「何やってんだい?」
そろそろ上がろうかと思っていたら、お母ちゃんがやってきた。
「お風呂だよ」
「貴族みたいなこと言い出したと思ったら、本当に作っちまったのかい?!」
もう五日くらい作業してたのに、見てなかったの? いや、水瓶を三つに増やしたから井戸のほうに来る必要はなかったっけね。
「お母ちゃんも入る? 気持ちいいよ」
お風呂文化がないから入らないかな? と思ったけど、お母ちゃんはノリノリ。服を脱ぎ出した。
「あ、入る前に体を洗ってよ」
わたしたちは充分入ったので、お母ちゃんの背中と髪を洗ってあげ、湯に入ってもらった。
「気持ちいいねぇ~」
全然抵抗がないわね。お湯に入り慣れてないと抵抗感があるとかテレビで観たときがあるんだけどな~?
わたしたちは布で体を拭き、服を着る。涼む椅子が欲しいところよね。
「何してんだ?」
と、次はお父ちゃんがやってきた。そろそろ収穫期だから遅くまで畑仕事をしているのよね。何しているかは知らないけど。
「キャロが風呂を作ったんだよ。ガロスも入りなよ」
なんだろう。両親が一緒にお風呂に入るって、なんか微妙な気持ちになるわね。あや、中睦まじくていいんでしょうけど、ちょっと見ていられないわ。
「二人でゆっくり入りなよ。夕食はわたしたちで用意するからさ」
ティナの手を引いてお風呂の前から立ち去った。
それからのことはあえて語ることはしません。ただ、うちではよくお風呂に入るようになり、おばちゃんネットワークで入りにくる人が増えてしまった。
「薪が追い付かないわ」
一日八人から十三人が入りに来るので薪の消費がハンパない。蜂蜜採りに行けないじゃないのよ。
ティナと二人、木を伐っていい場所に来ているけど、家から約三キロも離れ、一日分の量しか運べない。そのせいで明るいうちの大半を使うことになっているのよ。
「馬とか欲しいね」
「そうだね」
ティナの言葉に答えたものの、馬は高い。あんちゃんも小さい頃からお金を貯めて、死にそうな子馬うのが精一杯だった。
何とか世話をして育ってたけど、エサ代を稼ぐのも大変だった記憶があるわ。
「こういうときこそアイテムボックスの出番なのにな~」
ゲームのようなものじゃなくてもこの鞄がアイテムバッグになって……え? 木が入っちゃったわよ!?
ヤケクソ気味に五十センチくらいの木を入れたら鞄の中に入ってしまった。
いやこれ、納屋に放置してあった鞄だよ? うちの家宝でもなければじいちゃんが使っていた鞄だよ? なんの仕掛けもなかったものだよ? 何がなんだっていうの? 小人が気紛れで魔法の鞄にしちゃったの?
もう一本入れてみたらすんなり入ってしまった。
「……マジか……」
鞄に手を突っ込んでみたら木を出すことが出来た。
「……マジか……」
何がなんだかわからないけれど、この鞄はアイテムバッグ化している。それは事実。なら、まずはこの鞄の容量と性能を調べる必要があるわね。
伐った木を入れていくけど、伐った木をすべて入れてしまって確認しようがなかった。
「キャロル、どうしたの?」
どうしたものかと考えていたら木を伐っていたティナがやってきた。
「それ、キャロルの魔法じゃない?」
これこれしかじかと説明すると、 ティナがそんなことを言った。わたしの魔法?
「魔法には固有魔法ってのがあって、たまにそれを使える者がいるらしい。かあ様も聖魔法が使える人で、どんな怪我や病気を治せた。でも、固有魔法は自分にかけることはできないみたいで、病気で死んじゃったんだ」
固有魔法なんてものがあったんだ。
「魔法も万能じゃないんだね」
「うん。だからとお様は病気にならないよう体を鍛えておけって、いつも言ってた」
鍛えた結果がこの健康優良児体を生んだのか。もう健康魔法って固有魔法を持ってるんじゃないの?
「わたしの固有魔法って何かな?」
「わからない。固有魔法はいろいろあるから。冒険者ギルドで鑑定してもらうといいんじゃないかな?」
鑑定とかもあるんだ。なら、魔力を測る謎水晶とかあるのかな? わたしが触ったら爆発しちゃうとか? いや、ないか。魔力がわかるティナが驚いていないんだからね。
「とにかく、この鞄にたくさんものが入れるようになったわ。たくさん木を入れるとしましょう」
まずは木を集めることに集中しよう。お風呂にくべる薪はいくらあっても困らないし、麦の収穫が始まる前に蜂蜜を採りに行きたい。ポロプも早くしないと落ちちゃうって言うしね。
ティナががんばって木を伐り、わたしが木を集めて鞄に詰めた。
「どんだけ容量があるのよ?」
もう帰らないと暗くなるまで木を詰め込んだのに、いっぱいになる様子がない。チートか? わたしの固有魔法はチートなのか? わたしツエェェッが始まっちゃうの?
