「……うん。わたしに戦う才能ないわ」
出来たばかりのトンファーを投げ捨てた。
「また? キャロル、運動神経ないんじゃない?」
運動神経ないと思っていたマリカルがトンファーを拾って器用に振り出した。
「……そうかもしれない……」
剣もダメ。棒もダメ。釵もダメ。弓もダメ。投げナイフもダメ。トンファーならと思ったけど、自分の脛にぶつけてダメだと悟ったわ。
「キャロルは後ろで大人しくしているほうがいいよ。ティナとルルがいれば問題ないんだしさ」
わたし、戦闘では足手まといのようです。ハァー。
「戦えない冒険者ってのもどうなんだろう?」
「キャロルは楽器はどうなの? 吟遊詩人も冒険者としてやってるんじゃない?」
「楽器、ね~」
リコーダーなら吹いた記憶はあるけど、今さら吹けと言われても出来ない自信しかないわ。
「木琴なら作れるかな?」
どんな構造してたかはわからないけど、木の長さを変えて並べればいいはず。そう難しいものでもないし作ってみるか。
木は何個並べたらいいかわからないので十三個くらい並べてみて、叩くのは何て言ったっけ? バチ? バッチ? まあ、ボンボンでいいや。
「あんまりいい音しないわね」
木の材質が違うのかな?
「へー。おもしろいじゃない。わたしにもやらしてよ」
興味を持ったマリカルにボンボンを渡した。
ギターみたいなのはカルブラ伯爵領で見た。音楽に付与とか出来るのかな?
「マリカルって、何をやらしても上手よね」
ドジっ子な割に何でも器用にこなすのよね。
「今度は何をやらかしたんです?」
マリカルにドレミの歌を教えていたらレンラさんがやって来た。いや、やらしてって何ですか? 何もやらかしてないですよ!
「楽器を作っただけですよ」
「何て楽器です?」
「木琴です。見たことありませんか?」
さすがに木琴くらい誰かが生み出しているでしょう。
「見たことはありませんが、あると聞いたことはあります。こんな音色が出るんですね」
「たぶん、木材がよければもっといい音が出せると思いますよ。これは適当に作ったものですから」
前世で聴いたときはもっといい音が出ていた。極めたらいい木琴が出来るでしょうよね。
「バイバナル商会で楽器って売ってますか?」
「んー。売ってないと思いますよ。楽士は自分で作ると聞いたことがあるので」
まあ、音楽一本で食べていくのは大変なんでしょうね。楽器を作る人もそう売れるもんじゃないしさ。
「じゃあ、作りますか」
「作れるんですか?」
「形は本で見たので何となく作れるでしょう。あとは試行錯誤です」
武器も何となくで作ったしね。わたしなら作れるでしょうよ。
それから三日掛けてギターっぽいものを作った。
弦は馬の尻尾を使ったわ。何かそんな話を漫画で読んだような記憶があったので。
ボローンボローンといまいちな音。まあ、最初としてはまあまあでしょう。
「張りがいまいちなのよ」
すっかり楽器が気に入ってしまったマリカルさん。細々と注文してくるのよね。
「張りか」
そう言えば、先のほうに何かネジみたいなのが付いていたわね。あれが弦を張るヤツだったのかな?
金属がいいかなと職人さんと相談して作ってもらい、なかなかいい音が出るようになった。
「音の幅が広くていいわね」
占い師から音楽家にでもクラスチェンジしたかのようにギター(仮)を引いているわ。
わたしは音楽にはそれほど興味がないので楽譜を書いたり読み方も知らない。ただ、ふんわりとしたアニソンは頭の中に入っている。鼻歌でマリカルに聴かせ、それを音にしているわ。
耳がいいのか音楽センスがあるのかちゃんと曲になっているから凄いわよね。
「本当に楽器を作ってしまうとは」
呆れるレンラさん。
「まだまだですよ。楽器モドキってところですね。まだ改良するところは多々ありますね」
これで完成と言ったら楽器作りの職人さんに申し訳ない。夏休みの工作レベルだわ。
「あと五、六個は作りたいですね」
それだけ作れば少しはマシなものが出来るでしょうよ。
「一つ、いただいてもよろしいですか?」
「いいですよ。どうせ不要なものはバイバナル商会にあげますから」
楽器なんて一つか二つあれば充分でしょう。付与を施せば長い間使えるでしょうからね。
戦闘訓練はどうした? ってことが頭の隅に浮かんだけど、次の瞬間には消えておりました。
「うん。いい出来だわ」
八個作って納得出来るものが完成。マリカルに奪われてしまいました。
まあ、わたし自信に作ったわけでもなし。次は太鼓でも作ってみようかしら? 太鼓の達人、やってみたかったのを思い出したわ。
何てことを考えていたらルーグさんが旅芸人一座を連れて来た。
「旅芸人一座っていたんですね」
吟遊詩人らしき存在は見たことはある。けど、旅芸人一座がいるなんて一度も聞いたことがなかったわ。
「楽器を作っていると聞いて、旅芸人一座を連れて来ました。楽器を見せてやってください」
「構いませんよ」
旅芸人一座には楽士さんもいるそうで、作ったギター(仮)を出した。
「変わった形のマルビールだな」
ここではマルビールって言うんだ。
「旅芸人一座って、どんな芸をしたりするんです?」
旅芸人一座の団長さんらしき人に尋ねた。
「うちは歌ったり踊ったりだな。芝居となると荷物が増えるんでな」
旅芸人一座と言ってもいろいろあるみたいだわ。
出来たばかりのトンファーを投げ捨てた。
「また? キャロル、運動神経ないんじゃない?」
運動神経ないと思っていたマリカルがトンファーを拾って器用に振り出した。
「……そうかもしれない……」
剣もダメ。棒もダメ。釵もダメ。弓もダメ。投げナイフもダメ。トンファーならと思ったけど、自分の脛にぶつけてダメだと悟ったわ。
「キャロルは後ろで大人しくしているほうがいいよ。ティナとルルがいれば問題ないんだしさ」
わたし、戦闘では足手まといのようです。ハァー。
「戦えない冒険者ってのもどうなんだろう?」
「キャロルは楽器はどうなの? 吟遊詩人も冒険者としてやってるんじゃない?」
「楽器、ね~」
リコーダーなら吹いた記憶はあるけど、今さら吹けと言われても出来ない自信しかないわ。
「木琴なら作れるかな?」
どんな構造してたかはわからないけど、木の長さを変えて並べればいいはず。そう難しいものでもないし作ってみるか。
木は何個並べたらいいかわからないので十三個くらい並べてみて、叩くのは何て言ったっけ? バチ? バッチ? まあ、ボンボンでいいや。
「あんまりいい音しないわね」
木の材質が違うのかな?
