その日は早くベッドに入り、陽が昇る前に起きた。
「もう起きてる」
板窓を開けたティナが呟いた。
「夜中に起きてるみたいよ。馬やモグルは夜中に異常をきたすのが多いんだってさ」
料理をしているときにいろいろ聞かせてもらったわ。
「本当に部屋を出てたりしていいの? 皆まだ眠っているよね」
「大丈夫よ。靴に音消失の付与を施したから普通に歩いたくらいじゃ音はしないから」
わたしの付与はチートだってのがわかってきた。わたしが思う付与は施せる。ただ、複雑な付与は魔力を食う。一日一回、鞄をアイテムバッグ化することを考えると魔力量はチートでじゃないみたいだけど。
作業服に着替えたらわたしは台所に。ティナはモグルの厩舎に。マリカルは馬の厩舎に向かった。
昨日出した芋餅が大人気。もっと食べたいとリクエストを受けたので、ミルコさんたちが起きる前に下準備をすることにしたのだ。
「お、もうモグルの骨を用意してくれたんだ」
モグルは万能なようで、捨てるところがない家畜のようだ。
骨も出汁が取れるようで、王都に運ばれたりするそうだ。だったらここでもやればいいのにと思うが、忙しくて煮込む暇がないそうだ。
「マルケルさんに言って民宿や娯楽宿屋に卸してもらわないとね」
骨スープは料理の元になる。また新しい料理が出来るのだから手に入れないのは損ってものだわ。
マージック牧場で一番大きな鍋を借り、ルルの結界で汚れを落とし、砕いて鍋にほうり込んだ。
わたしの付与は熱を生み出すことも出来る。
火を焚きながら鍋に熱を付与し、じっくりことこと骨を煮ることにした。
ネギとか玉ねぎとか臭み取りをしたほうがいいんでしょうけど、まずは骨だけを煮てどんな味になるかを知っておかなければならないのよ。
どのくらい煮るかはわからないので、一時間煮たら味見をする。旨味、って感じはしないけど、悪い味ではない。まだまだ煮込む必要があるわね。
皮を剥いた芋も茹で上がったので、棒で潰していく。
明かり取りの窓から陽が入って来て、下働きのミニカさん、続いてミルコさん、アルシンさんとやって来た。
「骨の煮込みはどうだい?」
「悪くないと思います。これならいろんな料理に使えると思いますよ」
味見してもらうと、わたしの感想に頷いてもらえた。
「ルグスクさんにもお願いしますが、バイバナル商会としてモグルの骨を買わせてもらいます。これは、料理の幅を増やすので」
「王都でも人気らしいけど、冬しか送れないから助かるよ」
「マージック牧場も送っているんですか?」
「うちは送ってないよ。馬が主だからね」
そっか~。なら、他の牧場から仕入れないとダメか~。
その辺は帰ってからマルケルさんに相談しよう。まずは馬に乗れるようにならないとね。
骨を煮るのはアルシンさんにお願いし、わたしたち三人は朝食をいただき、厩舎に向かった。
ルグスクさん、いつ寝ているんだろうってくらい厩舎に詰めており、馬の世話をしていた。過酷やな~。
「おはようございます。今日からよろしくお願いします」
「ああ。まずは厩舎の掃除だ。馬は世話をしてくれる者を見ているからな。馬に自分を覚えてもらえば乗れるのも早くなるものだ。マリカル。お前さんが指揮して動いてくれ」
それだけマリカルが馬の世話に長けていたってことか。相当馬の世話をしてたんだろうな~。いいところのお嬢さんなのかどうなのかわからないわね。
「マリカル、よろしく」
「了解。じゃあ、まずは馬の部屋を一つずつ掃除していくよ」
マリカルが先頭切って動き、わたしとティナはそれに続いた。
一日中馬の世話に明け暮れ、陽が暮れる頃にはぐったり。夕食もそこそこに部屋に戻ってそのまま眠りに就いてしまった。
てか、わたし自身に付与すればよかったじゃん! ってのを目覚めてから気が付いたわ。わたし、おバカちゃん!
「ティナ、マリカル、体力倍増、回復倍増、気力倍増を付与するね。ただ、わたしの魔力がもつかわからないから、そのまま気絶しちゃったら上手く説明しておいてね」
魔力は満タンだとは思うけど、たくさん付与すると魔力がなくなっちゃうかもしれない。人に付与するのあまりしてないから加減がわからない。ダメなときは二人に任せるしかないわ。
「ボクは大丈夫だからキャロとマリカルでいいよ」
「わたしも大丈夫よ。キャロルが自分に付与しないよ」
「……二人は疲れてないの……?」
もしかして、わたしだけ? 疲れているの?
「そんなに疲れてない」
「わたしも」
どうやらわたしだけが体力ないだけのようでした……。
「あ、うん。じゃあ、わたしだけにするね」
自分に施して効果があるのか? と思いつつやってみたら効果絶大。自分じゃない力が漲ってきた。マジか!?
「よし! 今日もがんばりましょうか!」
気力倍増にしたからじっとしてられないわ。
「それ、切れたら大丈夫なの?」
「どうだろう? そのときはお願いね」
「なんか、キャロルの付与魔法、不安しかないね」
「まあ、あまり使ってないからね。これからはいろいろ使って極めていくわ」
とりあえず効果が切れるまで働き続けてみましょうかね。おっしゃー!