「キャロル。そろそろ帰らないと暗くなる。鞄のことは帰ってから考えよう」
「それもそうね」
まだわたしの力かどうかもはっきりしてないし、固有魔法が何なのかもわかっていない。今は暗くなる前に帰ることを優先しましょう。ここは山の中。獣が出たらわたしたちに勝てる手段はない。明るいうちにさっさと帰るとしましょうかね。
そろそろ上がろうかと思っていたら、お母ちゃんがやってきた。
「お風呂だよ」
「貴族みたいなこと言い出したと思ったら、本当に作っちまったのかい?!」
もう五日くらい作業してたのに、見てなかったの? いや、水瓶を三つに増やしたから井戸のほうに来る必要はなかったっけね。
「お母ちゃんも入る? 気持ちいいよ」
お風呂文化がないから入らないかな? と思ったけど、お母ちゃんはノリノリ。服を脱ぎ出した。
「あ、入る前に体を洗ってよ」
わたしたちは充分入ったので、お母ちゃんの背中と髪を洗ってあげ、湯に入ってもらった。
「気持ちいいねぇ~」
全然抵抗がないわね。お湯に入り慣れてないと抵抗感があるとかテレビで観たときがあるんだけどな~?
わたしたちは布で体を拭き、服を着る。涼む椅子が欲しいところよね。
「何してんだ?」
と、次はお父ちゃんがやってきた。そろそろ収穫期だから遅くまで畑仕事をしているのよね。何しているかは知らないけど。
「キャロが風呂を作ったんだよ。ガロスも入りなよ」
なんだろう。両親が一緒にお風呂に入るって、なんか微妙な気持ちになるわね。あや、中睦まじくていいんでしょうけど、ちょっと見ていられないわ。
「二人でゆっくり入りなよ。夕食はわたしたちで用意するからさ」
ティナの手を引いてお風呂の前から立ち去った。
それからのことはあえて語ることはしません。ただ、うちではよくお風呂に入るようになり、おばちゃんネットワークで入りにくる人が増えてしまった。
「薪が追い付かないわ」
一日八人から十三人が入りに来るので薪の消費がハンパない。蜂蜜採りに行けないじゃないのよ。
ティナと二人、木を伐っていい場所に来ているけど、家から約三キロも離れ、一日分の量しか運べない。そのせいで明るいうちの大半を使うことになっているのよ。
「馬とか欲しいね」
「そうだね」
ティナの言葉に答えたものの、馬は高い。あんちゃんも小さい頃からお金を貯めて、死にそうな子馬うのが精一杯だった。
何とか世話をして育ってたけど、エサ代を稼ぐのも大変だった記憶があるわ。
「こういうときこそアイテムボックスの出番なのにな~」
ゲームのようなものじゃなくてもこの鞄がアイテムバッグになって……え? 木が入っちゃったわよ!?
ヤケクソ気味に五十センチくらいの木を入れたら鞄の中に入ってしまった。
いやこれ、納屋に放置してあった鞄だよ? うちの家宝でもなければじいちゃんが使っていた鞄だよ? なんの仕掛けもなかったものだよ? 何がなんだっていうの? 小人が気紛れで魔法の鞄にしちゃったの?
もう一本入れてみたらすんなり入ってしまった。
「……マジか……」
鞄に手を突っ込んでみたら木を出すことが出来た。
「……マジか……」
何がなんだかわからないけれど、この鞄はアイテムバッグ化している。それは事実。なら、まずはこの鞄の容量と性能を調べる必要があるわね。
伐った木を入れていくけど、伐った木をすべて入れてしまって確認しようがなかった。
「キャロル、どうしたの?」
どうしたものかと考えていたら木を伐っていたティナがやってきた。
「それ、キャロルの魔法じゃない?」
これこれしかじかと説明すると、 ティナがそんなことを言った。わたしの魔法?
「魔法には固有魔法ってのがあって、たまにそれを使える者がいるらしい。かあ様も聖魔法が使える人で、どんな怪我や病気を治せた。でも、固有魔法は自分にかけることはできないみたいで、病気で死んじゃったんだ」
固有魔法なんてものがあったんだ。
「魔法も万能じゃないんだね」
「うん。だからとお様は病気にならないよう体を鍛えておけって、いつも言ってた」
鍛えた結果がこの健康優良児体を生んだのか。もう健康魔法って固有魔法を持ってるんじゃないの?
「わたしの固有魔法って何かな?」
「わからない。固有魔法はいろいろあるから。冒険者ギルドで鑑定してもらうといいんじゃないかな?」
鑑定とかもあるんだ。なら、魔力を測る謎水晶とかあるのかな? わたしが触ったら爆発しちゃうとか? いや、ないか。魔力がわかるティナが驚いていないんだからね。
「とにかく、この鞄にたくさんものが入れるようになったわ。たくさん木を入れるとしましょう」
まずは木を集めることに集中しよう。お風呂にくべる薪はいくらあっても困らないし、麦の収穫が始まる前に蜂蜜を採りに行きたい。ポロプも早くしないと落ちちゃうって言うしね。
ティナががんばって木を伐り、わたしが木を集めて鞄に詰めた。
「どんだけ容量があるのよ?」
もう帰らないと暗くなるまで木を詰め込んだのに、いっぱいになる様子がない。チートか? わたしの固有魔法はチートなのか? わたしツエェェッが始まっちゃうの?
「キャロル。そろそろ帰らないと暗くなる。鞄のことは帰ってから考えよう」
「それもそうね」
まだわたしの力かどうかもはっきりしてないし、固有魔法が何なのかもわかっていない。今は暗くなる前に帰ることを優先しましょう。ここは山の中。獣が出たらわたしたちに勝てる手段はない。明るいうちにさっさと帰るとしましょうかね。