わたしのお城でのミッションはほぼ終わった。
伯爵様とバイバナル商会がマレイスカ様との繋がりを持つこと、マレイスカ様を喜ばせること、わたしが考えたとおりになった。
あとは、それぞれが関係性を深めてもらえばいいわ。さすがにそれ以上はわたしとして難しい。日々の繋がりだからね。わたしは切っ掛けを与えただけだしね。
終わったのならわたしたちは先に帰らせていただく。民宿のほうもまだ片付いてないんだからね。
バイバナル商会の馬車で帰り、レンラさんにお城でのことを報告する。
マルケルさんから見た報告とわたしから見た報告は違うからね。受け取るほうもそれぞれの視点から見た報告があったほうが理解しやすいでしょうよ。
「……そうですか……」
何とも言えない顔を見せるレンラさん。まあ、そうなるよね。
「キャロルさんが旅に出るのは惜しいと思いますが、バイバナル商会としても落ち着く時間は必要ですね」
「はい。そのためにはわたしがいないほうがいいでしょう。わたしがいたらさらに忙しくなると思いますからね」
まだやりたいこと、作りたいことがある。でも、それをやっていたらバイバナル商会はキャパオーバーを迎えるでしょう。そうなればわたしを持て余すようになるはずだ。
そこからきっと不和が生まれる。バイバナル商会のためにもわたしのためにもクールタイムは必要だと思うわ。
「……残念です……」
レンラさんも思うところがあるのでしょう。引き留めることはしなかった。
「必要になるかわかりませんが、わたしがいない間に問題が出たらこれを読んでください。考えられる問題点と対策を書いてあります。それ以外のことは皆さんで解決してください」
先を見通す力はそんなにあるわけじゃない。民宿や娯楽宿屋、それにまつわることを考えられるくらいよ。
「……本当に前々から考えて動いていたのですね……」
「わたしは思い付きで行動出来ない性格なもので」
きっとわたしは臨機応変とか苦手なんじゃないかな? ちゃんと先を予想して計画的に動かないと不安で仕方がないのよね。そういうのはティナやマリカルにお任せするわ。
「キャロルさんらしいです」
「不意な出来事にはめっぽう弱いですけどね」
「ふふ。そういうほうが可愛気があるというものです。完璧な人間は誰からも理解されませんからね」
理解されるか。そういうのも大事よね。わたしは別に孤高になりたいわけじゃない。わかり合える人と一緒にいたいもの。
「まだ出発は先になると思うので静かに暮らしています」
「キャロルさんは無意識に動き出すときがあるので注意してください」
え? そうなの? わたし、結構天然だったりする?
「はい。気を付けます」
出発前に騒ぎを起こしたら旅に出られなくなるしね。大人しく準備を進めましょう。
民宿をあとにして家に戻った。
「レンラさんに話してきたわ」
「何か言ってた?」
「ううん。納得してくれたよ。やっぱり大きい商会で出世した人は違うわよね」
「そうだね~。出来る人って感じだもんね~」
クッキーを頬張るマリカル。あなた最近太り始めているわよ。
「ローダルさんは?」
「まだ先だと思うわ。あの人、バイバナル商会でもかなり上っぽいから王都にいるんじゃないかな?」
たぶん、バイバナル商会の直系の人だと思う。次男か三男ってところじゃないかな? そうでないと自由に動けたりしないからね。
「じゃあ、春の終わりか夏の初め、って感じかな? それだとまた手紙を送っていたほうがいいかな?」
「そうだね。そのくらいに出立するかも、って書いておいて。返事も春の半ばを過ぎたら返せないこともね」
手紙が届くまで一月以上掛かる。こんな時代によく届くな~って思うけど、何か仕掛けがあるっぽい。冒険者ギルドに出し、プランガル王国の手が回った町に届くと、そのまま届けられるみたいだわ。
「わかった。お土産、何にしようかな?」
「帰るの、嬉しいの?」
あまり帰りたくない様子だったのに。
「まあ、生まれたところだからね。懐かしさはあるよ。友達にも会いたいしさ」
家族に、とは言わないマリカル。
あまり話したがらないから家族のことは訊いたことはない。ただ、いいところのお嬢さんってのはわかった。食べるのが上品だったからね。まあ、食いしん坊ではあるけど。
「これから暖かくなるし、帽子でも贈ったら?」
プランガルの夏は結構暑くなるらしい。可愛い帽子なら喜ばれるんじゃない?
「そう言えば、プランガルに帽子とか被るのなかったな~」
「まあ、耳が頭の上にあるしね。帽子を被ると大変そうだよね」
わたしは耳出しの麦わら帽子を作ってあげた。どうも獣人の耳は熱を逃がす役割もあるっぽいわ。
「そうなんだよね。耳なしの帽子って発想はなかったよ」
「いくつか作って、人気が出たら作り方を教えたらいいんじゃない?」
麦わら帽子なんて自作が当たり前。作って商売とかない。そう売れるもんじゃないからね。
「そうだね。ちょっとお洒落なの作ってあげましょうっと。ルルもいる?」
「いらないわよ。暑い日に外に出ないし」
すっかり家猫になっているルル。元の世界で猫に憧れるのもよくわかるわ。こんな自由に生きてる生命体って他にないんじゃない?
