もう定期便みたくなっている馬車は、上りと下りが出来ていた。
朝にバイバナル商会を発ち、昼前に到着。着いたくらいにまたバイバナル商会を発つ馬車がある。夕方に着いた馬車は一泊して民宿を発つ、って感じだ。
それで採算があるのかな? と思うけど、金持ち相手の商売だから余裕で採算が取れるそうだ。
「じゃあ、人も通えるか」
定期便になっているなら定期馬車にしても問題ないってことだ。
バイバナル商会から民宿まで四、五時間くらい。そうなると、途中で休憩したりする場所が必要か。と言うか、この通りがメイン通りになれば発展するんじゃない?
まあ、発展するかはわからないから一応、マルケルさんに伝えておこう。やるやらないはバイバナル商会が決めることだからね。
そんなことをぼんやり考えていたらロンドカ村に入っていた。
「何か、空気が張り詰めてません?」
歩いている人たちも何だかピリピリしているような?
「ああ。前にゴブリンが現れたことがあったろう。その討伐に冒険者や商人が集まってんのさ」
あー。あったわね、そんなこと。魔力切れを起こして、もう関わるなって言われたから忘れてたわ。
「コンミンド伯爵領にゴブリンの巣があったんですか?」
「そうみたいだな。伯爵様も戻ってきたそうだ」
へー。うちの領主、案外まともだったんだね。
厳しそうな感じはしたけど、領民思いだった……いや、違う理由か。今、マレイスカ様が来ているし。ご夫妻になにかあれば伯爵様の責任になっちゃうものね。自ら指揮をしないと何を言われるかわかったものじゃないわ。
「お嬢ちゃんはダメだぞ。商会からお嬢ちゃんたちを参加させるなって通達されてんだから」
さすがバイバナル商会。そつがないんだから。
「わかっていますよ。わたしじゃゴブリンの一匹も倒せませんからね」
「お嬢ちゃんの場合は別のことで無茶するからだろう」
ハイ、まったくもってそのとおり。大人しくしております。
バイバナル商会に到着すると、ここも何だか空気が張り詰めている。何か協力しているのかな?
店全体がいそがしそうで、マルケルさんも何かやっているみたい。声もかけるのも何なので隣のルクゼック商会に行ってみた。
こちらは静かなもので、奥様方が店内を見て回っていた。
「おや、キャロルさん。いらっしゃい」
支部長のハガリアさんがわたしを素早く見つけて声を掛けてきた。
「お久しぶりです。バイバナル商会に来たんですが、何だか忙しいのでこちらに来ました」
わたしの後ろ盾はバイバナル商会だからね。優先する義理はあるのよ。
「そうですか。まあ、ゴブリン討伐で大変みたいですからね」
「ルクゼック商会は忙しくないんですか?」
「うちは布が売れるくらいですね」
ん? 包帯とかなかったっけ? あ、なかったわ。ランザカ村では綺麗な布を使っていたっけ。
「その布ってまだあります?」
せっかくだから包帯を作って常備しておきましょうかね。
「どうするのです?」
「怪我をしたときにすぐ使えるように細くして丸めておこうかと思いまして。いざってとき裂く必要もないですからね」
「ほぉう。ちなみにどうやるか見せてもらってよろしいですか? 布は提供しますので」
包帯なんて利益になるのかな? とは思いながらもサービスしてくれるってんだからありがたくいただいておきましょう。
白い布を四、五センチに短冊切りをしつ丸め、安全ピンで止めた。ちなみに安全ピンは発売されてよく売れているそうよ。
「まあ、こんな感じですね。軟膏を塗って油紙で押さえて包帯で巻けば素早く治療出来ます」
「……なるほど……」
そんなに感心することか? これまでも布を裂いてやってたんじゃないの?
「どうするかはハガリアさんにお任せします。突然で申し訳ないのですが、ロコルさんをお借り出来ますかね? ちょっとお願いしたいことがあるんですよ」
包帯なんてどうでもいいのよ。本題はロコルさんだ。
「ロコルをですか? まあ、キャロルさんのお声とあればお貸しするのもやぶさかではありませんが、何かありましたか?」
「民宿にお貴族様が来ていることはご存知で?」
情報規制や個人情報筒抜け万歳な時代。ルクゼック商会ともなれば知っているでしょう。ただ、口にしないだけで。
「はい。まあ」
「その方の服を作って欲しいんですよ」
「服、ですか?」
「まあ、服と言っても運動するときに着る服です。ただ、お貴族様が着るもの。簡素なものは憚れるので、質のよいもので質素ながらみすぼらしくないものを作る必要があります。わたしでは無理なのでロコルさんのお力をお借りできたらな~と思いまして」
「……わたしどもでよれしいので……?」
バイバナル商会を無視していいのかと訊いているんでしょう。
「そう時間も掛けてられないのでルクゼック商会にお願いしたいんです」
バイバナル商会では無理なこと。無理を通しても迷惑なだけでしょうよ。
「わかりました。すぐに用意致しましょう」
「あ、明日の朝に出発しますから。バイバナル商会にもお願いしたいことがあるので」
ちょっとタイミングが悪かった。どうなるかわからないから今日はバイバナル商会に泊めてもらうことにしましょう。
朝にバイバナル商会を発ち、昼前に到着。着いたくらいにまたバイバナル商会を発つ馬車がある。夕方に着いた馬車は一泊して民宿を発つ、って感じだ。
それで採算があるのかな? と思うけど、金持ち相手の商売だから余裕で採算が取れるそうだ。
「じゃあ、人も通えるか」
定期便になっているなら定期馬車にしても問題ないってことだ。
バイバナル商会から民宿まで四、五時間くらい。そうなると、途中で休憩したりする場所が必要か。と言うか、この通りがメイン通りになれば発展するんじゃない?
