せっかくの夏休みをまた病院で過ごしている。


処置室でクリーム色の天井を眺めながら、一滴一滴と落ちていく薬を見ているといつの間にか目が潤んでくる。


丸一日何も口にしなかった私を心配したお父さんがわざわざ連れてきてくれたから言えないけれど、私には病院という空間自体が厄介だった。



今は、食欲がないだけで体調を崩しているわけではない。


けれど、病院という空間が私を病人にさせる。


私はまだ私として生きていたいだけなのに、それすら許されない気がするのだ。



「明日も何も食べられそうになかったらもう一度来てもらってもいいかな?」


点滴中、平島先生が私に声をかけに来た。


夢見病外来を担当する平島先生は、研修医時代、私の母の死に立ち会っていたようだ。 


また、私が実の母を夢見病だったこともあり、特別気にかけてくれているような気がする。


患者に過度な肩入れはあまり良くないけれど、過去の辛い記憶をオブラートに包んでくれる感じが好きだ。  


つらい記憶は望んでいなくてもふと蘇ってくるものだから。