次の日、マーチック広場にくると、入り口の前にローダルさんが馬車の御者台に座っていた。
「おはようございます!」
「お、来たか。おれが世話になっている店に行くとしよう。荷台に乗りな」
ってことで荷台に乗り込んだ。
知らない人について行っちゃダメと教育されたけど、ティナがいるので問題ナッシング。わたしは迅速に逃げさせてもらいます。
ローダルさんが世話になっているお店はなかなか立派なお店で、いろんな人が出入りしていた。
「ここはバイバナル商会って言って、王都に店を構える大商会だ」
王都がどんなもので、どれほど離れているかわからないけど、この店構えからしてかなり大きな商会ってのはわかった。
馬車は大きな門を潜り、五十メートルほど進むと、広場に出た。
「市場みたいですね」
「まあ、そのようなものだな。行商人がバイバナル商会で取り扱っている品を買ったり、行商人がバイバナル商会に売ったりする場所だ」
そんなところになぜわたしたちを連れてきたのかしら? ここでないと売買が出来ないってことなの?
ここの人なのか、ローダルさんが声を掛けると、なにか札を渡された。
「場所を借りる札さ。これがないとここを使えないのさ」
「お金が掛かるんじゃないですか? 場所代みたいな」
「もちろん掛かるが、バイバナル商会の保証札があれば品に信頼が生まれる。その分、下手な品を扱えば干されるがな」
そんなところにわたしたちみたいな子供を連れてきていいの? それともローダルさんにそれだけの信頼があるってことかしら?
屋根のある一角に馬車をとめ、商会の人が馬を外してどこに連れていき、荷台は四人掛かりでバックで屋根の下に入れた。
……随分と至れり尽くせりなのね……?
「ローダルさんって偉い人なんですか?」
「何でそう思うんだ?」
「誰もローダルさんに声を掛けないし、ローダルさんの邪魔しないよう動いていたので」
まるでお側使いが動いているようだったわ。
「なかなか観察眼がいいんだな。実は、とある大商会の跡取り息子なのさ」
直感的に違うとわかった。商人らしからぬ態度だもの。
「……お貴族様なんですか……?」
この世界の貴族がどんなものかわからないので、お貴族様と言っておいた。
「本当に凄いな。どこでわかった?」
マジか! この国の貴族は自由に出歩いたりするの?
「ほぼ直感です」
細かいことを上げればいろいろあるけど、考察する前に答えが出ちゃった感じだ。
「……そうか。だが、今は流れの行商人。そう思って欲しい。おれが何であれ行商人として生きているからな」
きっと、こういうのを触らぬ神に祟りなしって言うのね。
「わかりました。そう思って付き合わせてもらいます」
「フフ。本当に賢い嬢ちゃんだ。んじゃ、商売といこうか。マコモを売ってくれ」
ティナが背負っている籠を地面に置いてもらった。
「こちらとしてはマコモは貴重ということしか知りません。相場も知りません。幾らで買ってもらえますか?」
正直、金貨二枚で売れるとは思わないし、買ってくれるとも思わない。一つ銅貨五枚として百個近いから五百枚。銀貨だとどうなるかわからないわ。
「銀貨二十枚と言ったところだな」
五百を二十で割ると二十五か。中途半端だから銅貨二十枚で銀貨一枚って見ておくのがいいでしょうね。
「わかりました。それで売ります。ただ、金貨だと使い難いので銀貨十枚分は銅貨でいただけますか?」
「嬢ちゃんは計算も出来るんだな」
その計算は数字の計算ではなく、損得を考えての計算でしょうね。
「後ろ盾がないわたしたちですからね。自分の身を守るためにもローダルさんが儲けてください。金貨をもらっても使いどころもありませんから」
きっと安く叩かれているんでしょう。けど、それはわたしたちのためでもあるんじゃないかしら? まあ、銀貨二十枚でもとんでもない金額なんでしょうけど。
「そこまで考えられるか。想像以上に賢いことだ」
「賢いと言うより世間知らずなだけですよ」
それを補えるのは商売相手がどんな人かを見極めること。甘い言葉を言ったり騙したりしないかを、ね。
「表面的なことしか見えませんが、ローダルさんはそう悪い人には見えません。信頼や信用を大切にするんだと思います」
目的のためなら、って但し書きが続きそうだけど。
「フフ。なかなか厳しい商売相手のようだ」
「信頼には信頼を。信用には信用を。それが商売で大切なことだと思っているだけですよ」
ウソをつく商人は三流だ。騙す商人は二流だ。信頼出来る商人は一流だ。信用出来る商人は超一流だ。って、前世で読んだラノベに書いてあったわ。
「おれもそう思っているよ。嬢ちゃんとはいい商売が出来そうだ」
「そう出来るよう努力させてもらいます」
籠をつかみ、ローダルさんの前に置いた。
「マコモは濡れた葉の中に入れて、陽に当たらないようにすれば二十日くらいは新鮮さを保てますよ」
「そうか。では、代金を持ってくる。少し待っててくれ」
「はい。あ、ここを見て回っても構いませんか? どんなものがあるか知りたいので」
「邪魔にならないようにするなら問題ないよ」
「ありがとうございます。邪魔にならないよう約束します」
一礼し、ティナの手を取って走り出した。
「おはようございます!」
「お、来たか。おれが世話になっている店に行くとしよう。荷台に乗りな」
ってことで荷台に乗り込んだ。
知らない人について行っちゃダメと教育されたけど、ティナがいるので問題ナッシング。わたしは迅速に逃げさせてもらいます。
ローダルさんが世話になっているお店はなかなか立派なお店で、いろんな人が出入りしていた。
「ここはバイバナル商会って言って、王都に店を構える大商会だ」
王都がどんなもので、どれほど離れているかわからないけど、この店構えからしてかなり大きな商会ってのはわかった。
馬車は大きな門を潜り、五十メートルほど進むと、広場に出た。
「市場みたいですね」
「まあ、そのようなものだな。行商人がバイバナル商会で取り扱っている品を買ったり、行商人がバイバナル商会に売ったりする場所だ」
そんなところになぜわたしたちを連れてきたのかしら? ここでないと売買が出来ないってことなの?