まあ、発展するかはわからないから一応、マルケルさんに伝えておこう。やるやらないはバイバナル商会が決めることだからね。
そんなことをぼんやり考えていたらロンドカ村に入っていた。
「何か、空気が張り詰めてません?」
歩いている人たちも何だかピリピリしているような?
「ああ。前にゴブリンが現れたことがあったろう。その討伐に冒険者や商人が集まってんのさ」
あー。あったわね、そんなこと。魔力切れを起こして、もう関わるなって言われたから忘れてたわ。
「コンミンド伯爵領にゴブリンの巣があったんですか?」
「そうみたいだな。伯爵様も戻ってきたそうだ」
へー。うちの領主、案外まともだったんだね。
厳しそうな感じはしたけど、領民思いだった……いや、違う理由か。今、マレイスカ様が来ているし。ご夫妻になにかあれば伯爵様の責任になっちゃうものね。自ら指揮をしないと何を言われるかわかったものじゃないわ。
「お嬢ちゃんはダメだぞ。商会からお嬢ちゃんたちを参加させるなって通達されてんだから」
さすがバイバナル商会。そつがないんだから。
「わかっていますよ。わたしじゃゴブリンの一匹も倒せませんからね」
「お嬢ちゃんの場合は別のことで無茶するからだろう」
ハイ、まったくもってそのとおり。大人しくしております。
バイバナル商会に到着すると、ここも何だか空気が張り詰めている。何か協力しているのかな?
店全体がいそがしそうで、マルケルさんも何かやっているみたい。声もかけるのも何なので隣のルクゼック商会に行ってみた。
こちらは静かなもので、奥様方が店内を見て回っていた。
「おや、キャロルさん。いらっしゃい」
支部長のハガリアさんがわたしを素早く見つけて声を掛けてきた。
「お久しぶりです。バイバナル商会に来たんですが、何だか忙しいのでこちらに来ました」
わたしの後ろ盾はバイバナル商会だからね。優先する義理はあるのよ。
「そうですか。まあ、ゴブリン討伐で大変みたいですからね」
「ルクゼック商会は忙しくないんですか?」
「うちは布が売れるくらいですね」
ん? 包帯とかなかったっけ? あ、なかったわ。ランザカ村では綺麗な布を使っていたっけ。
「その布ってまだあります?」
せっかくだから包帯を作って常備しておきましょうかね。
「どうするのです?」
「怪我をしたときにすぐ使えるように細くして丸めておこうかと思いまして。いざってとき裂く必要もないですからね」
「ほぉう。ちなみにどうやるか見せてもらってよろしいですか? 布は提供しますので」
包帯なんて利益になるのかな? とは思いながらもサービスしてくれるってんだからありがたくいただいておきましょう。
白い布を四、五センチに短冊切りをしつ丸め、安全ピンで止めた。ちなみに安全ピンは発売されてよく売れているそうよ。
「まあ、こんな感じですね。軟膏を塗って油紙で押さえて包帯で巻けば素早く治療出来ます」
「……なるほど……」
そんなに感心することか? これまでも布を裂いてやってたんじゃないの?
「どうするかはハガリアさんにお任せします。突然で申し訳ないのですが、ロコルさんをお借り出来ますかね? ちょっとお願いしたいことがあるんですよ」
包帯なんてどうでもいいのよ。本題はロコルさんだ。
「ロコルをですか? まあ、キャロルさんのお声とあればお貸しするのもやぶさかではありませんが、何かありましたか?」
「民宿にお貴族様が来ていることはご存知で?」
情報規制や個人情報筒抜け万歳な時代。ルクゼック商会ともなれば知っているでしょう。ただ、口にしないだけで。
「はい。まあ」
「その方の服を作って欲しいんですよ」
「服、ですか?」
「まあ、服と言っても運動するときに着る服です。ただ、お貴族様が着るもの。簡素なものは憚れるので、質のよいもので質素ながらみすぼらしくないものを作る必要があります。わたしでは無理なのでロコルさんのお力をお借りできたらな~と思いまして」
「……わたしどもでよれしいので……?」
バイバナル商会を無視していいのかと訊いているんでしょう。
「そう時間も掛けてられないのでルクゼック商会にお願いしたいんです」
バイバナル商会では無理なこと。無理を通しても迷惑なだけでしょうよ。
「わかりました。すぐに用意致しましょう」
「あ、明日の朝に出発しますから。バイバナル商会にもお願いしたいことがあるので」
ちょっとタイミングが悪かった。どうなるかわからないから今日はバイバナル商会に泊めてもらうことにしましょう。