「もう起きてる」
板窓を開けたティナが呟いた。
「夜中に起きてるみたいよ。馬やモグルは夜中に異常をきたすのが多いんだってさ」
料理をしているときにいろいろ聞かせてもらったわ。
「本当に部屋を出てたりしていいの? 皆まだ眠っているよね」
「大丈夫よ。靴に音消失の付与を施したから普通に歩いたくらいじゃ音はしないから」
わたしの付与はチートだってのがわかってきた。わたしが思う付与は施せる。ただ、複雑な付与は魔力を食う。一日一回、鞄をアイテムバッグ化することを考えると魔力量はチートでじゃないみたいだけど。
作業服に着替えたらわたしは台所に。ティナはモグルの厩舎に。マリカルは馬の厩舎に向かった。
昨日出した芋餅が大人気。もっと食べたいとリクエストを受けたので、ミルコさんたちが起きる前に下準備をすることにしたのだ。
「お、もうモグルの骨を用意してくれたんだ」
モグルは万能なようで、捨てるところがない家畜のようだ。
骨も出汁が取れるようで、王都に運ばれたりするそうだ。だったらここでもやればいいのにと思うが、忙しくて煮込む暇がないそうだ。
「マルケルさんに言って民宿や娯楽宿屋に卸してもらわないとね」
骨スープは料理の元になる。また新しい料理が出来るのだから手に入れないのは損ってものだわ。
マージック牧場で一番大きな鍋を借り、ルルの結界で汚れを落とし、砕いて鍋にほうり込んだ。
わたしの付与は熱を生み出すことも出来る。
火を焚きながら鍋に熱を付与し、じっくりことこと骨を煮ることにした。
ネギとか玉ねぎとか臭み取りをしたほうがいいんでしょうけど、まずは骨だけを煮てどんな味になるかを知っておかなければならないのよ。
どのくらい煮るかはわからないので、一時間煮たら味見をする。旨味、って感じはしないけど、悪い味ではない。まだまだ煮込む必要があるわね。
皮を剥いた芋も茹で上がったので、棒で潰していく。
明かり取りの窓から陽が入って来て、下働きのミニカさん、続いてミルコさん、アルシンさんとやって来た。
「骨の煮込みはどうだい?」
「悪くないと思います。これならいろんな料理に使えると思いますよ」
味見してもらうと、わたしの感想に頷いてもらえた。
「ルグスクさんにもお願いしますが、バイバナル商会としてモグルの骨を買わせてもらいます。これは、料理の幅を増やすので」
「王都でも人気らしいけど、冬しか送れないから助かるよ」
「マージック牧場も送っているんですか?」
「うちは送ってないよ。馬が主だからね」
そっか~。なら、他の牧場から仕入れないとダメか~。
その辺は帰ってからマルケルさんに相談しよう。まずは馬に乗れるようにならないとね。
骨を煮るのはアルシンさんにお願いし、わたしたち三人は朝食をいただき、厩舎に向かった。
ルグスクさん、いつ寝ているんだろうってくらい厩舎に詰めており、馬の世話をしていた。過酷やな~。
「おはようございます。今日からよろしくお願いします」
「ああ。まずは厩舎の掃除だ。馬は世話をしてくれる者を見ているからな。馬に自分を覚えてもらえば乗れるのも早くなるものだ。マリカル。お前さんが指揮して動いてくれ」
それだけマリカルが馬の世話に長けていたってことか。相当馬の世話をしてたんだろうな~。いいところのお嬢さんなのかどうなのかわからないわね。
「マリカル、よろしく」
「了解。じゃあ、まずは馬の部屋を一つずつ掃除していくよ」
マリカルが先頭切って動き、わたしとティナはそれに続いた。
一日中馬の世話に明け暮れ、陽が暮れる頃にはぐったり。夕食もそこそこに部屋に戻ってそのまま眠りに就いてしまった。
てか、わたし自身に付与すればよかったじゃん! ってのを目覚めてから気が付いたわ。わたし、おバカちゃん!
「ティナ、マリカル、体力倍増、回復倍増、気力倍増を付与するね。ただ、わたしの魔力がもつかわからないから、そのまま気絶しちゃったら上手く説明しておいてね」
魔力は満タンだとは思うけど、たくさん付与すると魔力がなくなっちゃうかもしれない。人に付与するのあまりしてないから加減がわからない。ダメなときは二人に任せるしかないわ。
「ボクは大丈夫だからキャロとマリカルでいいよ」
「わたしも大丈夫よ。キャロルが自分に付与しないよ」
「……二人は疲れてないの……?」
もしかして、わたしだけ? 疲れているの?
「そんなに疲れてない」
「わたしも」
どうやらわたしだけが体力ないだけのようでした……。
「あ、うん。じゃあ、わたしだけにするね」
自分に施して効果があるのか? と思いつつやってみたら効果絶大。自分じゃない力が漲ってきた。マジか!?
「よし! 今日もがんばりましょうか!」
気力倍増にしたからじっとしてられないわ。
「それ、切れたら大丈夫なの?」
「どうだろう? そのときはお願いね」
「なんか、キャロルの付与魔法、不安しかないね」
「まあ、あまり使ってないからね。これからはいろいろ使って極めていくわ」
とりあえず効果が切れるまで働き続けてみましょうかね。おっしゃー!


