朝、顔を洗いに借りていた部屋を出ると、人足さんと思われる人たちがお店の広場に集まっていた。
「仕事が早いよね」
さすが支部長になる人は違う。一晩でこんなに集めちゃうんだから。
顔を洗って用意をしたらマルケルさんのところに向かった。
「おはようございます」
「おはようございます。すぐ出発しますが、大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です」
お昼前には着きたいと言った身。ダメですとは言えないわ。
「何人揃いました?」
「まずは二十人。残りは午後と明日には移動させます」
「食事を作る要員はどうしました?」
「昨日のうちに移動させました」
本当に優秀な人だよ。
「ありがとうございます。マレイスカ様も喜ぶと思いますよ」
バイバナル商会の株も上がるでしょう。マルケルさん、出世して王都に戻っちゃうかもね。
「そう言えば、バイバナル商会に子商会や孫商会とかあったりするんですか?」
「子商会、孫商会、ですか?」
「バイバナル商会が資金を出した他分野の商会って感じですかね。まあ、バイバナル商会の下にはあるので同じ商会と言ってしまえばそうなんですけど」
「……そうする利点があるので?」
「そうですね。独自の資金を運用出来て命令が迅速になる、って感じですかね? あと、出世する先にもなるんじゃないですかね? ダメならそこだけ切れば他に飛び火することもないはずです」
ざっくりとした知識で申し訳ありません。
「……そんな考えもあるのですね……」
「マルケルさんが王都に行っちゃったら困るから、子商会を設立して一大収容施設の代表になって欲しいですね。ってまあ、わたしの妄想なので気にしないでください」
バイバナル商会が分解されても困るしね。下手なことは言わないで──って、何か考えに入っちゃったわ。こりゃ、上層部にも話が行っちゃうかもしんないわね……。
「あんたがキャロルさんかい? おれは人足頭のジョガだ」
人足頭とかいるんだ。結構組織的なの?
「はい。キャロルです。よろしくお願いしますね。話はジョガさんを通せばいいんですか?」
「まあ、そうだな。あんたが指揮するのかい?」
「そうなっちゃいますね。なるべく二日で形にしたいので。そのあとはバイバナル商会が決めると思います。たぶん、レンラさん、レンラさんってわかりますか?」
「コンミンドであの人を知らないヤツはいないよ」
レンラさん、わたしが思う以上に凄い人だったりする?
「そのレンラさんから話が行くと思います。まずは、お貴族様の要望を叶えるために動いてもらえると助かります」
「貴族が関わってんならしっかりやるよ。目を付けられたら嫌だからな」
わたしが人足を使うことなんて今後ないでしょうからね。今回、ちゃんとやってくれるならそれで充分だわ。
マルケルさんが用意してくれた荷馬車に乗り込み出発した。
「皆さん、朝は食べたんですか?」
「持ってきたヤツは食うだろう」
「バイバナル商会が用意してくれるんじゃないんですか?」
早い人は陽が出る前から集まっていたんじゃないの?
「昼を出してくれるだけマシだな。まあ、今回は泊まり掛けなんで朝昼晩と出してくれるみたいだが」
なかなかブラックな職業のようだ。
「じゃあ、着いたらまずは食事にしますね。しっかり働いて欲しいので」
改善する立場じゃないので食事だけはよくしてあげましょう。
「ちなみになんですけど、わたしでも人足さんを雇えますか? どこかに口利きをお願いしないとダメなんですか?」
「あんたならバイバナル商会に声を掛けたら済む話だろう」
「ちょっとした興味本意です。そういう仕組み、全然知らないので」
「……あんた、変わってんな……」
「そうですか? そういう仕組みって外から見てただけじゃわからないですからね。その道の専門家から聞けるなんてありがたい限りですよ」
「専門家って大袈裟だな。長いことやっているだけだ」
「長くやっていることは才能があったから。そこで食べてきたんだからその道の専門家であり玄人ですよ」
プロの知識を聞こうと思ってもそう簡単に聞けるものじゃない。社会勉強として最高の先生だわ。
「ま、まあ、聞きたいってんなら構わんがな」
「はい。是非とも聞きたいです」
到着するまで時間はある。聞きたいこと、これまでの苦労話、お金のことなんかを話してもらった。
あっと言う間に時間は過ぎて民宿に到着。聞かせてもらったお礼に昼食を奮発。地下倉庫のお肉を出してあげた。
「夜は葡萄酒も出しますね」
わたしたちは飲まないけど、ブランデーを作りたくてちょこちょこ買っている。結構貯まってきたから出してあげるとしましょうかね。
「キャロって結構人たらしだよね」
「あ、わかる~」
なぜか二人からそんなことを言われた。なんのこっちゃ?
「そんなことよりお二方はどうだった?」
「変わらないよ」
「こっちもよ」
「午後もお願いね。わたしは人足さんたちに付きっきりになっちゃうからさ」
せめて今日中には形にしたいからね。
「わかった。そっちはほどほどに。また仕事が増えたらレンラさんやマルケルさんが大変だから」
「もう遅いと思うよ、キャロルのことだから」
わたしだから何なのよ? 何か最近、わたしのこと誤解してない?
