あんたはほんと、器用だね。お母ちゃんの血も受け継いでんのかね?」
「お母ちゃんのお母ちゃんってこと?」
そう言えば、お母ちゃんのほうの家、全然聞いたことないわね?
「ああ。お母ちゃんはもう死んじまったけど、針仕事が得意な人だったよ」
この世界の寿命短そうね。早死にしたわたしが言うのもなんだけど。
「お母ちゃんに兄弟っていないの?」
「妹がいるけど、隣の領に嫁いで行ったよ」
なんだか二度と会えないような顔をするお母ちゃん。この時代では気軽に行ける距離じゃないみたいね……。
「わたしたちが冒険者になったら叔母さんの家に手紙を届けるよ」
「あんた、冒険者になりたいのかい?」
「冒険者ってより、いろんなところに行ってみたいの。見たこともない景色を見たり、美味しいものを食べたりしたいんだ」
そう言えば、冒険者になりたいとか言ったことなかったわね。
「冒険者なんて早死にするだけだよ」
「死なないように勉強して強くなるよ。健康な体に産んでもらえたんだもん、無駄に散らしたりしないわ」
ただ生きるためにがんばるしかなかった前世とは違い、生きるために全力をかけられる体を手に入れられたのだ、早々に死んでたまるもんですか。前世の倍、いえ、十倍は生きてやる。この命を満喫してやるんだから!
お父ちゃんに話したらあっさり賛同を得られた。いいの!?
「男衆の間でも話しに上がっているよ。嫁さんが綺麗になって前より明るくなったってな。他の村にも話が伝わっているみたいだ。もっと来るようになるんじゃないか?」
「秋の収穫が始まるってのに、大丈夫なのかい?」
「構わんさ。今年はキャロが稼いでくれたからな。人を雇うとするよ」
余ったお金はすべてお母ちゃんに渡したし、まだマコモはある。収穫が始まるまで市場で稼げばいいから雇うお金には困らないでしょうよ。
「じゃあ、やってみるかね」
「ついでだから若い人を手伝いに雇えば? 若い女の人って仕事する場所がないんだからさ」
女の人は、十七、八歳で結婚するみたいだけど、手仕事で稼げるのは器用な人だけ。大体は家の手伝いをしていると、おばちゃん連中が言ってたわ。
「それもいいね。今は手伝いしてもらってタダにしているからね」
「それならお風呂作りを手伝ってもらおうかな。今のお風呂じゃ捌き切れないしさ」
今のお風呂は三人入るのが精々。せめて十人くらい入れないと捌き切れないわ。
「それなら職人に頼んだほうが早いだろう。この金なら手付け金くらいにはなるだろうからね」
「職人さんに頼めるならいいものが出来そうだね。じゃあ、わたしたちは市場で商売して稼いでくるよ」
「キャロ、お城に行く話をしないと」
「あ、そうだった。バイバナル商会の伝手で伯爵様のお嬢様と一緒に勉強しないかって誘われたんだけど、受けていいかな?」
ローダルさんのことを言ってもわからないだろうからバイバナル商会ってことにしておきましょう。
「バイバナル商会? お前、あんな大きな商会と何があったんだ?」
マコモのことから語り、取引札をもらったところまで話した。
「……伯爵様のお嬢様か……」
何やら眉をしかめるお父ちゃん。どうしたの?
「伯爵様のお嬢様には悪いウワサがあってな、何か悪いものに取り憑かれているって話だ。何度かお前みたいに声をかけられた者が城に行ったが、二度と出て来なかったそうだ。本当かどうかはわからんがな」
ファンタジーな世界じゃなくホラーな世界だったの? 何だかおもしろそう!
わたし、ホラーって好きなのよね。ただ悲しいことにわたしには霊感がなくて幽霊とか見たことないけどさ。
「呪われたお城なの?」
「いや、城は呪われてはないよ。そんなウワサが流れて来るだけだ。嫌なら断れよ。伯爵様はそこまで酷い方ではないからな」
「わたしは行きたいかな? ティナはどう?」
「ボクはどっちでも構わない。キャロが決めていいよ」
ティナは余り興味なさそうだけど、別に嫌ってこともなさそうだ。無口ながら嫌なら嫌っていうタイプだからね。
「わたしは行きたい。いい?」
「まあ、最近のお前は度胸があるし、頭が回るからな、好きにしたらいいさ」
「でも、無理するんじゃないよ。嫌ならすぐに帰って来るんだからね」
「わかったよ。今度、お城に行ってみて話を聞いて来るよ」
冬からって言ってたけど、その前に話を聞くのもいいでしょう。なんならバイバナル商会に取り次いでもらってもいいかもね。
夕食を食べたら服を買ったことをお母ちゃんに見せる。
「あー。なんか見たことがある服だね」
そうパターンがあるデザインではなく、似たり寄ったりの服ばかりだった。作る人が同じか、近い人同士で作ったかもしれないわね。
「これならお城にも着て行けると思うんだけど、どうかな?」
これならマシかな? と選んだ服を見せて判断してもらった。
「まあ、いいんじゃないかい。いきなり伯爵様に会うわけじゃないんだし、お嬢様の相手をするんならあっちで用意してくれるだろう。農民の子だってわかっているんだからね」
農民の子をお嬢様の相手にってのもどうかと思うけど、何か問題がありそうなお嬢様。もう農民の子でも構わないってことなんでしょうね。よくわかんないけど。
「針と糸も買ったから合わせてみるよ」
「あんたはほんと、器用だね。お母ちゃんの血も受け継いでんのかね?」
「お母ちゃんのお母ちゃんってこと?」
そう言えば、お母ちゃんのほうの家、全然聞いたことないわね?
「ああ。お母ちゃんはもう死んじまったけど、針仕事が得意な人だったよ」
この世界の寿命短そうね。早死にしたわたしが言うのもなんだけど。
「お母ちゃんに兄弟っていないの?」
「妹がいるけど、隣の領に嫁いで行ったよ」
なんだか二度と会えないような顔をするお母ちゃん。この時代では気軽に行ける距離じゃないみたいね……。
「わたしたちが冒険者になったら叔母さんの家に手紙を届けるよ」
「あんた、冒険者になりたいのかい?」
「冒険者ってより、いろんなところに行ってみたいの。見たこともない景色を見たり、美味しいものを食べたりしたいんだ」
そう言えば、冒険者になりたいとか言ったことなかったわね。
「冒険者なんて早死にするだけだよ」
「死なないように勉強して強くなるよ。健康な体に産んでもらえたんだもん、無駄に散らしたりしないわ」
ただ生きるためにがんばるしかなかった前世とは違い、生きるために全力をかけられる体を手に入れられたのだ、早々に死んでたまるもんですか。前世の倍、いえ、十倍は生きてやる。この命を満喫してやるんだから!