つい美味しくて十個も食べてしまった。うぷっ。
「これじゃ動くまで時間がかかりそうだわ」
野宿するのはいいけど、これからだと大して採ることもできないうちに野宿の準備になっちゃうでしょうよ。
「マコモをたくさん採れたし、ポロプはいいんじゃない? どうしてもってんならマコモを売って買えばいい」
「買ってくれる人、いるかな?」
この辺で食べないなら買ってくれないんじゃないの?
「他所から来る行商人なら買ってくれるんじゃない? 地回りの行商人じゃなければマコモのことは知っているはず」
なるほど。自分たちで採るだけが入手方法じゃないか。ポロプを採りに来た人たちだって労力以上のお金を払えば売ってくれるでしょうよ。自給自足なんて出来ないんだからね。
「今から帰れば夕市に間に合うと思う」
夕市か。わたしはまだ行ったことないけど、マーチック広場で夕方から始める市を夕市と呼ぶってお母ちゃんが言ってたっけ。
「じゃあ、そうしようか。もしかしたら帰る馬車があるかもしれないしね」
来たときに乗せてもらったおじさんが言っていたっけ。
野宿する広場に戻ると、運がいいことに帰る馬車があったので、お昼に食べようと思ったお弁当と交換で乗せてもらえるよう交渉した。
「構わないよ。忙しくて食べる暇がなかったから大助かりだ」
なんでも夕市に出すために買い付けにきたおじさんのようで、マーチック広場まで乗せてってもらえた。
おじさんはお弁当に喜んでくれ、機嫌がよくなってか、馬車のことを訊いていたら扱いを教えてくれた。
馬は慣れているようで、わたしが手綱を握っても暴れることもなく、わたしの言うことを聞いてくれた。
「上手いじゃないか。嬢ちゃん才能あるぞ」
なんてお世辞でもなんか嬉しいものね。鼻歌を歌いながらマーチック広場まで操らせてもらった。
「ご苦労様。ありがとね」
馬の顔を撫でてやると、ぶるると鼻を鳴らして頭を擦り付けてきた。可愛いじゃないの。
「おじさん、ありがとね」
「ああ。行商人を捜しているならあそこに行ってみるといい。今なら酒でも飲んでいると思うぞ」
時刻はたぶん夕方の四時くらい。まだ明るいけど、あと一時間もすれば暗くなるでしょうね。そのせいか、今がピークって感じだ。
どんなものを売っているか見たいけど、今はマコモを売るのを優先するとしましょうか。
行商人がいるという場所は屋台で、農民とも村人と思えない服装の男の人たちがお酒らしきものを飲んでいた。
「誰に声をかける?」
ティナにそう問われて言葉に詰まらせてしまった。誰にしようか?
なんだか気持ちよく飲んでいるところに声を掛けるってのも気が引けるし、誰が買ってくれるかもわからない。人のよさそうなのは誰だ?
「キャロ。マコモを焼けば人が集まってくるんじゃない?」
「おー! 確かに。匂いで誘っちゃいましょうか」
そうと決まれば竈のあるところで火を焚き、マコモを串に刺して焼いた。
たくさん食べたから食欲は湧いてこないけど、やっぱりいい匂いをさせるキノコよね。なぜ食べられなかったか不思議でたまらないわ。
そんな匂いに釣られてか、若いお兄さんがやって来た。
「いらっしゃいませ。お一ついかがですか? 銅貨二枚でいいですよ」
「なら、一つもらおうか」
躊躇いなく頼んだってことは、このお兄さん、マコモを知っていると見た。
「ありがとうございます! ここの人はマコモを知らないみたいだから嬉しいです」
こちらはマコモの価値を知っているぞって臭わせた。
「へー。マコモを知っててこの値段かい」
「知らない人に高値をつけても仕方がありませんからね。知ってもらうための宣伝ですよ」
「君は賢いんだな」
おっと。確かに九歳の女の子が言うことじゃなかったわね。
「エヘヘ。そうかなぁ~」
ここは照れておこう。謙虚に出るのはさらに墓穴を掘りそうだからね。
「はい、どうぞ」
お兄さんから銅貨二枚を受け取り、いい具合に焼けたマコモを渡した。
「あー美味い。久しぶりに食ったよ」
知っているのに久しぶりってことは高くて食べられなかったってことかな?
「もう一つくれ。いや、五つくれ」
「はい、ありがとうございます」
マコモはまだ焼いているので、焼けた順に渡していった。
お兄さんが食べる姿と匂いに釣られてか、他の人も集まって来てしまった。
わたしは焼くのを担当し、ティアにはお会計をお願いした。
次から次へと集まってくるお客さんを捌き、背負い籠に入れた分がすべて売れてしまった。これならマコモの美味しさが知れ渡ることでしょうよ。
「嬢ちゃん。マコモはまだあるのかい?」
他の人たちがいなくなると、お兄さんがそんなことを尋ねてきた。あ、行商人に売るのが目的だったんだっけ!