「仕事が早いよね」
さすが支部長になる人は違う。一晩でこんなに集めちゃうんだから。
顔を洗って用意をしたらマルケルさんのところに向かった。
「おはようございます」
「おはようございます。すぐ出発しますが、大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です」
お昼前には着きたいと言った身。ダメですとは言えないわ。
「何人揃いました?」
「まずは二十人。残りは午後と明日には移動させます」
「食事を作る要員はどうしました?」
「昨日のうちに移動させました」
本当に優秀な人だよ。
「ありがとうございます。マレイスカ様も喜ぶと思いますよ」
バイバナル商会の株も上がるでしょう。マルケルさん、出世して王都に戻っちゃうかもね。
「そう言えば、バイバナル商会に子商会や孫商会とかあったりするんですか?」
「子商会、孫商会、ですか?」
「バイバナル商会が資金を出した他分野の商会って感じですかね。まあ、バイバナル商会の下にはあるので同じ商会と言ってしまえばそうなんですけど」
「……そうする利点があるので?」
「そうですね。独自の資金を運用出来て命令が迅速になる、って感じですかね? あと、出世する先にもなるんじゃないですかね? ダメならそこだけ切れば他に飛び火することもないはずです」
ざっくりとした知識で申し訳ありません。
「……そんな考えもあるのですね……」
「マルケルさんが王都に行っちゃったら困るから、子商会を設立して一大収容施設の代表になって欲しいですね。ってまあ、わたしの妄想なので気にしないでください」
バイバナル商会が分解されても困るしね。下手なことは言わないで──って、何か考えに入っちゃったわ。こりゃ、上層部にも話が行っちゃうかもしんないわね……。
「あんたがキャロルさんかい? おれは人足頭のジョガだ」
人足頭とかいるんだ。結構組織的なの?
「はい。キャロルです。よろしくお願いしますね。話はジョガさんを通せばいいんですか?」
「まあ、そうだな。あんたが指揮するのかい?」
「そうなっちゃいますね。なるべく二日で形にしたいので。そのあとはバイバナル商会が決めると思います。たぶん、レンラさん、レンラさんってわかりますか?」
「コンミンドであの人を知らないヤツはいないよ」
レンラさん、わたしが思う以上に凄い人だったりする?
「そのレンラさんから話が行くと思います。まずは、お貴族様の要望を叶えるために動いてもらえると助かります」
「貴族が関わってんならしっかりやるよ。目を付けられたら嫌だからな」
わたしが人足を使うことなんて今後ないでしょうからね。今回、ちゃんとやってくれるならそれで充分だわ。
マルケルさんが用意してくれた荷馬車に乗り込み出発した。
「皆さん、朝は食べたんですか?」
「持ってきたヤツは食うだろう」
「バイバナル商会が用意してくれるんじゃないんですか?」
早い人は陽が出る前から集まっていたんじゃないの?
「昼を出してくれるだけマシだな。まあ、今回は泊まり掛けなんで朝昼晩と出してくれるみたいだが」
なかなかブラックな職業のようだ。
「じゃあ、着いたらまずは食事にしますね。しっかり働いて欲しいので」
改善する立場じゃないので食事だけはよくしてあげましょう。
「ちなみになんですけど、わたしでも人足さんを雇えますか? どこかに口利きをお願いしないとダメなんですか?」
「あんたならバイバナル商会に声を掛けたら済む話だろう」
「ちょっとした興味本意です。そういう仕組み、全然知らないので」
「……あんた、変わってんな……」
「そうですか? そういう仕組みって外から見てただけじゃわからないですからね。その道の専門家から聞けるなんてありがたい限りですよ」
「専門家って大袈裟だな。長いことやっているだけだ」
「長くやっていることは才能があったから。そこで食べてきたんだからその道の専門家であり玄人ですよ」
プロの知識を聞こうと思ってもそう簡単に聞けるものじゃない。社会勉強として最高の先生だわ。
「ま、まあ、聞きたいってんなら構わんがな」
「はい。是非とも聞きたいです」
到着するまで時間はある。聞きたいこと、これまでの苦労話、お金のことなんかを話してもらった。
あっと言う間に時間は過ぎて民宿に到着。聞かせてもらったお礼に昼食を奮発。地下倉庫のお肉を出してあげた。
「夜は葡萄酒も出しますね」
わたしたちは飲まないけど、ブランデーを作りたくてちょこちょこ買っている。結構貯まってきたから出してあげるとしましょうかね。
「キャロって結構人たらしだよね」
「あ、わかる~」
なぜか二人からそんなことを言われた。なんのこっちゃ?
「そんなことよりお二方はどうだった?」
「変わらないよ」
「こっちもよ」
「午後もお願いね。わたしは人足さんたちに付きっきりになっちゃうからさ」
せめて今日中には形にしたいからね。
「わかった。そっちはほどほどに。また仕事が増えたらレンラさんやマルケルさんが大変だから」
「もう遅いと思うよ、キャロルのことだから」
わたしだから何なのよ? 何か最近、わたしのこと誤解してない?