伯爵様とバイバナル商会がマレイスカ様との繋がりを持つこと、マレイスカ様を喜ばせること、わたしが考えたとおりになった。
あとは、それぞれが関係性を深めてもらえばいいわ。さすがにそれ以上はわたしとして難しい。日々の繋がりだからね。わたしは切っ掛けを与えただけだしね。
終わったのならわたしたちは先に帰らせていただく。民宿のほうもまだ片付いてないんだからね。
バイバナル商会の馬車で帰り、レンラさんにお城でのことを報告する。
マルケルさんから見た報告とわたしから見た報告は違うからね。受け取るほうもそれぞれの視点から見た報告があったほうが理解しやすいでしょうよ。
「……そうですか……」
何とも言えない顔を見せるレンラさん。まあ、そうなるよね。
「キャロルさんが旅に出るのは惜しいと思いますが、バイバナル商会としても落ち着く時間は必要ですね」
「はい。そのためにはわたしがいないほうがいいでしょう。わたしがいたらさらに忙しくなると思いますからね」
まだやりたいこと、作りたいことがある。でも、それをやっていたらバイバナル商会はキャパオーバーを迎えるでしょう。そうなればわたしを持て余すようになるはずだ。
そこからきっと不和が生まれる。バイバナル商会のためにもわたしのためにもクールタイムは必要だと思うわ。
「……残念です……」
レンラさんも思うところがあるのでしょう。引き留めることはしなかった。
「必要になるかわかりませんが、わたしがいない間に問題が出たらこれを読んでください。考えられる問題点と対策を書いてあります。それ以外のことは皆さんで解決してください」
先を見通す力はそんなにあるわけじゃない。民宿や娯楽宿屋、それにまつわることを考えられるくらいよ。
「……本当に前々から考えて動いていたのですね……」
「わたしは思い付きで行動出来ない性格なもので」
きっとわたしは臨機応変とか苦手なんじゃないかな? ちゃんと先を予想して計画的に動かないと不安で仕方がないのよね。そういうのはティナやマリカルにお任せするわ。
「キャロルさんらしいです」
「不意な出来事にはめっぽう弱いですけどね」
「ふふ。そういうほうが可愛気があるというものです。完璧な人間は誰からも理解されませんからね」
理解されるか。そういうのも大事よね。わたしは別に孤高になりたいわけじゃない。わかり合える人と一緒にいたいもの。
「まだ出発は先になると思うので静かに暮らしています」
「キャロルさんは無意識に動き出すときがあるので注意してください」
え? そうなの? わたし、結構天然だったりする?
「はい。気を付けます」
出発前に騒ぎを起こしたら旅に出られなくなるしね。大人しく準備を進めましょう。
民宿をあとにして家に戻った。
「レンラさんに話してきたわ」
「何か言ってた?」
「ううん。納得してくれたよ。やっぱり大きい商会で出世した人は違うわよね」
「そうだね~。出来る人って感じだもんね~」
クッキーを頬張るマリカル。あなた最近太り始めているわよ。
「ローダルさんは?」
「まだ先だと思うわ。あの人、バイバナル商会でもかなり上っぽいから王都にいるんじゃないかな?」
たぶん、バイバナル商会の直系の人だと思う。次男か三男ってところじゃないかな? そうでないと自由に動けたりしないからね。
「じゃあ、春の終わりか夏の初め、って感じかな? それだとまた手紙を送っていたほうがいいかな?」
「そうだね。そのくらいに出立するかも、って書いておいて。返事も春の半ばを過ぎたら返せないこともね」
手紙が届くまで一月以上掛かる。こんな時代によく届くな~って思うけど、何か仕掛けがあるっぽい。冒険者ギルドに出し、プランガル王国の手が回った町に届くと、そのまま届けられるみたいだわ。
「わかった。お土産、何にしようかな?」
「帰るの、嬉しいの?」
あまり帰りたくない様子だったのに。
「まあ、生まれたところだからね。懐かしさはあるよ。友達にも会いたいしさ」
家族に、とは言わないマリカル。
あまり話したがらないから家族のことは訊いたことはない。ただ、いいところのお嬢さんってのはわかった。食べるのが上品だったからね。まあ、食いしん坊ではあるけど。
「これから暖かくなるし、帽子でも贈ったら?」
プランガルの夏は結構暑くなるらしい。可愛い帽子なら喜ばれるんじゃない?
「そう言えば、プランガルに帽子とか被るのなかったな~」
「まあ、耳が頭の上にあるしね。帽子を被ると大変そうだよね」
わたしは耳出しの麦わら帽子を作ってあげた。どうも獣人の耳は熱を逃がす役割もあるっぽいわ。
「そうなんだよね。耳なしの帽子って発想はなかったよ」
「いくつか作って、人気が出たら作り方を教えたらいいんじゃない?」
麦わら帽子なんて自作が当たり前。作って商売とかない。そう売れるもんじゃないからね。
「そうだね。ちょっとお洒落なの作ってあげましょうっと。ルルもいる?」
「いらないわよ。暑い日に外に出ないし」
すっかり家猫になっているルル。元の世界で猫に憧れるのもよくわかるわ。こんな自由に生きてる生命体って他にないんじゃない?