「はい、まだあります。欲しいなら明日持ってきますよ」
このお兄さんなら買ってくれそうなので正直に答えた。どのくらいあるかは秘密だけど♥
「では、お願いするよ。おれはローダル。流れの行商人だ」
「わたしは、キャロルです。こっちはティアです」
これから何かとお世話になるローダルさんとの出会いだった。
「これじゃ動くまで時間がかかりそうだわ」
野宿するのはいいけど、これからだと大して採ることもできないうちに野宿の準備になっちゃうでしょうよ。
「マコモをたくさん採れたし、ポロプはいいんじゃない? どうしてもってんならマコモを売って買えばいい」
「買ってくれる人、いるかな?」
この辺で食べないなら買ってくれないんじゃないの?
「他所から来る行商人なら買ってくれるんじゃない? 地回りの行商人じゃなければマコモのことは知っているはず」
なるほど。自分たちで採るだけが入手方法じゃないか。ポロプを採りに来た人たちだって労力以上のお金を払えば売ってくれるでしょうよ。自給自足なんて出来ないんだからね。
「今から帰れば夕市に間に合うと思う」
夕市か。わたしはまだ行ったことないけど、マーチック広場で夕方から始める市を夕市と呼ぶってお母ちゃんが言ってたっけ。
「じゃあ、そうしようか。もしかしたら帰る馬車があるかもしれないしね」
来たときに乗せてもらったおじさんが言っていたっけ。
野宿する広場に戻ると、運がいいことに帰る馬車があったので、お昼に食べようと思ったお弁当と交換で乗せてもらえるよう交渉した。
「構わないよ。忙しくて食べる暇がなかったから大助かりだ」
なんでも夕市に出すために買い付けにきたおじさんのようで、マーチック広場まで乗せてってもらえた。
おじさんはお弁当に喜んでくれ、機嫌がよくなってか、馬車のことを訊いていたら扱いを教えてくれた。
馬は慣れているようで、わたしが手綱を握っても暴れることもなく、わたしの言うことを聞いてくれた。
「上手いじゃないか。嬢ちゃん才能あるぞ」
なんてお世辞でもなんか嬉しいものね。鼻歌を歌いながらマーチック広場まで操らせてもらった。
「ご苦労様。ありがとね」
馬の顔を撫でてやると、ぶるると鼻を鳴らして頭を擦り付けてきた。可愛いじゃないの。
「おじさん、ありがとね」
「ああ。行商人を捜しているならあそこに行ってみるといい。今なら酒でも飲んでいると思うぞ」
時刻はたぶん夕方の四時くらい。まだ明るいけど、あと一時間もすれば暗くなるでしょうね。そのせいか、今がピークって感じだ。
どんなものを売っているか見たいけど、今はマコモを売るのを優先するとしましょうか。
行商人がいるという場所は屋台で、農民とも村人と思えない服装の男の人たちがお酒らしきものを飲んでいた。
「誰に声をかける?」
ティナにそう問われて言葉に詰まらせてしまった。誰にしようか?
なんだか気持ちよく飲んでいるところに声を掛けるってのも気が引けるし、誰が買ってくれるかもわからない。人のよさそうなのは誰だ?
「キャロ。マコモを焼けば人が集まってくるんじゃない?」
「おー! 確かに。匂いで誘っちゃいましょうか」
そうと決まれば竈のあるところで火を焚き、マコモを串に刺して焼いた。
たくさん食べたから食欲は湧いてこないけど、やっぱりいい匂いをさせるキノコよね。なぜ食べられなかったか不思議でたまらないわ。
そんな匂いに釣られてか、若いお兄さんがやって来た。
「いらっしゃいませ。お一ついかがですか? 銅貨二枚でいいですよ」
「なら、一つもらおうか」
躊躇いなく頼んだってことは、このお兄さん、マコモを知っていると見た。
「ありがとうございます! ここの人はマコモを知らないみたいだから嬉しいです」
こちらはマコモの価値を知っているぞって臭わせた。
「へー。マコモを知っててこの値段かい」
「知らない人に高値をつけても仕方がありませんからね。知ってもらうための宣伝ですよ」
「君は賢いんだな」
おっと。確かに九歳の女の子が言うことじゃなかったわね。
「エヘヘ。そうかなぁ~」
ここは照れておこう。謙虚に出るのはさらに墓穴を掘りそうだからね。
「はい、どうぞ」
お兄さんから銅貨二枚を受け取り、いい具合に焼けたマコモを渡した。
「あー美味い。久しぶりに食ったよ」
知っているのに久しぶりってことは高くて食べられなかったってことかな?
「もう一つくれ。いや、五つくれ」
「はい、ありがとうございます」
マコモはまだ焼いているので、焼けた順に渡していった。
お兄さんが食べる姿と匂いに釣られてか、他の人も集まって来てしまった。
わたしは焼くのを担当し、ティアにはお会計をお願いした。
次から次へと集まってくるお客さんを捌き、背負い籠に入れた分がすべて売れてしまった。これならマコモの美味しさが知れ渡ることでしょうよ。
「嬢ちゃん。マコモはまだあるのかい?」
他の人たちがいなくなると、お兄さんがそんなことを尋ねてきた。あ、行商人に売るのが目的だったんだっけ!
「はい、まだあります。欲しいなら明日持ってきますよ」
このお兄さんなら買ってくれそうなので正直に答えた。どのくらいあるかは秘密だけど♥
「では、お願いするよ。おれはローダル。流れの行商人だ」
「わたしは、キャロルです。こっちはティアです」
これから何かとお世話になるローダルさんとの出会いだった。