マラッカウェアが完成したのでマレイスカ様に着てもらった。
「おー。なかなかいいではないか」
「少し、振ってもらってよろしいでしょうか? 動き難いところがあれば教えていただければ幸いです」
「うむ。わかった」
ウキウキなマレイスカ様は快く引き受けてくれ、外で振ってくれた。
「問題ないな。少しこれで歩いてみるか」
それはロックダル様にお任せしてわたしは職人さんのところに向かった。
職人さんたちにはクラブの製作をお願いしている。マレイスカ様が使うのは当然として、王都に帰ったときに布教用に使ってもらうためのものだ。
「進みはどうですか?」
職人さん総動員で作っていた。
「順調だよ。今んところ十二本か? 今日中に十五本は行けるだろうよ」
それなら帰る頃までに五十本は余裕ね。
「これが終わったら打ち上げしましょうね。密かに作っているお酒を出しますんで」
夜な夜なブランデー作りに励んでいるんですよ。付与魔法の実験も兼ねてね。
「おー。それは楽しみだ」
「はい。楽しみにしててください。では、お願いしますね」
次はロコルさんのところに向かった。
「ロコルさん。次にコート──外套を作ってください。民宿からマラッカ場に行くまでに着るものを」
「生地が足りないから持って来てもらうわ」
「急ぎならティナに走ってもらいますよ」
ルルに乗ればすぐでしょう。
「大丈夫よ。ルクゼック商会からも馬を出してくれたからね」
「ルクゼック商会も本気なんですね」
「それはそうよ。侯爵様と繋がれる機会なんてそうはないこらね。ルクゼック商会としても全力で取り込むわ」
侯爵って立場はそれだけってことか。地位を見なければいいおじいちゃんって感じなんだけどね。
……大臣をやっているときはそうじゃなかったみたいだけど……。
「もしかすると、ルーランが応援として来るかもしれないわ。間に合うかはわからないけどね」
確かにカルブラ伯爵領からだと間に合うかどうかよね。まあ、マレイスカ様が帰ってからでも大丈夫でしょう。来たからと言って製作が間に合うわけでもないんだからね。
「ルーランさんも大変だ」
「そこは我慢してもらうしかないわ。ルクゼック商会の未来が掛かっているんだからね」
うん。ご苦労様です。そして、巻き込んで申し訳ありませんでした。
「わかりました。では、進められるところまでお願いします」
「わかったわ」
各所の様子を確認してくると、マレイスカ様たちが戻っていた。休まる暇がないわね。
「どうでした?」
「ああ。とても動きやすい服だ。普段でも着ていたいくらいだ」
「自宅用のを作りますか? お客様が来たりしたら着替えなくてはいけませんが」
「客が来るときは連絡があるから大丈夫だ」
突発に来たりはしないんだ。案外、面倒なのね。
「それなら四着くらい作りますね」
ロコルさんの仕事がさらに増えちゃった。ごめんなさい。
「ああ、頼む。マラッカ場に行っても問題ないか?」
「もう少しでお昼になりますが、あちらで食べますか? 食べてから行きますか?」
「そうだな。あちらで食べるか」
すっかり外で食べることに抵抗がなくなったね。
「では、用意します」
側仕えの方とマーシャさん、料理人に連絡してマラッカ場に向かってもらった。
「奥様もどうですか? 部屋の中ばかりにいると滅入ってしまいますからね。外の刺激を浴びたほうが頭を働かせますよ」
こっちはすっかり引きこもりになっている。強制的にでも外の空気を吸わせるとしましょう。
「そうね。マラッカ場も見てみたいし、行ってみましょうか」
「はい。火は焚いてますが、少し、着込んだほうがよろしいかと思います」
暖かい部屋にいたから外の空気は厳しいでしょう。厚着させるとしよう。
わたしは奥様と向かい、まずは火の側にいてもらい、料理人さんと一緒に昼食の準備を手伝った。
用意が出来たらお二方をテーブルに付かせ、温かいスープを出した。
「外で温かいものを食べるのもいいものだな」
「そうですね。何だかいつもより美味しく感じますわ」
ここらお二方の空間なので会話には参加せず、お二方が食べるのを見守った。わたしたちは交代で食べるわよ。
「よし。やるか」
「何からなさいますか?」
「穴入れからやるとするか。まだ腹が落ち着かんからな」
落ち着くよりマラッカがやりたいようだ。
「では、穴入れ用をいくつか作ったので試してください。気に入ったのがあったら自分用にどうぞ。職人によって微妙に違って微妙に反映されますからね」
「なるほど。マラッカは奥が深そうだ」
マレイスカ様は拘る派だと思う。好きなことにはとことん突き詰めるんじゃないかしら?