ここの人なのか、ローダルさんが声を掛けると、なにか札を渡された。
「場所を借りる札さ。これがないとここを使えないのさ」
「お金が掛かるんじゃないですか? 場所代みたいな」
「もちろん掛かるが、バイバナル商会の保証札があれば品に信頼が生まれる。その分、下手な品を扱えば干されるがな」
そんなところにわたしたちみたいな子供を連れてきていいの? それともローダルさんにそれだけの信頼があるってことかしら?
屋根のある一角に馬車をとめ、商会の人が馬を外してどこに連れていき、荷台は四人掛かりでバックで屋根の下に入れた。
……随分と至れり尽くせりなのね……?
「ローダルさんって偉い人なんですか?」
「何でそう思うんだ?」
「誰もローダルさんに声を掛けないし、ローダルさんの邪魔しないよう動いていたので」
まるでお側使いが動いているようだったわ。
「なかなか観察眼がいいんだな。実は、とある大商会の跡取り息子なのさ」
直感的に違うとわかった。商人らしからぬ態度だもの。
「……お貴族様なんですか……?」
この世界の貴族がどんなものかわからないので、お貴族様と言っておいた。
「本当に凄いな。どこでわかった?」
マジか! この国の貴族は自由に出歩いたりするの?
「ほぼ直感です」
細かいことを上げればいろいろあるけど、考察する前に答えが出ちゃった感じだ。
「……そうか。だが、今は流れの行商人。そう思って欲しい。おれが何であれ行商人として生きているからな」
きっと、こういうのを触らぬ神に祟りなしって言うのね。
「わかりました。そう思って付き合わせてもらいます」
「フフ。本当に賢い嬢ちゃんだ。んじゃ、商売といこうか。マコモを売ってくれ」
ティナが背負っている籠を地面に置いてもらった。
「こちらとしてはマコモは貴重ということしか知りません。相場も知りません。幾らで買ってもらえますか?」
正直、金貨二枚で売れるとは思わないし、買ってくれるとも思わない。一つ銅貨五枚として百個近いから五百枚。銀貨だとどうなるかわからないわ。
「銀貨二十枚と言ったところだな」
五百を二十で割ると二十五か。中途半端だから銅貨二十枚で銀貨一枚って見ておくのがいいでしょうね。
「わかりました。それで売ります。ただ、金貨だと使い難いので銀貨十枚分は銅貨でいただけますか?」
「嬢ちゃんは計算も出来るんだな」
その計算は数字の計算ではなく、損得を考えての計算でしょうね。
「後ろ盾がないわたしたちですからね。自分の身を守るためにもローダルさんが儲けてください。金貨をもらっても使いどころもありませんから」
きっと安く叩かれているんでしょう。けど、それはわたしたちのためでもあるんじゃないかしら? まあ、銀貨二十枚でもとんでもない金額なんでしょうけど。
「そこまで考えられるか。想像以上に賢いことだ」
「賢いと言うより世間知らずなだけですよ」
それを補えるのは商売相手がどんな人かを見極めること。甘い言葉を言ったり騙したりしないかを、ね。
「表面的なことしか見えませんが、ローダルさんはそう悪い人には見えません。信頼や信用を大切にするんだと思います」
目的のためなら、って但し書きが続きそうだけど。
「フフ。なかなか厳しい商売相手のようだ」
「信頼には信頼を。信用には信用を。それが商売で大切なことだと思っているだけですよ」
ウソをつく商人は三流だ。騙す商人は二流だ。信頼出来る商人は一流だ。信用出来る商人は超一流だ。って、前世で読んだラノベに書いてあったわ。
「おれもそう思っているよ。嬢ちゃんとはいい商売が出来そうだ」
「そう出来るよう努力させてもらいます」
籠をつかみ、ローダルさんの前に置いた。
「マコモは濡れた葉の中に入れて、陽に当たらないようにすれば二十日くらいは新鮮さを保てますよ」
「そうか。では、代金を持ってくる。少し待っててくれ」
「はい。あ、ここを見て回っても構いませんか? どんなものがあるか知りたいので」
「邪魔にならないようにするなら問題ないよ」
「ありがとうございます。邪魔にならないよう約束します」
一礼し、ティナの手を取って走り出した。