夏休み最終日に私は退院した。
その時に初めて余命宣告を受けた。
どうやら私に残された時間はあと2か月らしい。
机と椅子とホワイトボードのみが置かれている閑散とした面談室に、顔色を失った2人と冷静を装い事実を淡々と述べる1人が現実と向き合っていた。
その瞬間、絶望と同時に気が抜けるような思いが押し寄せた。
夢見病を患ってから、必ずしも生きることが幸せだとは言えなくなった。
周りに愛想を振りまいては、自分を隠して嫌気がさす。
それくらいだったろうか、私が生きることを苦だと感じ始めたのは。
夏休み最終日に退院したこともあり、案の定課題を全て終えることは出来なかったけれど、担任に事情を話すと、ゆっくりでいいから、と許しを得た。
加えて、その他の教科担任にも事情を説明してくれるようだった。
毎日の提出物はこれまで課題未提出になったことがなかったから、名簿に提出者をチェックする人の視線を感じた。
夏課題に関してはそれくらいで支障はなかった。
夏休みが明けたクラスは、どのグループもお葬式ムードで学校に来るだけで私まで巻き込まれた。
「そういえば透真が休みって珍しくない?」
星絆に言われて思い返してみる。
一学期は関わりがないどころか存在をそう認識してこなかったためによく分からない。
でも、確かに透真くんは学校を休むことが稀だったような気もする。
それよりも星絆が透真くんのことを呼び捨てでしていることが不思議でならなかった私は、それからも話し続ける星絆の話は一向に頭に入ってこなかった。
「星絆は透真くんとどういう関係なの?」
言ってなかったっけ、とでも言うように目を丸くした後、星絆はまた口を開いた。
「透真とは小学校から一緒なんだよね」
星絆は首をかしげながら言った。
初めて聞いた。
「恋愛絡みではないからね。それに、透真は恋愛に疎いから彼女できたことないし」
なんだか、私が透真くんにただならぬ感情を抱いているみたいになってしまったけれど、そういうわけではない。
ただ、透真くんに謝りたかっただけ。
私は透真くんのことを心配しつつ、彼に言い放ってしまったことを後悔していた。
私の発言が原因で学校に来ていないとは思えなかったが、少なからず彼を傷つけているだろうし、1日も早く謝りたかった。