よかった。ゾウさんとこんにちは! とはならなかったわ。
「ティナって何歳なの?」
「十一歳。冬の終わりに産まれたって聞いてる」
わたしは春生まれで十歳。一歳年上だったんだ。見た目は同じくらいなのに。栄養が足りてないのかしら。胸もぺったんこだし。
服はわたしの替えを着てもらい、着ていた服は石鹸水に一晩浸けておくとする。
あんちゃんが帰ってきて行商人の弟子となったお祝いと、お別れ会を行った。
涙の別れ、とはならず、いつもより多い夕食を食べた程度のもの。喜びも悲しみもあったものじゃない。お父ちゃんもお母ちゃんもそれでいいの?
「おれも家業を継がず、ローザと一緒になってこの村に来たからな。お前たちもやりたいことがあるなら好きにしていいんだからな」
長男は家を継ぐもの。女は嫁に行くもの。そんなのはうちにないようだ。
「わたし、旅してみたいかな?」
「旅? 冒険者になりたいのか? 冒険者は危険だと聞くぞ」
「危険なことはしないわ。ただ、いろんなところを見て回りたいだけだよ」
こうして健康な体に生まれ変わったのだ、前世の分もしっかり生きて、世界を見て回りたいわ。
「まあ、キャロがしたいなら止めはしないが、冒険者にはなっていたほうがいいぞ。札を持っていると他の町に入っても面倒がすくないって言うしな」
「ああ。冒険者になれば身分証にもなるし、ギルドから仕事も受けられる。なっていて損はないぞ。おれも旦那から冒険者になっておけって言われたからな」
行商人でも冒険者になっていたほうがいいんだ。
「それと、ちゃんと強くなっておけよ。女は襲われやすいからな」
そっか。法律があった世界でも襲われるんだから、こんな法律があるんだかわからない時代では強くなっておかないとダメよね。自分の身は自分で守れだ。
あんちゃんから冒険者のことを聞き、夕食が終わればベッドに入った。
一人一部屋なんてない。寝室は皆同じ。わたしはお母ちゃんとお父ちゃんと寝てたけど、さすがにティナもは無理なので、あんちゃんがベッドを譲り受けくれた。
「土の上で寝るなんていつものことだし、これからはそんな生活なんだ、気にせず使え」
あんちゃんイケメン! 無事、行商が出来るようミサンガを暗闇の中で編み、次の朝にプレゼントとした。
「精一杯の幸運を詰め込んでおいたわ。無事に帰ってきてね」
「ああ、ありがとう。ずっとしているよ」
そう言って、あんちゃんが家を出て行った。
「……いつか、家族はバラバラになるものなのね……」
いつまでも皆仲良く暮らしました、なんてない。それは前世で学んだことた。
「……キャロル……」
ティナがわたしの手を握ってくれた。
そっか。ティナも家族と死に別れたんだったわ。わたしより酷い別れをしているんだ、ただあんちゃんが旅立ったくらいで悲しんでいられないわね。前向きに行かないと。
「さて。わたしたちも仕事をしましょうか」
あんちゃんの人生はあんちゃんのもの。わたしはわたしの人生を生きるとしましょうかね。
「仕事ってなにするの?」
「まずは水汲みね。ティナのところはどうしてたの?」
「小川から汲んでた」
ティナが住んでいたところは山の中で、水は小川から汲んでいたそうよ。
「力あるのね」
井戸は初めてと言うから試しにやってもらうと、軽々しく水の入った桶を引き上げていた。
「いつもは桶二つを持って水汲みしてたから」
見た目は清楚系の金髪お嬢様なのに、パワー系なのかしら?
桶をひょいひょいと引き上げ、ほいほいと運んで行った。
わたしも結構力持ちかと思ったらそうでもないみたい。普通だったようだわ。
五分もしないで終了。わたしの立場がナッシング~。
「これで終わり?」
「う、うん。あとは朝食を食べてからだね。せっかくだからティナの髪を洗いましょうか」
昨日は夕方で冷えてきたから止めたけど、今日は天気もいいし、竈を使われる前に使っちゃいましょう。
マー油を作るためにおばちゃんたちが薪を持ち寄ってくれたので、薪が結構あるねよね。
「あ、ティナがいたらお風呂が作れるかもしれないわね」
このパワーがあればそう難しくないはず。諦めていた夢が叶うわ!
竈に大壺を掛け、水はティナに運んでもらい、わたしは小枝と薪を放り込んで火をつけた。
「ティナって魔法は使える?」
「うん。身体強化魔法が使える」
なぬ? 身体強化魔法とな!? どんなもの! とお願いしたらわたしをひょいと持ち上げた。
「キャロルなら四人くらい大丈夫だと思う」
し、身体強化魔法スゲー! 魔法スゲー!
「いいな~。わたしも魔法使いたいな~。早く冒険者ギルドで魔力があるか調べてもらいたいよ」
「キャロル、魔力ならあるよ。それもかなり多い」
「え? ティナ、わかるの?」
「うん。あるってくらいなら」
マ、マジか!? わたしに魔力があったんだ! やったじゃん! お父ちゃん、お母ちゃん、わたしを産んでくれてありがとう!
「どんな魔法が使えるの?」
「そこまではわからない。鑑定魔法で調べないと」
鑑定魔法? そんなのがあるの? それまではどうやって調べていたの?
