プランガル王国へ向けての準備が調った。
指揮はローダルさんで、屋根付き馬車八台。馬のエサや修理道具を積んだものが一台。護衛の冒険者五人。計二十八人で向かうこととなる。
隊商としては小よりの中規模隊商なんだとか。辺境を目指す隊商としては普通なんだってさ。
辺境はよほどの特産がなければ大規模とはならないとか。わたしたちがまず目指すマルファグ伯爵領はコンミンド伯爵様の領地より小さく、これと言った特産もなし。プランガル王国と繋がる道が主な稼ぎとなっているそうだ。
そこまでは馬車で十日くらいはかかるそうだ。
なかなか遠いと思ったら、道が迂回するみたいな感じでしかなく、補給を考えたら大きな町を繋いで行くしかないんだってさ。
バイバナル商会でマルファグ伯爵領に行った者はおらず、途中のバング男爵領まで行って、そこの支店で案内人が合流する。
バング男爵領までは三日の距離で、そこそこ栄えているので道もいいそうだ。
劇的な旅立ちでもなければ劇的な旅でもない。本当に異世界なのかと疑いたくなるくらい平和な旅路。いい感じに町が配置されているので夜は宿で休めた。
「暇ね」
「そんなもんだよ。街道なんて」
人気のない山とかなら獣や山賊が出る可能性もあるけど、人の往来があるところでは天文学的に現れることはない。天候が悪くなって足止めされたり風邪を引いたりで死ぬことが多いそうだ。
馬車の速度なので風景は似たり寄ったり。馬車にロープを繋いでいるので自動運転みたいなもの。初日の午前で飽きてしまったわ。
これと言って語ることもなくバング男爵領に到着。領地ってより発展した村って感じのところだった。
「二日くらい休む。宿で休むなり村を見て回るなり好きにしていいぞ。あ、お嬢ちゃんは来てくれな」
わたしも? せっかく村を見て回ろうとしてたのに。
「ティナ。何か美味しいものがあったら買っておいてね」
馬車や馬のことは任せ、ローダルさんとわたしはバイバナル商会の支店に向かった。
村の中心には隊商は入って行けないので、広場から歩きとなる。
「ローダルさん、来たことあるんですか?」
歩みに迷いがない。場所を知っているみたいだわ。
「王国の支部や支店は一通り回ったよ。バング男爵領はこれで三回目だ」
一年の半分以上を行商しているとは言ってたけど、もしかしてバイバナル商会の人じゃなかったりする? 王国のスパイとか?
まっ、触らぬ神に祟りなし。触れちゃいけないアンタチャブル。バイバナル商会の関係者として接して行くとしましょう。
やって来た支部はとても小さなものだった。村の人が利用する小さなお店。コンビニより小さいんじゃないかしら? 支店と呼んでいいの?
「マーゼング、久しぶり」
「おー。ローダル、久しぶり」
店にいたのはローダルさんと同じ歳の男の人だった。友達?
「どうだい、バング男爵領は? 平和か?」
「そうでもない。最近、ゴブリンが出て農作物を荒らされているよ」
「ゴブリンか。なんか最近、ゴブリンがあちらこちらで現れているな。あちらこちらで被害が出ているよ」
ゴブリン、そんなに現れているんだ。どこか異世界から召喚でもされているのかしら?
「男爵様は、冒険者に討伐依頼は出しているのか?」
「出してはいるみたいだが、こんな田舎だからな、冒険者が来てくれるかどうか。報酬もそう多くないみたいだから」
「そうか。王都の本店に報告は?」
「もう出しているよ。お前のところには届いてないのか?」
「たぶん、行き違いだろう。念のため、冒険者を雇って正解だったよ」
「ふふ。出来る男は違うな。で、そっちのお嬢ちゃんは、例の子か?」
マーゼングさんがわたしに目を向けた。
「銅星二つの冒険者、キャロルです」
わたしたち、バイバナル商会の仕事を依頼を成功させて銅星二つとなりました。
「銅星二つ? その年齢で?」
「このお嬢ちゃんは凄いぞ。ロクラック侯爵と太い繋がりを作ってくれた。バイバナル商会の恩人さ」
そんな大袈裟な。わたしは、バイバナル商会を利用させてもらっただけよ。
「あと、お前をバイバナル商会の代表としてプランガル王国に連れて行く。これは、本店の指示だ。これが指示書だ」
「はぁ? おれも行くのか?」
「これは、バイバナル商会としての販路開拓だ。バイバナル商会の者がいないとダメだろう。おれは行商人でしかないんだから」
あー。確かにローダルさんって行商人だったわ。バイバナル商会の関係者だとしか見てなかったからその設定を忘れていたよ。
「こ、ここはどうするんだ?」
「次は呼んである。本店で出世頭の一人だ」
ここ、左遷先ってわけじゃないんだ。バイバナル商会って優秀な人ほど田舎にいるけど、それが教育システムなんだろうか?