「慌てず少しずつ試してください」
こちらとしても時間が稼げて助かる。お二方が動くと優先度がいろいろ変わってくるからね。なるべく一つのことをやっててもらいましょう。
まあ、わたしが仕事を増やしている説もあったりなかったりだけどね。
「奥様。お戻りになりますか?」
「いえ、もうしばらくここにいるわ。景色もいいしね」
「畏まりました」
その場は側仕えの方にお任せしてまたロコルさんのところに向かった。フー。
「おー。なかなかいいではないか」
「少し、振ってもらってよろしいでしょうか? 動き難いところがあれば教えていただければ幸いです」
「うむ。わかった」
ウキウキなマレイスカ様は快く引き受けてくれ、外で振ってくれた。
「問題ないな。少しこれで歩いてみるか」
それはロックダル様にお任せしてわたしは職人さんのところに向かった。
職人さんたちにはクラブの製作をお願いしている。マレイスカ様が使うのは当然として、王都に帰ったときに布教用に使ってもらうためのものだ。
「進みはどうですか?」
職人さん総動員で作っていた。
「順調だよ。今んところ十二本か? 今日中に十五本は行けるだろうよ」
それなら帰る頃までに五十本は余裕ね。
「これが終わったら打ち上げしましょうね。密かに作っているお酒を出しますんで」
夜な夜なブランデー作りに励んでいるんですよ。付与魔法の実験も兼ねてね。
「おー。それは楽しみだ」
「はい。楽しみにしててください。では、お願いしますね」
次はロコルさんのところに向かった。
「ロコルさん。次にコート──外套を作ってください。民宿からマラッカ場に行くまでに着るものを」
「生地が足りないから持って来てもらうわ」
「急ぎならティナに走ってもらいますよ」
ルルに乗ればすぐでしょう。
「大丈夫よ。ルクゼック商会からも馬を出してくれたからね」
「ルクゼック商会も本気なんですね」
「それはそうよ。侯爵様と繋がれる機会なんてそうはないこらね。ルクゼック商会としても全力で取り込むわ」
侯爵って立場はそれだけってことか。地位を見なければいいおじいちゃんって感じなんだけどね。
……大臣をやっているときはそうじゃなかったみたいだけど……。
「もしかすると、ルーランが応援として来るかもしれないわ。間に合うかはわからないけどね」
確かにカルブラ伯爵領からだと間に合うかどうかよね。まあ、マレイスカ様が帰ってからでも大丈夫でしょう。来たからと言って製作が間に合うわけでもないんだからね。
「ルーランさんも大変だ」
「そこは我慢してもらうしかないわ。ルクゼック商会の未来が掛かっているんだからね」
うん。ご苦労様です。そして、巻き込んで申し訳ありませんでした。
「わかりました。では、進められるところまでお願いします」
「わかったわ」
各所の様子を確認してくると、マレイスカ様たちが戻っていた。休まる暇がないわね。
「どうでした?」
「ああ。とても動きやすい服だ。普段でも着ていたいくらいだ」
「自宅用のを作りますか? お客様が来たりしたら着替えなくてはいけませんが」
「客が来るときは連絡があるから大丈夫だ」
突発に来たりはしないんだ。案外、面倒なのね。
「それなら四着くらい作りますね」
ロコルさんの仕事がさらに増えちゃった。ごめんなさい。
「ああ、頼む。マラッカ場に行っても問題ないか?」
「もう少しでお昼になりますが、あちらで食べますか? 食べてから行きますか?」
「そうだな。あちらで食べるか」
すっかり外で食べることに抵抗がなくなったね。
「では、用意します」
側仕えの方とマーシャさん、料理人に連絡してマラッカ場に向かってもらった。
「奥様もどうですか? 部屋の中ばかりにいると滅入ってしまいますからね。外の刺激を浴びたほうが頭を働かせますよ」
こっちはすっかり引きこもりになっている。強制的にでも外の空気を吸わせるとしましょう。
「そうね。マラッカ場も見てみたいし、行ってみましょうか」
「はい。火は焚いてますが、少し、着込んだほうがよろしいかと思います」
暖かい部屋にいたから外の空気は厳しいでしょう。厚着させるとしよう。
わたしは奥様と向かい、まずは火の側にいてもらい、料理人さんと一緒に昼食の準備を手伝った。
用意が出来たらお二方をテーブルに付かせ、温かいスープを出した。
「外で温かいものを食べるのもいいものだな」
「そうですね。何だかいつもより美味しく感じますわ」
ここらお二方の空間なので会話には参加せず、お二方が食べるのを見守った。わたしたちは交代で食べるわよ。
「よし。やるか」
「何からなさいますか?」
「穴入れからやるとするか。まだ腹が落ち着かんからな」
落ち着くよりマラッカがやりたいようだ。
「では、穴入れ用をいくつか作ったので試してください。気に入ったのがあったら自分用にどうぞ。職人によって微妙に違って微妙に反映されますからね」
「なるほど。マラッカは奥が深そうだ」
マレイスカ様は拘る派だと思う。好きなことにはとことん突き詰めるんじゃないかしら?
「慌てず少しずつ試してください」
こちらとしても時間が稼げて助かる。お二方が動くと優先度がいろいろ変わってくるからね。なるべく一つのことをやっててもらいましょう。
まあ、わたしが仕事を増やしている説もあったりなかったりだけどね。
「奥様。お戻りになりますか?」
「いえ、もうしばらくここにいるわ。景色もいいしね」
「畏まりました」
その場は側仕えの方にお任せしてまたロコルさんのところに向かった。フー。