「ボクは小さい頃調べてもらったって聞いた。あ、冒険者ギルドでもお金を払えば調べてくれるって聞いたことがある」
冒険者ギルド、か~。
まあ、まだ冒険者ギルドには行けないのだから、使えるその日に向けて魔力増幅に力を入れるとしましょう。
「ティナって何歳なの?」
「十一歳。冬の終わりに産まれたって聞いてる」
わたしは春生まれで十歳。一歳年上だったんだ。見た目は同じくらいなのに。栄養が足りてないのかしら。胸もぺったんこだし。
服はわたしの替えを着てもらい、着ていた服は石鹸水に一晩浸けておくとする。
あんちゃんが帰ってきて行商人の弟子となったお祝いと、お別れ会を行った。
涙の別れ、とはならず、いつもより多い夕食を食べた程度のもの。喜びも悲しみもあったものじゃない。お父ちゃんもお母ちゃんもそれでいいの?
「おれも家業を継がず、ローザと一緒になってこの村に来たからな。お前たちもやりたいことがあるなら好きにしていいんだからな」
長男は家を継ぐもの。女は嫁に行くもの。そんなのはうちにないようだ。
「わたし、旅してみたいかな?」
「旅? 冒険者になりたいのか? 冒険者は危険だと聞くぞ」
「危険なことはしないわ。ただ、いろんなところを見て回りたいだけだよ」
こうして健康な体に生まれ変わったのだ、前世の分もしっかり生きて、世界を見て回りたいわ。
「まあ、キャロがしたいなら止めはしないが、冒険者にはなっていたほうがいいぞ。札を持っていると他の町に入っても面倒がすくないって言うしな」
「ああ。冒険者になれば身分証にもなるし、ギルドから仕事も受けられる。なっていて損はないぞ。おれも旦那から冒険者になっておけって言われたからな」
行商人でも冒険者になっていたほうがいいんだ。
「それと、ちゃんと強くなっておけよ。女は襲われやすいからな」
そっか。法律があった世界でも襲われるんだから、こんな法律があるんだかわからない時代では強くなっておかないとダメよね。自分の身は自分で守れだ。
あんちゃんから冒険者のことを聞き、夕食が終わればベッドに入った。
一人一部屋なんてない。寝室は皆同じ。わたしはお母ちゃんとお父ちゃんと寝てたけど、さすがにティナもは無理なので、あんちゃんがベッドを譲り受けくれた。
「土の上で寝るなんていつものことだし、これからはそんな生活なんだ、気にせず使え」
あんちゃんイケメン! 無事、行商が出来るようミサンガを暗闇の中で編み、次の朝にプレゼントとした。
「精一杯の幸運を詰め込んでおいたわ。無事に帰ってきてね」
「ああ、ありがとう。ずっとしているよ」
そう言って、あんちゃんが家を出て行った。
「……いつか、家族はバラバラになるものなのね……」
いつまでも皆仲良く暮らしました、なんてない。それは前世で学んだことた。
「……キャロル……」
ティナがわたしの手を握ってくれた。
そっか。ティナも家族と死に別れたんだったわ。わたしより酷い別れをしているんだ、ただあんちゃんが旅立ったくらいで悲しんでいられないわね。前向きに行かないと。
「さて。わたしたちも仕事をしましょうか」
あんちゃんの人生はあんちゃんのもの。わたしはわたしの人生を生きるとしましょうかね。
「仕事ってなにするの?」
「まずは水汲みね。ティナのところはどうしてたの?」
「小川から汲んでた」
ティナが住んでいたところは山の中で、水は小川から汲んでいたそうよ。
「力あるのね」
井戸は初めてと言うから試しにやってもらうと、軽々しく水の入った桶を引き上げていた。
「いつもは桶二つを持って水汲みしてたから」
見た目は清楚系の金髪お嬢様なのに、パワー系なのかしら?
桶をひょいひょいと引き上げ、ほいほいと運んで行った。
わたしも結構力持ちかと思ったらそうでもないみたい。普通だったようだわ。
五分もしないで終了。わたしの立場がナッシング~。
「これで終わり?」
「う、うん。あとは朝食を食べてからだね。せっかくだからティナの髪を洗いましょうか」
昨日は夕方で冷えてきたから止めたけど、今日は天気もいいし、竈を使われる前に使っちゃいましょう。
マー油を作るためにおばちゃんたちが薪を持ち寄ってくれたので、薪が結構あるねよね。
「あ、ティナがいたらお風呂が作れるかもしれないわね」
このパワーがあればそう難しくないはず。諦めていた夢が叶うわ!
竈に大壺を掛け、水はティナに運んでもらい、わたしは小枝と薪を放り込んで火をつけた。
「ティナって魔法は使える?」
「うん。身体強化魔法が使える」
なぬ? 身体強化魔法とな!? どんなもの! とお願いしたらわたしをひょいと持ち上げた。
「キャロルなら四人くらい大丈夫だと思う」
し、身体強化魔法スゲー! 魔法スゲー!
「いいな~。わたしも魔法使いたいな~。早く冒険者ギルドで魔力があるか調べてもらいたいよ」
「キャロル、魔力ならあるよ。それもかなり多い」
「え? ティナ、わかるの?」
「うん。あるってくらいなら」
マ、マジか!? わたしに魔力があったんだ! やったじゃん! お父ちゃん、お母ちゃん、わたしを産んでくれてありがとう!
「どんな魔法が使えるの?」
「そこまではわからない。鑑定魔法で調べないと」
鑑定魔法? そんなのがあるの? それまではどうやって調べていたの?
「ボクは小さい頃調べてもらったって聞いた。あ、冒険者ギルドでもお金を払えば調べてくれるって聞いたことがある」
冒険者ギルド、か~。
まあ、まだ冒険者ギルドには行けないのだから、使えるその日に向けて魔力増幅に力を入れるとしましょう。