「はぁー。おれ、ここでの商売が気に入っていたんだがな~」
「お前はもっと貪欲になれよ。出世頭だった男が」
へー。優秀な人なんだ。それでナンバー3って不思議よね。ナンバー1と2はどれだけ優秀な人がいるってのよ。いや、この時代なら実力よりコネが大事ってことなんだろうな。
「そうだよ。過去のことさ。でもまあ、旅もいいかもな。これからいい季節になるし」
なかなか変わった人だ。こんな人もいるものなのね。
指揮はローダルさんで、屋根付き馬車八台。馬のエサや修理道具を積んだものが一台。護衛の冒険者五人。計二十八人で向かうこととなる。
隊商としては小よりの中規模隊商なんだとか。辺境を目指す隊商としては普通なんだってさ。
辺境はよほどの特産がなければ大規模とはならないとか。わたしたちがまず目指すマルファグ伯爵領はコンミンド伯爵様の領地より小さく、これと言った特産もなし。プランガル王国と繋がる道が主な稼ぎとなっているそうだ。
そこまでは馬車で十日くらいはかかるそうだ。
なかなか遠いと思ったら、道が迂回するみたいな感じでしかなく、補給を考えたら大きな町を繋いで行くしかないんだってさ。
バイバナル商会でマルファグ伯爵領に行った者はおらず、途中のバング男爵領まで行って、そこの支店で案内人が合流する。
バング男爵領までは三日の距離で、そこそこ栄えているので道もいいそうだ。
劇的な旅立ちでもなければ劇的な旅でもない。本当に異世界なのかと疑いたくなるくらい平和な旅路。いい感じに町が配置されているので夜は宿で休めた。
「暇ね」
「そんなもんだよ。街道なんて」
人気のない山とかなら獣や山賊が出る可能性もあるけど、人の往来があるところでは天文学的に現れることはない。天候が悪くなって足止めされたり風邪を引いたりで死ぬことが多いそうだ。
馬車の速度なので風景は似たり寄ったり。馬車にロープを繋いでいるので自動運転みたいなもの。初日の午前で飽きてしまったわ。
これと言って語ることもなくバング男爵領に到着。領地ってより発展した村って感じのところだった。
「二日くらい休む。宿で休むなり村を見て回るなり好きにしていいぞ。あ、お嬢ちゃんは来てくれな」
わたしも? せっかく村を見て回ろうとしてたのに。
「ティナ。何か美味しいものがあったら買っておいてね」
馬車や馬のことは任せ、ローダルさんとわたしはバイバナル商会の支店に向かった。
村の中心には隊商は入って行けないので、広場から歩きとなる。
「ローダルさん、来たことあるんですか?」
歩みに迷いがない。場所を知っているみたいだわ。
「王国の支部や支店は一通り回ったよ。バング男爵領はこれで三回目だ」
一年の半分以上を行商しているとは言ってたけど、もしかしてバイバナル商会の人じゃなかったりする? 王国のスパイとか?
まっ、触らぬ神に祟りなし。触れちゃいけないアンタチャブル。バイバナル商会の関係者として接して行くとしましょう。
やって来た支部はとても小さなものだった。村の人が利用する小さなお店。コンビニより小さいんじゃないかしら? 支店と呼んでいいの?
「マーゼング、久しぶり」
「おー。ローダル、久しぶり」
店にいたのはローダルさんと同じ歳の男の人だった。友達?
「どうだい、バング男爵領は? 平和か?」
「そうでもない。最近、ゴブリンが出て農作物を荒らされているよ」
「ゴブリンか。なんか最近、ゴブリンがあちらこちらで現れているな。あちらこちらで被害が出ているよ」
ゴブリン、そんなに現れているんだ。どこか異世界から召喚でもされているのかしら?
「男爵様は、冒険者に討伐依頼は出しているのか?」
「出してはいるみたいだが、こんな田舎だからな、冒険者が来てくれるかどうか。報酬もそう多くないみたいだから」
「そうか。王都の本店に報告は?」
「もう出しているよ。お前のところには届いてないのか?」
「たぶん、行き違いだろう。念のため、冒険者を雇って正解だったよ」
「ふふ。出来る男は違うな。で、そっちのお嬢ちゃんは、例の子か?」
マーゼングさんがわたしに目を向けた。
「銅星二つの冒険者、キャロルです」
わたしたち、バイバナル商会の仕事を依頼を成功させて銅星二つとなりました。
「銅星二つ? その年齢で?」
「このお嬢ちゃんは凄いぞ。ロクラック侯爵と太い繋がりを作ってくれた。バイバナル商会の恩人さ」
そんな大袈裟な。わたしは、バイバナル商会を利用させてもらっただけよ。
「あと、お前をバイバナル商会の代表としてプランガル王国に連れて行く。これは、本店の指示だ。これが指示書だ」
「はぁ? おれも行くのか?」
「これは、バイバナル商会としての販路開拓だ。バイバナル商会の者がいないとダメだろう。おれは行商人でしかないんだから」
あー。確かにローダルさんって行商人だったわ。バイバナル商会の関係者だとしか見てなかったからその設定を忘れていたよ。
「こ、ここはどうするんだ?」
「次は呼んである。本店で出世頭の一人だ」
ここ、左遷先ってわけじゃないんだ。バイバナル商会って優秀な人ほど田舎にいるけど、それが教育システムなんだろうか?
「はぁー。おれ、ここでの商売が気に入っていたんだがな~」
「お前はもっと貪欲になれよ。出世頭だった男が」
へー。優秀な人なんだ。それでナンバー3って不思議よね。ナンバー1と2はどれだけ優秀な人がいるってのよ。いや、この時代なら実力よりコネが大事ってことなんだろうな。
「そうだよ。過去のことさ。でもまあ、旅もいいかもな。これからいい季節になるし」
なかなか変わった人だ。こんな人もいるものなのね。