「へー。おもしろいじゃない。わたしにもやらしてよ」
興味を持ったマリカルにボンボンを渡した。
ギターみたいなのはカルブラ伯爵領で見た。音楽に付与とか出来るのかな?
「マリカルって、何をやらしても上手よね」
ドジっ子な割に何でも器用にこなすのよね。
「今度は何をやらかしたんです?」
マリカルにドレミの歌を教えていたらレンラさんがやって来た。いや、やらしてって何ですか? 何もやらかしてないですよ!
「楽器を作っただけですよ」
「何て楽器です?」
「木琴です。見たことありませんか?」
さすがに木琴くらい誰かが生み出しているでしょう。
「見たことはありませんが、あると聞いたことはあります。こんな音色が出るんですね」
「たぶん、木材がよければもっといい音が出せると思いますよ。これは適当に作ったものですから」
前世で聴いたときはもっといい音が出ていた。極めたらいい木琴が出来るでしょうよね。
「バイバナル商会で楽器って売ってますか?」
「んー。売ってないと思いますよ。楽士は自分で作ると聞いたことがあるので」
まあ、音楽一本で食べていくのは大変なんでしょうね。楽器を作る人もそう売れるもんじゃないしさ。
「じゃあ、作りますか」
「作れるんですか?」
「形は本で見たので何となく作れるでしょう。あとは試行錯誤です」
武器も何となくで作ったしね。わたしなら作れるでしょうよ。
それから三日掛けてギターっぽいものを作った。
弦は馬の尻尾を使ったわ。何かそんな話を漫画で読んだような記憶があったので。
ボローンボローンといまいちな音。まあ、最初としてはまあまあでしょう。
「張りがいまいちなのよ」
すっかり楽器が気に入ってしまったマリカルさん。細々と注文してくるのよね。
「張りか」
そう言えば、先のほうに何かネジみたいなのが付いていたわね。あれが弦を張るヤツだったのかな?
金属がいいかなと職人さんと相談して作ってもらい、なかなかいい音が出るようになった。
「音の幅が広くていいわね」
占い師から音楽家にでもクラスチェンジしたかのようにギター(仮)を引いているわ。
わたしは音楽にはそれほど興味がないので楽譜を書いたり読み方も知らない。ただ、ふんわりとしたアニソンは頭の中に入っている。鼻歌でマリカルに聴かせ、それを音にしているわ。
耳がいいのか音楽センスがあるのかちゃんと曲になっているから凄いわよね。
「本当に楽器を作ってしまうとは」
呆れるレンラさん。
「まだまだですよ。楽器モドキってところですね。まだ改良するところは多々ありますね」
これで完成と言ったら楽器作りの職人さんに申し訳ない。夏休みの工作レベルだわ。
「あと五、六個は作りたいですね」
それだけ作れば少しはマシなものが出来るでしょうよ。
「一つ、いただいてもよろしいですか?」
「いいですよ。どうせ不要なものはバイバナル商会にあげますから」
楽器なんて一つか二つあれば充分でしょう。付与を施せば長い間使えるでしょうからね。
戦闘訓練はどうした? ってことが頭の隅に浮かんだけど、次の瞬間には消えておりました。
「うん。いい出来だわ」
八個作って納得出来るものが完成。マリカルに奪われてしまいました。
まあ、わたし自信に作ったわけでもなし。次は太鼓でも作ってみようかしら? 太鼓の達人、やってみたかったのを思い出したわ。
何てことを考えていたらルーグさんが旅芸人一座を連れて来た。
「旅芸人一座っていたんですね」
吟遊詩人らしき存在は見たことはある。けど、旅芸人一座がいるなんて一度も聞いたことがなかったわ。
「楽器を作っていると聞いて、旅芸人一座を連れて来ました。楽器を見せてやってください」
「構いませんよ」
旅芸人一座には楽士さんもいるそうで、作ったギター(仮)を出した。
「変わった形のマルビールだな」
ここではマルビールって言うんだ。
「旅芸人一座って、どんな芸をしたりするんです?」
旅芸人一座の団長さんらしき人に尋ねた。
「うちは歌ったり踊ったりだな。芝居となると荷物が増えるんでな」
旅芸人一座と言ってもいろいろあるみたいだわ。